- 歌メロの哀愁は前作と比べるとやや甘め
- ヘヴィさ満点の男臭さはさらに向上
- まだまだパンチ力が鈍ることはない!
アメリカン・メタルシーンにおいて非常に高い注目度を保ち続ける、モダングルーヴメタルの雄・FIVE FINGER DEATH PUNCHによる8thフルアルバム。タイトルは「フェイト」と読ませるようです。
すでに大物と言って差し支えないバンドながら、前作『And Justice For None』からそれほど長い間隔を置かずに新作を出すクリエイティヴな姿勢がまず良し!
前作は彼ららしい攻撃的でモダンなグルーヴメタルは一切ブレず、それでいて非常にキャッチーな歌メロ、美しい叙情バラードを豊富に取り揃えた名作で、2018年の年間ベストアルバムにも選出するほど気に入りました。
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当然本作に懸ける期待も相応に高くなる。今回もまたたくましさ全開のグルーヴィーなサウンドと、男の哀愁に満ちたメロディーを聴かせてくれるのか...と本作を流してみる。
そして聴いてみた結果、残念ながら前作ほどの快感を得られるアルバムではなかったかなあ...?というのが最初の印象。
何が足りないのかって言うと、単純にメロディーのフックが前作と比べて、ちょいとばかし弱く感じられちゃうんですよ。硬派一辺倒のバンドサウンドに、ほんのりヨーロピアンテイストを盛り込んだ男の哀愁メロディーが交錯する。これこそ僕が大層気に入った彼らの音。
しかし本作はどうにもそのメロディーの引きが少しばかり甘い。先行公開されたM2「Inside Out」も、激ヘヴィなリフこそ最高にカッコいいんですが、もう少しサビにキャッチーさが欲しいところ。
パワフルな方向性の楽曲が多くを占めるのは嬉しいところですが、もう少し歌に彼らならではの「男泣き」が欲しかったな。
ただ楽曲のクオリティーの高さは流石に人気バンドたるところ。どの曲もガッツリと下半身に響いてくるヘヴィさを有し、ひ弱さなんざとは相変わらず無縁。リズム重視でありながら歌心もしっかり感じさせる楽曲の作りは見事。
5FDP節とも言えるヘヴィリフを刻み、アイヴァン・ムーディーの男惚れ必死の低音クリーン、野獣の如きデスヴォイスで男臭さと破壊力を演出する。問答無用で頭を振り、モッシュピットに飛び込める音は全く変わっちゃいない。方向性自体にはまったく不満なんかない出来栄えです。
これぞ5FDP流のメタルアンセムだ!と言いたくなる王道のM3「Full Circle」、M15「Death Punch Therapy」なんかは有無を言わせぬカッコよさだし、まるでモダンプログレ・メタルかと思うような速弾きギターが飛び出し、アグレッシヴなドラムの連打も心地よいM10「This Is War」も良い!切ない哀愁の効いたバラードM13「Brighter Side Of Grey」も名曲ですね。
また今回はギターソロが非常に魅力的になっていて、下手にテクニックに走らないメロディアスに唸るソロを堂々と奏でている。土臭い哀愁を演出するアコギと合わせて、メロディアスなギターの見せ場が目立つのがポイント。グルーヴ/オルタナティヴメタルに分類されるバンドにおいて、ここまでメロディーに振り切ったプレイができるのはなかなかないのでは。
今までブレない男の鋼鉄サウンドでリスナーをブン殴り続けてきた彼らですが、今作もまたタフで切ないメタルの美学を徹底してくれました。メロディーの面では前作には及びませんが、 期待にはしっかり応えてくれましたね。
個人的に本作は
"一切不変の5FDP流メタルが100%堪能できる充実作。歌メロは前作ほどではないが、ヘヴィさとパワフルさはまだまだ伸び盛り"
という感じです。
M2「Inside Out」 MV
M3「Full Circle」 Official Audio