ひとりごと ~Music & Life-Style~

HR/HMを中心としたCD感想、足を運んだライヴの感想をメインにひとりごとをブツブツつぶやくブログです。

4/18 OAU / TOUR 2021 -Re:New Acoustic Life-FINAL at 日比谷野外大音楽堂

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2021年に入って初のライヴです!(正確に言えば3月27日にCRAFTROCK BREWPUB & LIVEでやった『Mt. Burritos』で、弾き語りを少し観たのですが、あれは正規のライヴとは言い難いので)

 

BRAHMANのメンバーが中心となって結成されたアコースティックバンド・OAUの、昨年発売されたベストアルバム『Re:New Acoustic Life』のレコ発ツアー。この日がツアーファイナルです。

 

会場となる日比谷野外音楽堂は、数々のバンドがライヴを行った有名な会場ですが、なにげに僕は今回が初。野外でOAUのサウンドに聴き浸れるとは、なんて贅沢なんでしょう...

 

この日の前日は土砂降りっていうくらいに雨が降っており、天気予報を見ても「晴れのち雨(降水確率60%)」というなんとも不安な結果が。雨が降ったら降ったでいいロケーションになるのかもしれませんが、やはり野外ライヴというのは晴れやかな日差しのもと観たいものです。

 

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しかし結局その心配は杞憂に終わり、当日はドッピーカン!OAUのパーカーを着ていたのですが、その格好じゃ歩いているうちに汗ばんでしまうくらいの陽気でした。風は少しひんやり気味なので、クソ暑い訳ではないのも良し!野外のライヴにこれほど相応しい気候はないのでは。

 

開演は17時と夕方なので、お昼は御茶ノ水ディスクユニオンを物色し、そのまま徒歩で日比谷まで歩く。皇居周辺のだだっ広い道路を気持ちよく歩きつつ、オモコロチャンネルのミスドダービーに触発されて、ミスドで開場まで時間を潰す。

 

そして開場時間ちょうどくらいに日比谷野外大音楽堂へ到着。客層はいかにも20年くらい前からBRAHMAN聴いてるぜ!ってナリの気合いの入ったオッサンから、ライヴハウスとは縁遠そうなオシャレな女性客、小さい子供を連れた家族もそこそこ見かけました。当然っちゃ当然ですが、いわゆるライヴキッズみたいな人はほぼ皆無だったと思います。

 

日比谷野外大音楽堂、思っていたよりはそれほど大きくはなかったですね。早い段階でチケット取ったのにC列なのか…と思ったものの、それでも人が豆粒のようにしか見えないという事態にはならない距離。

 

BRAHMANではライヴの開幕時間が押しがちな印象がありましたが、今回は数分過ぎたあたりでメンバーが下手から登場。ツアーファイナルだというのに、SEも何もなくスルッと入ってくるあたりマイペースさがよくわかります(笑)

 

大きな拍手を巻き起こしながら、軽やかに6人の演奏がスタート。TOSHI-LOWさんのギターの音がやや埋もれて聴こえる感じでしたが、リズム隊3人の低音が心地よく、全体的な音響は悪くない。TOSHI-LOWさんとMartinさんはしきりに体を揺らしながら、他の4人は比較的演奏に徹しながら、まとまりのあるグルーヴを生み出す。

 

「別に黙って大人しく観てろって訳じゃない。踊りたかったら自由に踊って。次の曲はみんなが"歌って"くれると思います」と呼びかけ、「こころの花」をプレイ。イントロのパーカッションから切なくあったかいアコギが切り込む瞬間の心地よさ、歌メロの美しさが身に染み渡る。

 

「Martinさん、KAKUEIさん、ありがとう。あなた達がいない4人じゃ100%雨降ってたから。フジロック台風来たからね」と、MCでは軽い調子で笑いをとる。開放的な会場の雰囲気と相まって、かなりリラックスした空間になっていました。とてもあの暗い地下のライヴハウスで、張りつめた緊張感を演出してきたバンドと同じメンバーとは思えない。

 

以前僕が観たOAUのライヴは渋公とビルボードライヴの2回で、前者はコンサートホール、後者はライヴレストランと、OAUのサウンドに充分に合ったムーディーな環境で、それはそれでとても良かったのですが、この日は野外ということもあり、以前とはまた楽曲から受ける印象が全く違う。

 

通常のコンサート会場である以前のライヴと比べて、辺りに空間を遮る壁が無いため解放感はもちろん段違いだし、時折風が吹き抜け、視界には真緑に染まった木々(どうしても背の高いビルが見えてしまうけどそれはまあ仕方ない)、そして空は雲のほとんどない晴天で、頭上にうっすら三日月が見える。この空間に彼らの素朴で優しい音がブワーッと広がっていく。この音と空間の理想的なマリアージュは野外だからこそ。屋内の会場であればこの音を全身に浴び、包まれる感覚は味わえなかったと思います。ニューアコとかはこんな感じなのかな。

 

こんな環境で小気味良いギターの応酬が楽しめる「Follow The Dream」、エモーショナルな歌メロがサビ終わりを彩る「all the way」に、牧歌的でのどかなムードを描き、一層快い空間を作る「朝焼けの歌」をゆったり座りながら聴けるとは、なんという贅沢な環境なんだろうか。黙っていても自然と身体が揺れ出してしまい、ずっとこの空間に身を預けていたくなる。

 

特にTOSHI-LOWさんの繊細な歌声の魅力が際立つ「夢の跡」は素晴らしかった。特に好きな曲だからというのももちろんありますが、少し薄暗くなってきたこの時間帯に、この感傷的な歌声と、ゆったりと流れるヴァイオリンが本当に美しく聴こえました。

 

「次の曲はある映画の主題歌になった曲です。この曲をこんな霞が関のド真ん中で歌うとよく伝わるんじゃないかと」とチクリとしたMCのあとに「俺達だけじゃ伝えきれないと思うから」と、下手の方から細美武士さんが登壇。その瞬間歓声が上がり、僕のすぐ前の女性客なんかは「キャーッ!」という黄色い声まで挙げるほど。細美人気恐るべし...!

 

もちろんそこでプレイされるのは映画『新聞記者』(現代社会の闇に深く切り込んだ反権力的評価がされている作品らしく、邦画はほとんど観ない僕でも結構興味あります)の主題歌である「Where have you gone」。細美さんのハリのある高音コーラスが、この空間を貫くように木霊しました。

 

野音で今度the LOW-ATUSやろうよ。好き好きロンちゃんの前座で」と少しだけMCに参加したあと細美さんは退場。その後のMCで「次にやる曲は普段は最後の方にやる曲だけど、ホントは今くらいの時間にやってみたかった。少し空が紫色になった夜になる手前の、ちょうど帰る時間。この曲聴いたからって帰らないでね」と語りだし、ここ最近のOAUの活動が活発化する大きな要因になったと思われる「帰り道」が演奏される。

 

この曲のどこか感傷的になれる郷愁が本当に好きなんですが、たしかにこの夕方あたりの時間に聴くと、それが一層色濃く感じられる気がしますね。

 

「帰り道」が終わる頃にはあたりもだいぶ暗くなり、ステージバックの証明がつく。この日中帯から夜に変わるくらいの時間を味わえるのも、野外ステージの醍醐味だよな...と思いつつ観ていると、次に披露されたのは新曲。

 

「今会社が決済の時期なんだけど、当然ながら大赤字。だけど今俺は本当に幸せです。強がりで言ってるんじゃないよ。今この状況で俺たちはステージに立つことを決意して、あなた達もここへ来ると決断して今ここにいる。そんな時間を噛みしめることができて本当に幸せです」と、まっすぐオーディエンスに語り掛けたTOSHI-LOWさんがギターを下ろして歌い出す。

 

世界は変わる」と名付けられた曲は、「BRAHMANとして発表される権威に中指を立てるパンクな曲も、OAUを通せば愛の歌に変わる」という言葉通り、全編日本語詞、かつOAUらしい実に温かなメロディーに彩られた楽曲。ハンドマイクで自由に歌うTOSHI-LOWさんと、アンサンブルを奏でるメンバーの姿がステージライトに照らされて、どことなく幻想的な輝いて見えました。

 

そして圧巻だったのはラスト。インストパートを挟んでからの「Again」「Midnight Sun」「Making Time」のアップテンポ曲の3連打でした。この曲の高揚感に釣られたオーディエンスが一斉に立ち上がり、思い思いに手を上げ体を揺らす。ダンサーが登場し、バックのOAUのオブジェが様々な色に発光し、すっかり日が暮れた中、輝きを増すばかりのステージから目が離せなくなる。

 

この「煌めくステージを眼前にした、あたり一面に広がるオーディエンス」という光景を、優雅に跳ね回るアコースティックサウンドに包まれながら見渡したときの多幸感は筆舌に尽くしがたかったです。ライヴが始まる前は「結構後ろのほうか...。A列の人は目の前がステージで羨ましいな...」なんて思ったりもしたのですが、この時点でそれは間違いだったと悟りました。この光景は、全体を見渡せる後ろの方でしか観られなかった訳ですからね(もちろん前の方は前の方ですごく良かったんだろうけど)

 

もうこれだけで充分以上満足、もう思い残すことは無い、とすら感じられる瞬間でしたが、ここでは終わらずアンコール。先程の「Making Time」のクライマックス感が最高だったのですが、それでも蛇足にはならずにしっかりと空気を切り替えて、井上陽水さんのカバー「最後のニュース」を披露。

 

語りかけるような出だしから振り絞るヴォーカルにいたる展開に固唾を飲んで見守り、「Change」のどこまでも伸びていくコーラスで余韻を残しながらの幕引きとなりました。

 

彼らの楽曲が元々持つ魅力に加え、OAU特有のオーガニックなサウンドと野外という環境の親和性の高さ、さらには徐々に日が暮れていく感傷的な時間帯などが重なって、本当に心の奥底まで染み渡るような2時間。音楽のライヴとはここまで感情が動かされるものだと、改めて気づかされたような気がします。

 

規制やら不要不急やらが叫ばれている今のご時世において、やっぱり僕の人生に音楽は、ライヴは必要なんだと確信しましたね。これほどまでに他の事を忘れて、身も心も洗われる瞬間は生のライヴ以外にありえません。掛け値なしに素晴らしい時間を過ごせました。

 

あと新曲がメッチャ良かったので、早いとこ音源化よろしくです。

 

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