- メジャー1stフルでも変わらずヘヴィでカオス
- 超絶技巧の中に確かに光る歌メロの魅力
- プログレッシヴな演奏炸裂の大作チューンも有り
沖縄県は石垣島出身の、4ピースプログレッシヴメタル/カオティックハードコアバンドの4thフルアルバム。
前EP『Reignition』でメジャーデビューをした彼らですが、本作が待望のメジャー1stフルアルバムということになります。
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破壊的ヘヴィさ、シャウトとクリーン共にハイレベルなものを聴かせるヴォーカル、複雑に入り乱れつつも統一感のある演奏という、バンドのポテンシャルをEPの時点でガッツリと主張していましたが、本作においてもその強みが十二分に活きてます。
M4「Patient of Echo」は8分半、M10「Protopterus」は11分と、大作級の楽曲も収録されていますが、アルバム全体では10曲で、合間にインストナンバーを挟む構成により、比較的コンパクトな印象を受けます。ただでさえ情報量の多いバンドなので、長々続くようなことにならないのは個人的に嬉しい。
前半から中盤にかけて存在する大作M4は、終始怪しげな、それでいてどこか美しさを感じさせる響きを奏でるギター、切れ味抜群のシャウトと切々としたエモーショナルなクリーンヴォーカルが次々と畳み掛け、ドラムのリズムがコロコロと変わるプログレ風味も満載と、一筋縄ではまったくいかない楽曲。
ここまで凝った展開が8分以上も続くというのに、変に小難しさを感じさせずにしっかりと聴き浸らせてくれるのは、やはり根底にメロディーのキャッチーさ、歌モノとしての魅力があるからなのだと思います。サビはかなりわかりやすいですし。
プログレッシヴメタルというジャンルでありながら、ヴォーカルの魅力がしっかりと押し出されているという点は、どの曲でも程度の差はあれど共通してて、特にバラードであるM5「Welcome Back」とM7「Irreal」は、とっても叙情的な響きが美しいメロディーに満ち溢れた曲であり、こういう完全に歌に注目させる曲も入れ込んでいるところは、良いメロディーを求めている僕のような人間にはありがたい。
それでいてオープニングを飾るM1「Appetite」のように、カオティックなヘヴィサウンドで攻撃的に突き抜け、サビでは非常にキャッチーになる、前作の「Modern Breed」に通じるような王道のラウドチューンも完備。M2「ROAR」はアニメ主題歌になっただけあり、攻撃性を失わない範囲でさらにわかりやすいキャッチーさに溢れている。
そんなメロディックメタルとしてのクオリティーも高い出来になっている中で、アルバムのラストを締めくくるM10が、本作中最もプログレ度の高い大作に仕上がっているあたり、どれだけわかりやすい曲をやろうとも、必要以上にポップなサウンドに寄らず、バンドのスタンスを変えようとはしないんだろうと思わせられますね。
いや、しかし前EPの時点ですごいバンドだと気付かされていましたが、本作の出来も素晴らしい。プログレという言葉にあまり良いイメージを持ってなかった僕ですら、ここまでアルバム1枚通してグッと取り込まれてしまうとは。
ここまで聴きやすく、かつヘヴィでカッコいい音に仕上げられるのですから、僕と同様にプログレに馴染めない人でもきっと聴けると思います。決して大衆性がある言えるアルバムではないものの、ヘヴィミュージックファンならきっと良いと思えるはず。
個人的に本作は
"ヘヴィ&カオティックな技巧を貫いていながら、アニソンにもなれるほど歌が充実したメロディック・ラウドサウンド"
という感じです。