ひとりごと ~Music & Life-Style~

HR/HMを中心としたCD感想、足を運んだライヴの感想をメインにひとりごとをブツブツつぶやくブログです。

lynch. 『REBORN』

  • 全メンバーが作曲に携わった異色作
  • 過去作からヘヴィな攻撃性は大幅減
  • 全体通してバンドの個性は損なわれず

 

昨年に活動休止期間を終えて、キャリア初の日本武道館ライヴを成功させたヘヴィ/ラウドロックバンド・lynch.の、前作より3年振りとなるフルアルバム。

 

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基本的にこのバンドの楽曲というのは、ヴォーカルの葉月さんが作詞・作曲を担当していましたが、本作は趣向を変えて5人のメンバーがそれぞれ作曲したものを持ち寄って作られています。活動休止前のインタビューで葉月さんが、ここ数年曲作りに行き詰まりを感じていたということを述べていたので、いったんバンドのスタンスを変えてみようという考えに至ったのでしょうか。

 

活動休止から復活し、作曲編成を変えて放つ一作。まさにタイトル通り生まれ変わり(REBORN)と言えますね。

 

5人がそれぞれ曲を作るというやり方では、当然各曲のクオリティーにバラつきが生まれたり、アルバムの方向性が散漫になったりといったことが不安視されます。バンドのブレーンであった葉月さんが関与しない楽曲が大半を占めるという構成で、どれだけの完成度を見せることができるのか。

 

そして蓋を開けてみると、lynch.らしさというものが大きく損なわれてはいないということがわかります。バンドが培ってきたヴィジュアル系を出自とする色気、艶やかな魅力はしっかりと表現されています。

 

ただ、歌モノのヴィジュアルロックという点で見れば悪くないのですが、メタルコアやハードコアなどからの影響が顕著なヘヴィミュージックという観点だと、やや満足し切れないというのも事実。

 

それは単純に激しい曲が少ないから、ということに尽きるのですが、メタルコア的ヘヴィなブレイクダウン、せっかく前作『ULTIMA』で少し顔を見せ始めた低音グロウルなどはほぼ使われず。良くも悪くも王道のヴィジュアル系らしさが強め。

 

オープニングを飾るM1「ECLIPSE」は、キャッチーな中にダークさとメランコリックさを滲ませたサビが魅力的な曲ですが、隙間の多いギターリフはヘヴィさをあまり感じさせないもの。

 

アルバム中盤にM5「CRIME」〜M6「BLEU」〜M7「PRAGMA」と、ミディアムナンバーが連続するところも、本作がアグレッション重視ではない印象を強めています。

 

結果的に気に入ったのは、ヴィジュアル系らしい耽美さを持ちつつ、シャウトとシンガロング、キャッチーなサビがlynch.らしさを発揮するM2「THE FORBIDDEN DOOR」と、ノイジーなベースがハードコア感を演出し、加工されたシャウトが激アツな疾走曲M9「CALLING ME」の2曲。やっぱりこういう曲がシンプルにアガれる。

 

従来のアルバムでも、とりたてて勢い一辺倒な作風ではありませんでしたが、攻撃性が低いなら低いで、それこそ「KALEIDO」とか「EUREKA」、「PHOENIX」あたりの曲のように、メロディーを充実させてほしかったというのが本音。

 

lynch.というバンドに対して「ヴィジュアル系らしい怪し気なキャッチーさに、正統的ヘヴィミュージックとして聴けるサウンドを折衷させた楽曲」に価値を見出していた僕としては、過去作との比較において、どうしても一歩劣る内容になってしまうかも。

 

とはいえ、まったくもって貶めるような出来ではない。先述したようにバンドの個性はしっかりと備わっていますし、葉月さん以外のメンバーが作った楽曲群も、一貫してダークな魅力渦巻く楽曲にはなっています(特に晁直さんのメロディーメイカーとしての才能が顕になったのは、本作の大きな功績でしょう)

 

全体通してヘヴィな攻撃性が薄く、従来作の中ではどうしても満足度が低くなってしまう。とはいえ曲のクオリティーは安定していて、キラーチューンもあり、どのメンバーが曲を作ってもlynch.というブランドを損なわないことを証明している。

 

そんなわけで、安易に「良い」とも「悪い」とも言い切りにくい、評価するのが難しいアルバムになった感があります。

 

 

個人的に本作は

"各メンバーが作曲してもlynch.らしさは保たれた一作。たがヘヴィパートの減退は少々厳しい"

という感じです。

 


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