もうあっという間にゴールデンウィークも後半、半分を過ぎましたよ。早いですね~...。
連休も半分を過ぎた後は心に暗い影がズンズン迫ってくるというもの。まああんまり休みが長すぎるとマンネリ気味になってしまうので、はやいとこ仕事始めてしまってもいいやという気持ちが無いわけではありませんが...
そんな憂鬱な気分に陥りやすい連休後半、音楽でも鬱屈した気分を味わってみるのも一興かと思い本作を取り上げてみます。
最近コメント欄でMUCCの最新作を勧めてもらい、「MUCCと言えば、いつかこのアルバムの感想書こうとか思ってて、そのまま書かずじまいだった」と今になって思い出したというのは秘密さ(笑)
そんなわけで、ヴィジュアル系バンド・ムック(当時はカタカナ表記でした)が2004年に発表した4thアルバム。
このムックというバンド、ここ最近こそエレクトロサウンドやポップなメロディーを取り入れたり、アニメ主題歌のタイアップがあったり、交流のあるアーティストによるトリビュートが発売されたりなど、音楽性も活動の幅も広がっている感じですが、初期の彼らはとにかくひたすらに悲しく暗かった。
昭和歌謡に通じる哀愁のメロディーに、魂のこもった泣き叫ぶようなヴォーカル、ヘヴィでドゥーミーな演奏、そしてなんといっても絶望をそのままパッケージしたかのような陰鬱さを放つ歌詞が特徴で、病みに病んだ暗黒音楽を展開していました。
そして本作はそんな彼らの悲しみが頂点に達した、まさに絶望音楽の最高峰・最深淵とも言うべき作品。
作品としての基本線は先ほども述べた通り、歌謡曲風の哀愁のメロディーとヘヴィなサウンドを絡めたものであり、その作風がブレることはない。
しかし本作を単なる"歌謡ヘヴィロック"の一言で片づけることはできません。とにかくただひたすらに重く、痛々しく、息が詰まりそうになるほどの陰鬱さに満ちているのです。希望の光が一筋も見いだせない。
M12「溺れる魚」、M13「名も無き夢」のように比較的明るめなメロディーが聴ける曲もあるにはあるのですが、そんな曲ですらどこか陰のある歌詞のせいもあってか、ポジティヴな気分に浸ることはできない...
あまりにもストレートな孤独・苦痛が突き刺さるM2「誰も居ない家」、M3「遺書」からスタートしたら最後、Slipknotを思わせるようなアグレッシヴな曲から、ドロドロとして退廃的でスローな曲、歌謡バラードと言えそうなメロディアスな曲まで、ひたすらに嫌悪と悲哀があふれ出て止まらない。特にM3の歌詞が胸に刺さる人は多いのでは...?
とにかく心にズンと重くのしかかる曲ばかりで構成された本作ですが、それらを聴き続けてきたリスナーを容赦なく絶望の底まで叩き落とす最凶のキラーチューンが最後に待ち構えています。
それがM15「朽木の塔」。この曲における逹瑯さんのヴォーカルはまさに鬼気迫るという表現が相応しい。「デス声」とも、「シャウト」とも、「スクリーム」とも呼べない、生々しい負の感情が詰まった「人間の叫び声」。
この曲以上にヘヴィな音を鳴らす楽曲というのはこの世に腐るほどあると思いますが、この曲以上にヘヴィな感情を乗せた楽曲というのはそうは無いのではないでしょうか。聴いていて何だか気が重くなるというか、憔悴したような感覚になってきます。
間違いなく名曲と呼べる出来ではありますが、さすがにコレを連続で聴き続けると精神的にまいってしまいそうなので、何度もリピートを誘発されるようなことはありませんね...。この曲を「いつも何度でも聴きたい!」という人は多分精神をヤラレています(笑)
喜怒哀楽における"哀"の感情を極限まで濃縮した、まさに日本を代表する「負の名盤」。心にやり場のない悲しみ、孤独、苦痛、絶望を抱えているすべての人に聴いてほしい作品です。気軽にBGMでサクッと聴くのには一切向いていないので、聴くならば本腰を入れて聴くべし。
しかしアレですね、前回せっかく令和一発目として、極上の高揚感を与えてくれる名盤を取り上げたというのに、その後すぐに飛翔した感情をズドーンと突き落とすような作品の感想を書くようなマネをして良かったんですかね?(笑)
M14「モノクロの景色」 MV