ひとりごと ~Music & Life-Style~

HR/HMを中心としたCD感想、足を運んだライヴの感想をメインにひとりごとをブツブツつぶやくブログです。

9mm Parabellum Bullet 『TIGHTROPE』

  • 前作と楽曲の方向性は大体同じ
  • 全曲において徹底された歌メロの哀愁度が抜群
  • 疾走メタルからインストまでド派手な演奏の密度

 

国産ポストハードコア/オルタナティヴロックバンドの最新作。

 

バンド名に9を冠するバンドにおいて、記念すべき9thフルアルバムですからね。当然ながら(?)99日にアルバム感想を書かない訳にはいかないというもんです。

 

2017年に発表された傑作7thアルバム『BABEL』以降、作詞卓郎さん・作曲滝さんという布陣をキープしていましたが、本作もその流れに則って制作されています。

 

作曲面においては、滝さん以外にの人が担当することも多く、各人の個性が色々と見られた、やや実験作的なアルバムもあることはありましたが、それでも基本的にどの作品も良質なクオリティーを保ってきたバンド。故に本作においても心配は一切していませんでした。

 

10曲35分とかなりコンパクトにまとまった本作、作風の方向性としては前作『DEEP BLUE』とほぼ同じといっていい。聴けば一発で彼らのものだとわかる特徴的なギターが主軸となり、マイナー調の歌メロが支配的なポストハードコア。彼らの個性である歌謡曲の影響が色濃いダサさが全体的に控えめなのも前作との類似点です。

 

ただ、これまでやや明朗気味な楽曲(能天気な明るさは皆無ですが)もプレイしてきた彼らですが、本作に至ってはキモである「メロディーの哀愁」が、従来作以上に徹底されているように感じます。アッパーなロックチューンからバラードに至るまで、歌メロの哀しみが非常に強く表出しているのがポイント。

 

特にその印象を強くしているのがラストのM10「煙の街」。

 

9mmのアルバムラストの曲は、アルバムを代表する怒涛の疾走チューンであることが基本でした(4th『Movement』の「カモメ」は例外)

 

しかしこの曲はズッシリ、ズルズルと引きずるような退廃的暗さが全面に出たスロー曲。歌詞も歌メロも、中盤以降の焦燥感を醸し出すギターリフも、全てが暗く、重い。ここまでダークでド暗いナンバーでアルバムを締める点に、ジャンルやスタイルは全く異なれど「At The Gatesみたいだ...」と思ったくらいです(笑)

 

他にも"夏フェス讃歌"がテーマになっているという、リードトラックのM3「All We Need Is Summer Day」も、アップテンポで展開し、わかりやすいシンガロングパートが盛り込まれていながら、歌メロの質は完全に哀愁寄り。「邦ロック」なんて言葉でカテゴライズされるバンドが夏をテーマにした楽曲を作ろうものなら、大体こういうのとかこういうのとかになっちゃいそうなものですが(偏見)、ここまで哀メロに特化してくれるとは、やはりこのバンドは信頼できるな。

 

その他にも、スラッシュメタル的疾走感と激烈リフに、この上なく哀しいメロディーが乗るM1「Hourglass」に、本作中数少ないダサさが強烈に匂い立つナンバーM2「One More Time」、しっとりとした泣きの哀愁バリバリなバラードM5「淡雪」、歌謡曲からの影響を受けた特有のメロディーセンスが強いM7「タイトロープ」と、9mmらしさとクオリティーをしっかりと保った楽曲が立て続く。

 

また、M8「Spirit Explosion」は、彼らがたまにやるインスト曲。アルバムのインストは西部劇風だったりテケテケだったりと、やや風変わりな楽曲に仕上げていた過去作とはやや異なり、この曲はかなりストレートでメタリック、かつキャッチーなロックチューンにしてきていて、これがまた滅法カッコいい。縦横無尽にメロディアスな旋律を連発するギター、アグレッシヴでテクニカルに疾走する演奏の魅力がこれでもかと押し出され、アルバム後半の山場としてしっかり機能してます。

 

全体通して、前作と同様にダサさが控えめであることに対した寂しさはありますが、それを補ってあまりある、質の高い楽曲を取り揃えた1枚。「さすが9mm、今回も良作!」と言いたくなる出来栄えです。

 

ここまでメタリックな楽曲で攻めまくり、アルバムのラストを陰鬱な程の哀しさを発散するスロー曲で締めるというアルバムを出す彼ら。正直この音楽性がイマドキの価値観のリスナーにウケるのか不安になるんですが(笑)、彼らにはこれからも、哀愁歌謡オルタナティヴメタル路線を突き進んでほしいですね。2022年の日本のメジャーシーンにおいてはマジで希少な存在なので。

 

 

個人的に本作は

"アグレッシヴなメタルから泣きのバラードまで、全10曲の短い中にメロディーの哀愁を徹底的に濃縮。歌謡的なダサさは前作と同様控えめ"

という感じです。

 


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