- ラジオと楽曲が交互に聴ける変則アルバム
- ラップパートだけでなくポップスらしいメロディーも充実
- タイトルトラックのリリックが突き刺さる
フリースタイルラップバトル ULTIMATE MC BATTLEにて三連覇を達成したラッパー・R指定さんとDMC WORLD DJ CHAMPIONSHIPS 2019で見事優勝を果たしたDJ松永さんによる、1MC・1DJヒップホップユニットの(本人たちはミニのつもりじゃないらしいけど)ミニアルバム。
僕が大学生時代CDショップでアルバイトしていた頃、インディーズ時代のEP「たりないふたり」が妙に売れ筋が良く、「なんか全然知らんけどこの人たち流行ってんな~」と何となく印象に残っていました。
それから年月が経ち、様々なライヴイベントやメディアへ出演し、オールナイトニッポンで番組を持ち、ヒップホップという日本ではあまりメインストリートに出てこないジャンルでありながらチャート上位にランクイン、情熱大陸の密着取材を受け、帝京平成大学のCMに出てファミマの店内放送にも出て、そして日本武道館公演を成功させ......と、破竹の勢いで知名度を伸ばしてきました。ここまでの存在になるとは当時はとても思わなかったな~。
もともと僕はラップやヒップホップといったジャンルにはとんと疎く、むしろラップに関しては苦手意識を持っていた(曲にもよるけど)のですが、BRAHMANとのコラボレーションでILL-BOSSTINOさんのラップを何度も聴き、オモコロの記事でヒップホップに関する話題を目にすることもあって(笑)、情熱大陸を見たのがダメ押しとなり、日本のヒップホップのCDを始めて購入。
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本作はDVD付のライヴ盤と、CDのみのラジオ盤の二種類の形態があり、僕はラジオ盤の方を購入。ラジオ盤とはその名の通り、ラジオ番組のように曲と曲の間に二人のラジオトークが挿入され、純粋に曲と呼べるのは偶数トラックのみという変則的な仕様になっているのが特徴。
CDの音源を聴いているのに、「お聴きいただいたのは~」とか「Creepy Nutsで~」というラジオならではの音声が入ってくるのはかなり新鮮ですね。もちろんミュージシャンなので本職の芸人さんのように笑かすということはありませんが、ラジオパーソナリティーをやっているだけあって普通に饒舌。
そして肝心の楽曲の方ですが、普通に楽しんで聴けました。ラップ・ヒップホップとしては歌謡曲らしい歌モノとしてのメロディーの要素が強いので、僕のようなメロディアスな曲に親しんでいて、ラップをあまり得意としていないような人でも充分に聴きやすい。
さらにレベルミュージックとしての反体制のメッセージは皆無で、今をトキメク人気俳優の菅田将暉さんを迎えた曲すら存在し、その中でもM10「サントラ」のサビなんかは、まるで青春パンクかと思わんばかりな爽やかな疾走を聴かせる。ガチのラッパーやヒップホップアーティストからは「安易にポップスに迎合した、大衆性に満ちた商業ラップ野郎」とディスられて仕方ないかもしれません。
しかしヒップホップ門外漢の僕としては、彼らのこの聴きやすいスタイルはプラスに働きます。いきなりPUBLIC ENEMYとかはハードル高いですからね。R指定さんのラップはラップバトルのチャンピオンになっただけあり、怒涛の勢いながらも聴きとりやすく鼓膜になだれ込む。特にボースティングスタイルのラップを決めまくるM4「耳無し芳一Style」は圧巻。
しかし本作のポイントは何といってもタイトルトラックであるM14「かつて天才だった俺たちへ」でしょう。これはその前のラジオトークを含め、リリックがひたすら胸に響いてくる。子供の頃は自分に無限の可能性があったのに、年を取るにつれて自分のやれないこと、限界がわかってくる。僕もバスケ部で他のメンバーほどうまくプレイできないことをひしひし感じていただけに、このリリックに感銘を受けないわけにはいかない。本作を買ったのはこの曲のMVにグッときたのも理由の一つなんです。
純粋なヒップホップリスナーの評価はわかりませんが、ヒップホップという攻撃的なイメージのあるジャンルとしてはかなり聴きやすく、さらに核となる名曲もしっかり生み出せていて、良いアルバムでした。
個人的に本作は
"心に響くリリックに大衆的な要素もうまく巻き込んだ親しみやすいヒップホップ"
という感じです。
Creepy Nuts / かつて天才だった俺たちへ【MV】