- 過去作からヘヴィさが大幅パワーアップ
- ギター&キーボードのダイナミズムはさらに進化
- 緊張感とカッコよさは過去最高
前回のアレキシ・ライホの訃報を受けて書いた記事に、『Hate Crew Deathroll』への思い入れみたいなことをちょっと書きましたが、アルバム感想として触れていなかったので、このタイミングで取り上げたいと思います。
「著名人が死んでから誉めたてる」みたいなノリになってしまいそうで書くべきか悩んだんですが、追悼の意を込めて今文章を綴ってみようかと。
90年代後半にネオクラシカル系のデスメタルバンドとして登場し、そのクサさ満載のフレーズをかき鳴らす美しきキーボード、そこに激しくバトルを挑む超絶速弾きギター。このインパクトによりメロデス界の代表格としてのし上がった彼らが、ダメ押しとばかりにリリースした超名盤。彼らの代表作としてはもちろん、メロディックデスメタルというジャンルにおいてもトップクラスの人気を誇る一品。
1st『Something Wild』と2nd『Hatebreeder』で聴かせてくれたクラシカルなメロディーは本作においてはほぼ消滅。キラキラしたキーボードによるネオクラフレーズも聴かれなくなり、いわゆるクサメタルっぽさは本作には感じられません。
しかし元々持っていたキーボードとギターのダイナミズムは変化していないどころか、さらに進化すらしているほど研ぎ澄まされ、全ての曲において神懸かり的な速弾きソロが炸裂。音質もギターリフはグッとヘヴィになり、サウンドに厚みを出すベースの存在感も増え、全体的にブルータルで力強い仕上がりに。
この結果クサメタルの悪い点(と言えるかは好みによるけど)であるダサさや安っぽさは一掃され、獰猛なテンションの高さと、タイトに引き締まりつつド派手に暴れまわる演奏が聴ける名作に仕上がりました。
M1「Needled 24/7」は彼らを代表する超名曲で、オーケストラルヒットからキレのあるリフと高速ギターで開幕。強烈にキャッチーなフレーズで一気に聴き手の意識を奪い、アグレッシヴなリフによる突進でテンションをさらに底上げ。後半のギターとキーボードのソロでトドメとばかりに強引に昇天させられてしまう。
M2「Sixpounder」はさらにヘヴィなエッジを持ったリフがド頭から登場しヘッドバンギングを誘発しつつ、相変わらずギターソロはキャッチー&テクニカル。M3「Chokehold (Cocked 'n' Loaded)」はヤンネのキーボードがソロで大活躍しつつ、キメのオーケストラルヒットで鳥肌。M4「Bodom Beach Terror」はリズミカルでノリの良いヘヴィリフの疾走が眩暈がするほどカッコよく、美しくキャッチーなバッキングのキーボードが非常に気持ちいい。
とにかく一曲一曲のクオリティーの高さ、カッコよさがべらぼうに高く、後半に差し掛かっても全くテンションが落ちないんですよね。唯一のスロー曲であるM5「Angels Don't Kill」ですら単なる箸休めにはならず、メインとなるキーボードの旋律でじっくりと聴かせてくれる。
M6「Triple Corpse Hammerblow」の異常な緊張感でどんどん迫ってくるかのようなギターに圧倒され、M7「You're Better Off Dead」のサビのシンガロングとギターソロに胸を打ち抜かれ、M8「Lil' Bloodred Ridin' Hood」のブルータルに暴れまくるギターに脳を切り刻まれ......
そして最後に待ち受けるタイトルトラックは、「Needled 24/7」と並ぶ、下手すれば上回っているかもしれない超キラーチューン。徹頭徹尾攻撃的で、ヘヴィなんだけどメロディアス、そしてサビにおけるメロディーとシンガロングのクールさと、本作の持つカッコいい要素全てを濃縮したかのような恐ろしい曲です。どんなにアグレッシヴに疾走しててもキャッチーであることを忘れないのが最高なんだな。
この文章を書くために久しぶりに何度か通して聴いてみましたが......いや、ホントにカッコいい。メタルのカッコよさをすべて網羅してるのではないかと思ってしまうほど、あまりのカッコよさにアドレナリンがドンドン湧き出てくる。
間違いなくメタル史に名を残す超名盤。この興奮をリアルタイムで経験できた人たちがうらやましい限りです。
個人的に本作は
"ネオクラ要素と引き換えに得たブルータルな音圧とダイナミックな演奏により、史上最高のカッコよさを体現することに成功したモンスターアルバム"
という感じです。