ひとりごと ~Music & Life-Style~

HR/HMを中心としたCD感想、足を運んだライヴの感想をメインにひとりごとをブツブツつぶやくブログです。

5/29 At The Gates JAPAN TOUR 2018 at 渋谷 TSUTAYA O-EAST

At The Gates 2018

ちょっと時間が空いてしまいましたがライヴ感想を。

 

最新作『To Drink From The Night Itself』を発売したばかりの、慟哭系メロディックデスラッシュバンドAt The Gatesの来日ツアー初日に行ってきました。LOUD PARK15では思い切りSanatonと被っていて観られなかったので嬉しい来日です。

 

先日のHER NAME IN BLOODと会場は違うものの行き先は同じ渋谷という事で、また良からぬ事が起きないか危惧していましたが、幸いにも特に何も起こらぬまま(それが当たり前なんですが)渋谷へ到着。スーツを着替えて外のロッカーに荷物をまとめて、アイドルの握手会らしき集まりを横目にO-EASTへ。

 

会場の中に入るとサポートアクトの一組であるHELLCHILDのサウンドチェック中。オレンジジュースを素早く飲み干して、フロア中央の後方あたりで待機。

 

HELLCHILDは速さより重さを重視したストレートなデスメタルで、モヒカンをキメたギターが何気にカッコいいリフやソロを弾いており良い仕事をしていました。ヘッドからビロ~ンと伸びた弦から何となくハイスタの横山健さんを思い出した…と言うと怒られますね(笑)

 

ただ一部のギターソロ以外にメロディアスと呼べる要素はほぼ皆無で、ヴォーカルは「ヴオオオオオーーッ!」と叫んでるようにしか聴こえない典型的なデスメタルスタイル。ライヴは普通にカッコいいものの、まあ家でじっくり聴きたいタイプのバンドではないですかね...

 

「新しい曲やりまーす」「ラスト2曲でーす」という非常に淡々としたMCを合間に挟んだのみで、あとはひたすら曲を繰り出すだけというとってもマイペースなライヴでしたが、規模こそ小さけれどモッシュ・サークルピットが発生して盛り上がっていました。まだ皆さんウォーミングアップって感じではありましたが。

 

HELLCHILDが終了しステージの準備が進んでいくと、スタンディングフロアの人口密度が高まっていく。火曜日の夜という週の真ん中のド平日にも関わらず集客はかなり上々。まあ後ろの方はよく見えませんでしたし、モッシュが始まると大きなスペースも出来てたので満員には遠かったのでしょうが、平日のO-EASTにこれだけ呼べるのはスゴイ。

 

8時半を回ったあたりで暗転し、最新作のオープニング「Der Widerstand」のあまりにも哀しすぎるイントロが流れてくると一気にフロアが沸き立つ。

 

哀しい。ものすごく哀しい。

ギターリフひとつ取っても、北欧風味の悲しみに満ちた叙情性が溢れまくっており、心の奥底を掻きむしっていく。トーマス・リンドバーグによる、本来怒りを表現するはずのデスヴォイスですら異常なまでに泣いている。このしわがれたヴォーカルがこの上なく切ないんですよね。トーマス、良いヴォーカリストです。ただ音源そのままのようなヴォーカルや面構えは文句なしなものの、お腹のほうが中年サラリーマンのようにポコっとしてたのがちょっと気になりました(笑)

 

リードギターが奏でるメロディーにおいて強烈な泣きを発散するメロデスバンドは他に数多いれど、リードに頼らずリフとヴォーカルでここまで哀愁を表現できるバンドって希有なのでは?もはやメロデスがどーたらこーたらでなく、"At The Gates流メタル"を確立してしまった感さえあります。ただひたすらに哀しみの波状攻撃に打ちのめされるのみ...。

 

ただそんなバンドの音楽性に似合わず(?)、観客の大きな歓声やモッシュピットに気を良くしたのか、積極的に笑顔を向けたりサムズアップするなど、意外にもパフォーマンスはフレンドリー。僕は上手側の前方にいたためトーマスやベーシストのヨナスとの顔が近い近い。MCにおいてもしきりに感謝を表明して表情も柔らかいため、あれだけヒリヒリした緊張感を持ったデスラッシュが炸裂しても、しっかりとクールダウンさせてくれる。いい具合に緩急がついている感じ。

 

またライヴ運びだけでなく選曲も非常に良く、最新作からはもちろん前作の『At War With Reality』、世紀の名盤『Slaughter Of The Soul』からも多くの曲をチョイス(それ以外はほとんどなかったけど)。『Slaughter Of The Soul』はもちろんの事ながら、直近2作もそれに全く引けを取らない、哀愁叙情デスラッシュの宝庫ともいうべき名盤なので退屈になる瞬間は一切ない。特に語りのSEから期待感を煽り、問答無用の切れ味を誇る無慈悲なギターリフでオーディエンスを殺しにかかる「Death and the Labyrinth」、テンポこそ落ち着いているものの、この上なく陰鬱なメロディーに満ち、アウトロのシンフォニックサウンドがまた強烈な悲壮感を醸し出す「The Mirror Black」がたまりませんでした。

 

ただやはりオーディエンスの反応が圧倒的に大きいのは『Slaughter Of The Soul』からの曲であることは間違いなく、「Slaughter Of The Soul」のイントロや、「Nausea」の曲名がコールされた瞬間は待ってましたと言わんばかりの歓声が木霊し、モッシュの勢いが目に見えて上昇する。少ないながらもクラウドサーファーも発生。バンド側もタッチをするなどしてその熱い反応に応えていました。

 

そしてアンコール後にあの金属音のような独自なイントロが流れ出せば、皆次の曲を一様に察して今日一番の大きさのサークルを生み出す。

そう、「メロディックデスメタル/デスラッシュといえばコレ」なレベルで支持を集める至高の一曲「Blinded By Fear」です。間違いなく今日のハイライトたる瞬間でした。

 

正直言っちゃうと個人的にはこの曲が飛びぬけてスゴイと思ったことって実はなくて、あくまで他の楽曲と同程度のキラーチューン程度の意識ではあるのですが(それはつまり彼らが『Slaughter Of The Soul』以降目立ったクオリティーの低下を見せていないということなんですが)、やはり周りの反応が熱いと一緒になって盛り上がれる。ちゃっかりウォールオブデスとサークルピットに混ざっちゃいました。

 

時間にして約1時間半、無慈悲なデスラッシュチューンのオンパレードを全身で浴びてきたわけですが、いや~~すごかったですね!参りました。ここまで潔いストレートな音を出されちゃ何も言えません。ただただひたすら慟哭の旋律に胸を締め付けられながら暴れるのみでした。エクストリームメタルの源流とも言える激音をしっかり胸に刻んできましたよ。