- 封印解除後のシングル含む復活作
- 過去作のようなお遊び要素はほぼ消滅
- 哀愁のメロディーを効かせた歌を主体とした方向性
ここ日本のメタルアクトでは、最もワールドワイドな成功を収めている存在であるメタルダンスユニット・BABYMETALの4thフルアルバム。
2021年10月から「ライヴ活動封印」という宣言のもと、しばし活動を休止していましたが、昨年10月から再び動き出し、デジタルシングルのリリースや大規模なライヴを実行し始めました。
そして今年4月に入ってからは、以前からサポートダンサーとしてライヴ出演していたMOMOMETALが正式に加入し、久方ぶりに3人体制へとなったほか、現在は海外ツアーを敢行中と、封印期間を取り戻すかのように、かなり活動の勢いが増している印象です(本作発表時はまだ2人体制の状態でしたが)
本作は封印解除後にリリースされた各種シングルが一通り収録されており、全10曲40分ほどというボリューム感もあり、先行配信されていた曲をずっと熱心に聴き続けていたようなメイトさんには、ちょっと物足りなさを感じるかも。僕はというと、「ちゃんと聴くのはアルバムが仕上がってからでいいや」と思って、配信シングルにはあまり手をつけていなかったので、割と新鮮な気持ちで本作に触れられましたが。
今までメタル×アイドルという異種族の組み合わせによって、普通のメタルアクトには到底なし得ない楽曲を次々と生み出してきたBABYMETALですが、本作はというと、そんなBABYMETALの異物感・異端児感は、従来作の中で最も少ないと言えるかもしれません。
前作『METAL GALAXY』の時点で、メタル・ラウドミュージックとして、シリアスで真っ当な方向性に舵を切っている印象でしたが、本作はそのストレートな楽曲スタイルをさらに突き進めている。メンバーが成人を迎えていることもあってか(それでもまだ20〜25歳。若い!)、1st〜2ndアルバムの頃にあった、幼ない可愛らしさやネタ臭さは皆無。
前作にはまだ「Oh! MAJINAI」や「PA PA YA!!」のような、「遊び」の要素を持った楽曲がありましたが、本作はそれすらほとんどない。強いて言えばM7「METALIZM」くらいでしょうか。
フォークメタルやラップメタル、メロディックスピードメタルのようなサブジャンルに寄りすぎない、ストレートな歌モノとしての魅力を打ち出した楽曲メインで構成されていることもあり、統一感という意味では過去最高かも。哀愁路線のメロディーの良さが支配的で、正当的なメタルの色は薄いものの、普通にキャッチーでラウドなロックアルバムとして聴き通すことができます。
モダンプログレッシヴメタルのリフワークがゴリゴリと進み行き、サビになると一点して非常にメロディアスな展開を見せるM3「Mirror Mirror」、ちょっとダンスミュージック的なリズムを刻みながら、澱みなく流れる歌メロが気持ちいいM5「Time Wave」、最もポップで良質なキャッチーさを持つ歌が聴けるバラードM8「Monochrome」などの存在が、本作のメロディーの潤沢度合いが優れていることを示しています。M3が一番好きかな。
「Road of Resistance」や「Arkadia」のような、過去作にあったコレ!っていうキラーチューンがあればなお良しでしたが、本作はコンセプトアルバムということで、アルバムのまとまりを考慮した結果、そういった曲は抜いたんだろうな。
正直なところ、ただ単に良い曲を出すだけでなく、既存のメタルバンドには出せなかった革新性にBABYMETALらしさを見出していたのもあり、極めてまっとうになった本作を聴いて「これなら別にBABYMETALじゃなくても...」という思いが頭をもたげた瞬間があったのは事実です。
しかし、良い曲を、良いヴォーカルで、良い演奏でまとめた良いアルバムであることは疑いようがない。個人的にはもうちょっとメタル度高めの方が嬉しかったけどね。
個人的に本作は
"サブジャンルに寄りすぎず、哀愁の歌メロを重視して最もストレートな作風に仕上げた。まとまりの良さも、お遊びの無さも過去最高"
という感じです。