"メロディックハードコア"っていうと、アメリカ西海岸パンクみたいなポップで明るく、カラッとした雰囲気の楽曲をイメージする方が多いと思います(多分)。
10~20代の若いオーディエンスがピョンピョン飛び跳ねて体を揺らし盛り上がるようなイケイケな感じ。
しかし日本人の感性で"メロディック"を表現するとアメリカのそれとは異なり、底抜けの明るさではなくどこか憂いを持ったような、湿り気を帯びた切ないメロディーになるようです(もちろんアメリカにもBAD RELIGION、NO USE FOR A NAMEのような哀愁を武器とするバンドがいるし、日本にもアメリカのポップパンクと遜色ない明るさを表現するバンドもいるのでしょうが)
やはり日本人の好みは日本人が一番わかるのか、僕が好きなメロコアバンドは圧倒的に日本勢が多く、BRAHMAN、dustbox、Northern19、Last Allianceなどなど、中学・高校時代はこの手のバンドを狂ったように聴いていました。今でもこの手の音には愛着があるのか、気になるバンドの新譜はちょいちょいチェックしています。
そしてそんな日本人パンク勢において、メロディーの哀愁という一点において他の追随を許さない極上のものを聴かせるバンドがいます。それが彼らHawaiian6。
決してヴォーカル、演奏がすごく上手いわけではなく(むしろ同世代、同系列のバンドと比較すれば下手な部類かもしれません)、楽曲そのもののスタイルに飛びぬけた何かがあるわけでもない。
しかしギターヴォーカルのYUTAさんが生み出す、その昭和歌謡にも通じる激泣き・激クサの哀愁ダダ漏れメロディーが格別で、まさにJ-PUNK界のSKYLARKのごとき存在なのです!
(誤解されると嫌なので一応フォローしておくと、彼らはSKYLARKのようにメロディー以外がしょうもない訳ではなく(笑)、必要十分な演奏のクオリティーはちゃんと保持しています。最近はややテクニカルなギターソロも導入するようになったし)
そんなクサパンクマイスターの3年ぶり、5枚目のフルアルバム。
M1「Bleed」からもう笑っちゃうくらい今まで通りの歌謡メロが乱舞。これまで音楽性の骨格を一切変えてこなかった彼らだけに、今作も期待通りの哀愁歌謡メロコアが展開されている・・・のですが、聴き進めていくとちょっぴり違う気がしないでもない。
というのは全体的にやや明るめのフィーリングが目立っており、哀しみに満ちた叙情性が従来作と比べて控えめになっていると感じたから。
冒頭4曲の哀愁は強烈ながら(特にM3「Burn」)、M5「Shape Of Our Souls」から目に見えてポップさが前面に出てくる。
いやもちろん彼らのポップなメロディーも十分質は高いし楽しめるのですが、やっぱりこのバンドの最大の武器は強烈なまでの哀愁だと思っているので、それを軸にしたアルバムにしてほしかったかなぁ~というのが本音。青臭くも切ないメロディーで疾走し、ギターソロも聴けるM8「Ride On The Shooting Star」、美しくクサいメロディーとコーラスが爽やかなM11「Wish You Were Here」なんかすごく良い曲ではあるんですけどね。
全11曲のうち、5曲目以降の哀愁曲はせいぜい既発曲のM9「My Name Is Loneliness」だけというのがちょっと寂しい。せめてあと1~2曲くらい胸を締め付けるほどの歌謡旋律が欲しかったです。
「MAGIC」や「RAINBOW, RAINBOW」のようなポップさを求めている方は気に入るのではないかと思いますが、「Song of Hate」や「In The Deep Forest」のような哀し~い泣きメロを期待していた方(僕含む)には、良作ではあるものの大満足とはいかない出来かもしれません。M3のような劇メロをもうちょっとちょうだい。
あと余計なお世話かもしれませんが、シャウトを上手にできないバンドがM7「Justice」のような曲をやるのは無謀なのでやめた方がいいと思います(笑)
M3 「Burn」 MV
これぞHawaiian6の真骨頂
M10 「Wings」 MV