ひとりごと ~Music & Life-Style~

HR/HMを中心としたCD感想、足を運んだライヴの感想をメインにひとりごとをブツブツつぶやくブログです。

陰陽座 『龍凰童子』

  • バンド存続の危機を乗り越えた復活作
  • ボリューム過多気味ながら、それを感じさせない構成力
  • 王道のアップテンポから、少々個性的な楽曲まで幅広い

 

妖怪ヘヴィメタルという、唯一無二の個性を武器に、長きにわたって日本のメタルシーンで活躍する陰陽座の、15枚目となるフルアルバム。

 

前作『覇道明王』から4年ほどリリース間隔が空いていますが、その間にヴォーカルの黒猫さんが突発性難聴発声障害を発症するという事態に襲われていました。今後どうなるのかと心配したものですが、とりあえずはこうして新作が届けられたことがまずありがたい。

 

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本作はバンドの復活作、久々に完全体となったバンドの姿を見せることができるということで気合が入ったのか、全15曲・70分超えという大ボリュームになっています。

 

長い曲、長いアルバムをやや苦手としている僕は、最初に聴くときこそ「おおっ、結構長大だな...」とひるみましたが、やはり優れた楽曲を何年も作り続けることのできるバンドはさすがですね。ボリューミーではあるものの、長すぎてダレてしまうようなことなく、しっかりと聴き通せるような作りになっている。某鋼鉄の処女さんも見習ってくれ。

 

前作ほどヘヴィ志向ではないものの、密度の濃いツインギターの絡みは、メタルらしいアグレッションを演出。基本的にアップテンポの曲が多めに配されていることもあり、パワー面において十分なものを持っていますね。

 

M1「」の暗→明へと移行するようなインストから始まり、黒猫さんの歌声にて幕開けを飾るM2「龍葬」に至る瞬間に、ヴォーカル面での不安も一切不要であることがわかります。美しく、かつ芯があって力強い歌声には、従来作から変わらず何の陰りもない煌めきがある。

 

そのまま陰陽座の王道ともいえる、アップテンポなメロディックメタルナンバーM3「鳳凰の柩」、より歌メロのキャッチーさが冴え渡り、弾みゆくリズムも気持ちいいM4「大いなる闊歩」、エクストリームな疾走と、瞬火さんの荒々しいヴォーカル、それに相対するかのように美しい響きの黒猫さんのヴォーカルが交錯するM5「茨木童子」と続く流れで、安心安定・完全無欠の陰陽座ワールドの出来上がり。

 

恒例の忍法帖シリーズであり、哀愁のあるメロディーで疾走するM9「月華忍法帖」、10分を超える大作のM10「白峯」という連なりで、アルバムの山場を演出した後、前半に比べ少し王道を外れた、クセのある楽曲(陰陽座らしさはしっかりとある)を並べつつ、クライマックスに怒涛の疾走曲M14「静心なく花の散るらむ」というキラーチューンを持ってくる構成も良い。

 

本作は瞬火さん曰く「待たせてしまった分、とにかく良い曲をたくさん聴いてもらえるような作りにした」とのことですが、それによって盛りだくさんでまとまりのないアルバムにはならず、長めながらも単一の作品として聴かせる構成がちゃんと組まれているのはさすがの一言です。

 

捨て曲などはありませんが、特に気に入ったのは歌のキャッチーさに秀でたM4、ハードかつメロディアスなギターが主軸となるM8「赤舌」、そして随一の疾走感を持つM14ですね。

 

バンド存続の危機に直面しながらも、これまでの作品と何ら劣ることのない秀作を生み出し、7月からは中断していたツアーも始まるなど、バンドのギアがどんどん上がっていっているようで頼もしい限りです。あとは黒猫さんのコンディションがライヴでも保てるかどうかという点が懸念事項ではありますが、本作の歌唱の充実ぶりも考えれば多分大丈夫なんじゃないかという気がします。

 

東京公演は日程的に僕が行くのは厳しいですが(同日にデカめの用があるので)、まだ陰陽座のライヴに行ったことがないという人は、この機会に足を運んでみるといいと思います。黒猫さんほど「喉からCD音源」という表現が相応しい人ってなかなかいないので。

 

 

個人的に本作は

"完全復活を堂々と宣言する長大作。長めのボリュームも負荷にならない構成力と、各曲のクオリティーの高さが共に担保されている"

と言う感じです。

 


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