季節もすっかり春.....のはずが、初夏かと思うほどに暑くなったかと思えば、いきなり雨と共に冷え込んだりと、不安定な気候に振り回されている昨今、1年ぶりとなる野音に馳せ参じました。
去年と同じく、ライヴアクトはOAU。先日リリースされたEP『New Spring Harvest』のタイトルを冠した野外ツアー(といっても東京・大阪の二カ所しかやりませんが)の野音公演です。
去年のツアーファイナルがあまりにも素晴らしかったために、当然ながらこの公演も見逃せない。僕が勤めている会社では、現在大規模なプロジェクトが動いており、この日も休日出勤があったのですが、なんとかしてこの日の出勤を避けることに成功。じっくりとアコースティックサウンドに身を任せる所存です。その代わり次の日の日曜は夜勤です。
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開場時間の少し前に霞ヶ関に到着、オフィス街なのでライヴ前に辺りを散策するなんてこともせず、銀行によってから直行で会場へと向かう。CD先行封入の抽選券でチケットを取ったはずなのですが、席はCブロックの前付近。観やすいことは観やすいのですが......Aブロックの席が取れた人は一体どんな方法でゲットしたのか気になるな。
前日まではややぐずついた天気だったため、この日がどうなるか若干不安視していたのですが、当日は雲こそ多めなものの充分に晴れ渡った陽気。特に暑くも寒くもなく(日が落ちたら寒かったけど)、去年に引き続き良い野外ライヴ日和に恵まれましたね。
開演時間を少しすぎたあたりで、特に大きな演出や登場SEも無く、ドラムのRONZIさんとパーカッションのKAKUEIさんが先んじて登場。二人が息をそろえて力強く打音を響かせる中、残りのメンバーも続々と定位置へ。
去年と同じことを思いましたが、やはりうららかな春の気候の野外、OAUの音は本当によく似合う。ラウドになりすぎない素朴なサウンドが気持ちいいんですよ...とは言いつつ、風がちょっと冷たくてパーカー着ててもちょっと肌寒かったのですが...
最初の段階ではみんな座席に座っていた状態でしたが、MCにて「疲れてる人は座っててもいいけど、どうせ観るなら踊りません?」と声をかけられると、続々とオーディエンスは立ち上がり(僕も含めて)、早い段階でどんどん手が上がってくる。新作からのインストナンバー「Apple Pie Rag」でのドラムとパーカッションの掛け合いで早速高揚させてくれました。
「マスクはしていてほしいけど、大声にならない範囲でなら声出してもいいらしいよ。"フゥッ!"とか」と言われたらすぐにそこかしこから声が上がり、久方ぶりにライヴでのオーディエンスの声の反応がもらえたメンバーはなんだか嬉しそう。
温かくも切ないムードを醸し出す「世界の地図」「Change」といった楽曲では、曲に合わせて少し体が揺れるも、じっくりと聴き入り、アップテンポの後半が大きな盛り上がりどころとなる「Thank you」では、最初の熱量のピークとも言えるハイライトを生み出す。ラストのサビをもう一度繰り返し、どんどん速くなるテンポに腕の振りも大きくなっていきました。
「Sunny Day」ではちょっと能天気なムードをスライドギターの音色で生み出し、そこからの「all the way」。この曲のサビもまた春らしい爽やか切なさ満載で大好きな曲。
ライヴ中盤では「ライヴ久しぶりだから疲れちゃったよ。みんなも疲れただろうから一旦休みな」と言い残し、MARTINさんとKOHKIさんを除くメンバーが一旦ステージ袖へはける。椅子に腰掛けたMARTINさんが「TOSHI-LOWカッコいいよね。俺もあんな風になってみたいと思ってた。ずっと他人の顔のマスクをつけてた。だけど俺は俺のままでいいってことに今は気づいてる」と語り出し、ギターの音色と共に「Mask」を歌う。先ほどの「Thank you」で一気に加熱した空気がゆったりとしたものに変わっていく瞬間でした。
その後はMAKOTOさんのベースも加わった状態で、コロナが流行ってから2年ほど会えていない家族へ向けての「Life」を披露。戻ってきたTOSHI-LOWさんが、「3人すげえよかったじゃん。THE ALFEEみたいだったよ」と軽く茶々を入れながら、再び元の布陣へ。そこから新曲「世界は変わる」へと続くと、先ほどまで腰を落ち着かせていたオーディエンスが再び立ち上がる。
この曲は去年野音で聴いた時も感じましたが、本当に彼らの歌心が強く表出していて、じっくりと聞き入るには最適な曲なんですよね。中盤のエモーショナルなギターソロや、タンバリンを叩きながら軽やかに移動するTOSHI-LOWさんのパフォーマンス含め、気持ちが弾むような瞬間も多くて、本当に掛け値なしに素敵な曲です。
新作のリードトラックが終わったあとはいよいよライヴも終盤。去年と同様に最後の畳み掛けが素晴らしく、「Again」でギアを上げて、「Americana」の各楽器のコンビネーションを存分に見せつけエキサイトしてきた頃に「Midnight Sun」と「Making Time」という鉄板の流れ。この瞬間は去年でも異常なまでに高揚感を得ることができましたが、今回もそれに負けず劣らずの盛り上がり。
バックに吊るされたOAUのロゴがキラキラ光り輝き、色とりどりの照明効果を持って、「Making Time」の盛り上がりを沸点まで持っていく様は、まさにライヴのクライマックスを彩るにふさわしい瞬間でした。この感動は生で観ないと体感できないものですね。
ここで一旦ライヴは終了しアンコールへ。メンバーが出てくる間、僕の後ろの方で聞こえた「あと3時間くらいやってほしいわ〜」という声に深く同調しつつ待っていると、今度は先ほどの「Life」の時と異なる、TOSHI-LOWさん、KAKUEIさん、RONZIさんがステージに登場。3人がそれぞれパーカッシブな音色を奏でる「Banana Split」へ。演奏の途中でリズムに合わせて他の3人もステージ上手側から出てきて(演奏中以外は終始冷静なMAKOTOさんがピョンピョン飛び跳ねてきていたのがなんだか新鮮)、そのまま新作のオープニングトラックの「Peach Melda」の演奏がスタートする。
この曲もまた、EPのタイトルとなっている「春」のイメージにピッタリな温かいメロディーラインが印象的。終始鮮やかに舞い踊るMARTINさんのヴァイオリンと、そこに絡む歯切れの良いアコギがメチャクチャに気持ち良かったです。
「Peach Melda」を終えた後は少し長めのMCタイム。「OAUのお客さんは小さなお友達から大きい人まで幅広くて、すごく優しい。『何食べ』とか観てたからLGBTにも優しいだろうし。だけど優しいからこそ、昨今のニュースとかで辛い思いをしてるでしょ?」
バックのOAUのロゴがウクライナの国旗を模したカラーに光って、「俺たちは普段からずっと言ってる訳じゃないけど、もちろん聞かれたら"反戦""平和"を訴えていく」と語り、「This Song」と名付けられた新曲を披露。「350年前の音楽家が作ったメロディーに、今の音楽家である俺たちが新しく歌詞をつけました」と言っていたので、既存曲の日本語詞カバーなのでしょうが、僕は聴き覚えのない曲でしたね...。ジョージ・ハリスンの曲ではなかった。
最後はKAKUEIさんのフルートが奏でるイントロで始まる「帰り道」。今やOAUの代表曲的位置付けにまできている楽曲ですね。ほぼ日が落ちてきた今の時間帯にピッタリで(もう少し空が紫がかっていた方が良いかな)、ステージと周りの風景を見回しながら聞き入る。
するとオーディエンスの右手の方から、ちらほらスマートフォンのライトを照らし出しているのが見え、そこから徐々に連鎖するかのように光の粒が連なっていく。アーティスト側が指示を出してやるのは経験ありますが、自主的にこういった演出を作り上げたのは初めての経験かも。歌い終わった後「メチャメチャ綺麗、ありがとう」と声をかけてもらい、余韻に包まれたままの幕切れとなりました。
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— BRAHMAN / OAU (@tacticsrecords) April 18, 2022
ツアー後篇🚩
大阪公演まで、あと5日‼️
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OAU 野外音楽堂ツアー
『 New Spring Harvest 』
🎪 4/23(土) 大阪城音楽堂
👇チケット&詳細
大阪▷ https://t.co/gkCeULPxsH #OAU #NewSpringHarvest#綺麗だった日比谷野音の夜をちょい見せ✨ pic.twitter.com/PN4ILHDVrd
去年の野音の経験から、今回も絶対に外されることはないだろうと期待していましたが、その期待をしっかりと超えてくる感動。パフォーマンスもMCも、楽曲の魅力からステージ演出まで、BRAHMANとはまったく異なる表現で、感情をグワっと突き動かされるばかり。
今日語ったMCでは「毎春の恒例にしたい」みたいなことを言ってましたが、こちらとしても春の訪れをこの音と実感できるというのは大いに望むところです。今後も野外で彼らのサウンドに身を浸せる機会を作っていってほしいと思います。