メロディックハードコアというジャンルの人気が決して低くなく、さらにパンクロックの総本山と言えるFat Wreck Chordsに所属しておりながら、どうも日本での人気がパッとせず国内盤リリースの気配もない(ファット・マイクがアンチメジャーだからあえてリリースしてないだけかもしらんけど)STRUNG OUTの9枚目のフルアルバム。
ここ数作はポップさ以上にシリアスさを押し出した哀愁のヴォーカルメロディー、へヴィではないもののメタリックとも言えそうなタイトなアンサンブル、STRUNG OUTらしい疾走感を取りそろえた盤石の出来を続けてきており、本作もその例に漏れない安定したクオリティーを有しています。
ただ『Exile In Oblivion』あたりからより顕著になったシリアスかつメタリックな作風から、少しだけ青臭さを漂わすポップパンクの要素が濃くなったかな...?という感覚がありますね。オープニングトラックであるM1「Rebels And Saints」が爽やか寄りのメロコアナンバーであることがそれを一層強く感じさせる要因かもしれません。
こういった曲調の方がパンクキッズたちのウケは良いかもしれませんが、硬質でメタリックなパンク(それこそ今までのオープニングチューンである「Rats In The Walls」や「Calling」のような)を期待していた身からすると、出だしの肩透かし感が無いわけではない(とはいえ彼らは青さのあるポップなメロディーのセンスも良いので充分に楽しめるのですが)
とはいえ従来の彼らの持ち味はしっかりと息づいてるのは間違いなく、メロディアスさとテクニカルさを両立したギターソロはそこかしこで聴けるし、高速メロディック番長(?)の名に恥じない軽快な疾走感もバッチリ。そして哀メロのセンスも冴えわたっている。
これぞSTRUNG OUTだ!と快哉を叫びたくなるド直球ナンバーM2「Daggers」、のっけから叙情性満載のツインリードがインパクトを演出するM5「Monuments」、アグレッシヴなイントロのリフにシンガロングが熱いM6「White Girl」、少しヘヴィ寄りのリフが気持ちよく、リードギターソロもガッツリ聴けるM8「Hammer Down」などの良曲を挟みながら展開。相変わらずの甘さの無いメロディックナンバーの雨アラレっぷりはさすがの安定感。
ただどの曲もアップテンポもしくは疾走ばかりでアルバム全体における起伏は非常に少なく、この金太郎アメっぷりも相変わらずとしか言いようがないです(笑) 全体の長さは44分ほどでそれほど長いわけではないのですが、この曲調の変わらなさ、一本調子感のためか、後半あたりで若干のダレが生まれてしまうのが正直なところ。これは海外メロコア勢のお約束として割り切るべきか...?
せっかく去年アコースティックEPの『Black Out The Sky』をリリースしたのだから、その経験を活かしたバラードでも一曲設けてくれれば良かったんじゃないかと思われますが、小細工一切無しのメロディック・アルバムこそが自分たちのあるべき姿だと捉えてるのですかね。
いずれにせよ過去作に満足のいっている人、哀愁系メロディックハードコアを好む人であれば楽しめることは間違いない安心の一作。
M2「Daggers」 Official Audio
まさにSTRUNG OUTらしさ全開の高速ナンバー。まずはコレから。
M4「Under The Western Sky」 MV