毎年の恒例イベントになってきている、OAUのBillboard Live・New Acoustic New Year、今年も奮発して行ってきました。
チケット代の他に座席の指定料もプラスされ、さらに当日はお高めな料理の代金も払うという高額ライヴとなりますが、なあに、この日のために毎年12月にボーナスをもらえてるんじゃないか。購入するのに迷うことはない。
東京公演は平日開催となるので、仕事の後にも余裕を持って会場へ向かえるように、2部構成となっているうち、後半の21時スタートの方を選択。仕事場から六本木へのアクセスはそこまで悪くないので、平日のライヴながら時間との戦いにならないのはありがたい。
退勤直前になって、若干の仕事のトラブルに見舞われる事態があったものの、さほど時間を喰われることなく退勤に成功。途中CD屋さんでSTRIKERとGREEN DAYのアルバムをチェックし、開場時間を少し過ぎたくらいで東京ミッドタウンに到着しました。今日は仕事帰りでスーツ姿なので、六本木という場所でも場違い感は少なかったはず。
今回の座席は3階の指定席、非常にステージから近い位置で、しかもど真ん中という、観るのに何の支障もない絶好のポジション。こりゃええわい。
とりあえずメニューを見て何を頼もうか吟味していると、スタッフの方が「ご来店ありがとうございます」と声をかけてきたので、パッと見上げて軽く会釈をする......のですが、
そのスタッフさんは僕に声をかけたわけではなく、別のお客さんに対して挨拶していたのであり、僕のリアクションに気づくと「はい、ご注文承ります」と返答してきたのです。完全に僕が注文しようと合図したヤツだと勘違いしている。
ヤベッ!まだ何食おうか全然決めてねえぞ。と、とりあえずドリンクだけ頼んで、フードメニューは後で頼むとしようか。焦った僕は、いったんジントニックだけオーダーする。すると、
「かしこまりました。ではメニューをお下げしますね」
えっ?
ちょっと待って。ここって追加注文できないんだっけ?待って待って、フードメニューも食べたいものあるの。この夜のためにお昼ご飯控えめにしてたから、お腹減ってるの。空きっ腹にカクテル1杯だけって、そりゃないよ。お願い待って。
そんな戸惑いが頭の中をぐるぐる駆け巡っていることなど露知らず、スタッフの方は丁寧な対応でテーブルの上をさっさか片付けていく。待ってよ。ご飯食べさせてよ。
綺麗に片付いたテーブルの前でしばし呆然。完全にオーダーをしくじった...。
周りの人たちはそれぞれ思い思いの料理を嗜み、お酒を飲み、友人知人と語り合いながら開演を待っている。見るからに高級そうな(実際に高級だ)料理を頬張る人に囲まれながら、空腹のまま酒をチビチビ飲むという、非常に厳しい飯テロを喰らうことになりました。いやあ、この30分はなかなかキツかった。チキンの1個だけでも分けてくんねえかな。
Billboard Live TOKYOにて、フードメニューを頼みそびれて、周りのみんなが美味しい料理に舌鼓を打つ中、空腹のまま酒だけチビチビ飲むという、残酷な飯テロを食らっています。 pic.twitter.com/bu717aHQZI
— Show (@show_hitorigoto) January 19, 2024
そんな厳しい時間を乗り越えて、いよいよ開演時間を迎える。普段のライヴハウスでは見られない洒落たファッションのメンバーがステージに登壇。場所が場所なだけに、どのメンバーもしっかりと観られる。こりゃいいな。
そしてTOSHI-LOWさんは4階(ステージがあるフロアの1階上)の客席からマイクを持ち登場。演歌歌手かなにかかといった感じで口上を述べながら、ゆっくりとフロアを回っていく。僕の位置からは見えませんでしたが、どうやらお客さんの誰かからおひねりをもらったらしい。
そして4階から3階へ降りる階段の踊り場で立ち止まり、フロア全域を見回すように優しく語りかけていく。「音楽は万能じゃねえ。世界を救うことなんてできない。戦争だって終わらない。災害もなくならない。音楽は、音楽が好きなヤツの心の奥の奥の方を、ほんの少しだけ変えてくれるものだ。そうしたら今日ここに来たあなたたちにとって、外に出たらちょっとだけ世界は変わっているんじゃねえか」 その言葉から続くように、オープニングナンバーの「世界は変わる」で、ハンドマイクのTOSHI-LOWさんは歌いながら、3階フロアをゆっくり歩いていく。
僕がいる位置はちょうど真ん中の通路に面しているところだったので、僕のすぐ目の前を横切ることに。距離にしてもう数十センチでしょうか。こんなに近い位置にいるのは、以前東京駅で握手してもらって以来かもしれない。
ステージを練り歩くようにしながら1曲分歌い終わったTOSHI-LOWさんは、そのままステージへと上がり、ここからいつも通りのOAUの編成となる。メンバー全員ヒッジョ〜〜〜に観やすくて、この時点で飯テロの苦痛などどこへやら。優しく楽しく、温かなサウンドに浸りっきり。
どこか牧歌的な印象を受けるKAKUEIさんのパーカッションと、MAKOTOさんのウッドベースが心地よく鳴り、綺麗に絡み合うアコギの音色が染み渡る。「Follow The Dream」に、「Peach Melba」からの「Homeward Bound」と、弾むような楽しさの中に、美しさが光るオーガニックな名曲が続々と飛び出す。普通のライヴ会場よりもお上品な環境ながら、曲の節々で歓声も上がり、手拍子も鳴り止むことがない。
やっぱりステージから非常に近いところだからかな。各々がどんな音を鳴らしているのかが、かなり聴き取りやすかったです。音がダンゴ状になることがない。この音響でOAUのサウンドを1時間半にわたって聴けるとは、高い金払って来た甲斐があったよ。
今日来たお客さんからは、赤ワインなどの豪華な差し入れがバンドに対してあったらしく、スタッフの人がメンバーのグラスにワインを注ぎ、皆で乾杯する一幕も。僕はもうその時すでにジントニックを飲み干してしまっていたのですが、一応はグラスを持ち乾杯に参加。
皆さん結構な勢いでワインを飲んでましたが、よくあのペースでグイっといけますね。僕なんか29歳にして未だに子供舌のままだから、ワインの苦渋い感じがあまり受け付けないんですよね。「これならぶどうジュース飲みたい」って思っちゃう。
MARTINさんがお正月にうまいもん食いすぎてちょっと太ったという、ごくごく日常的な話題から、人それぞれが感じる幸せについて考えさせられるものまでMCを挟みつつ、極上の音で奏でられる楽曲の数々。切ないアコギとヴォーカルが染み入る「This Song -Planxty Irwin-」が一際美しく響きました。
アンコール前のラストの「帰り道」では、身の回りの人へ「いってらっしゃい」「ただいま」が言えるの尊さを語ってくれましたが、最初のサビの「おかえり」を「ただいま」と歌い間違えるハプニングが発生し、TOSHI-LOWさんとMARTINさんが顔を見合わせて笑い合う場面が(本人曰く「熱が入りすぎて間違えた」)
アンコールでは人生で一回も乾杯の音頭をとったことがないというKAKUEIさんの乾杯に始まり、「夢の続きを」を演奏。「コロナを超えた後、ライヴが普通に観られる日常が夢のようだ!って思ってても、結局みんな慣れていってしまう。けど、ここにいる皆さんは違うでしょう?」という問いかけには大きくうなづいてしまった。
そして「夢の続きを」の後半のサビにて、TOSHI-LOWさんが観客に向かってスタンディングを煽るような仕草を笑顔で振りまき、それに釣られるようにみんな次々と立ち上がり、最終的には全員総立ち。僕の位置からは4階席の人たちは直接は見えませんが、ステージ裏の窓には立ち上がり手拍子をしながら楽しむ人たちの姿が映っていました。
ラストはライヴ定番の「Thank You」からの「Making Time」。この流れはOAUの鉄板と呼ぶべきもので、このダイナミックなヴァイオリンの旋律には、心の昂りを抑えることができません。ガッツリ手を振り上げて踊り狂いたいのですが、座席間隔が狭く、かつスーツ姿であることもあって、少し動きは抑えめにしました。
OAUのライヴを観るたびに毎回思うのですが、本当にこのバンドのライヴは込み上げるものがあります。一聴した感じでは優しいアコギの楽曲でも、心から多幸感あふれる楽しさを味わえるんですよね。ビルボードのような環境でもその音楽的魅力には何の変化もなく、体を揺らし全身で楽しめる。
その多幸感を持ったままミッドタウンを出て、イルミネーションが輝く夜道をポツポツ歩いているだけで「良い夜だ...!」と、普段感じないような感慨深さが満ちてくるのだから、冒頭でTOSHI-LOWさんが言った「音楽が好きな人の世界を少しだけ変えてくれる」という音楽の力は、紛れもなく本物なんだなとしみじみと実感したものです。
まあそんな素敵な夜のムードに関係なく、すぐに日高屋入ったんだけどね。腹減ってたし。