ドラムの悠さんが脱退し、元LIGHT BRINGERのJaYさんが正式加入してから初の音源。サポートドラムとして、本作リリースに伴うツアーに同行しているHibikiさんが参加しています。
ただバンドの編成が変わったとはいえ、メインソングライターはヴォーカルの苑さんであることに変わりなく(一曲はJaYさん作曲ですが、特に「なんか違う」みたいな印象を与えることはない)、JaYさんは『PANTHEON -Part 1-』からレコーディングに携わっていたので、楽曲の質が変化するようなことはありません。
内容としては伝統的なメロディックメタルとモダンロックを融合した彼ららしい作品で、これまでの音源を気に入っている人の期待を良くも悪くも裏切らないと言えます。全曲ほどよい疾走感があって気持ちよく聴きとおせるのも良いですね。
ただANZIさん脱退以降コーラスやシンフォニックサウンドがやや薄いというか、ちょっと淡白になっている感があり、本作もその例外ではなく、そこにやっぱり物足りなさはあるかも。
M1「Invisible Chaos」は苑さんのハイトーンがAメロから炸裂した疾走曲で、もう声がギンギンに高い高い。僕はたまにカラオケに行ったときは「GLORIA」とか「Innovational Symphonia」あたりを歌ったりするんですがこれはムリだな(笑)
やや翳りを見せるシリアスなメロディーを朗々と歌い上げるサビが気持ちよく、ラストの大サビの畳みかけがまたカッコいいな。
JaYさん作曲のM2「孤独を知るには一秒も長すぎる」は、バンドの要とも言える彩雨さんのキーボードがインパクトを放つアップテンポナンバー。短い間に言葉を詰め込んだ出だしから続く、ややテンポを落とした堂々たるサビが印象的。最初聴いたときは「少しメロディーが弱いかな...」と思ったのですが、聴きこむごとにサビのドラマチックさにジワジワやられました。ラストのリードギターによるソロとツーバス連打を決める疾走ドラムの絡み合いがカッコよく、大きな聴きどころになっていますね。
M3「It's You」はバンドのモダンな側面が色濃いハードロック寄りの疾走曲で、サビのシンガロングとこのバンドお得意のやたら身近な生活感を醸し出す歌詞(笑)が特徴。シンフォニックメタルバンドに求められる曲調かどうかはともかく、純粋にメロがカッコいいのでライヴでは盛り上がりが期待できそう。
メンバーチェンジを経ても"らしい良曲"を生み出すことができることを示すには充分な作品であると思います。サポートのHibikiさんが何気に手数多いプレイを随所で披露しているので、正式メンバーではないとはいえ彼が今後どのように曲を彩っていくかにも期待がかかります。
M1「Invisible Chaos」 MV