ひとりごと ~Music & Life-Style~

HR/HMを中心としたCD感想、足を運んだライヴの感想をメインにひとりごとをブツブツつぶやくブログです。

DIR EN GREY 『The Insulated World』

DIR EN GREY 『The Insulated World』

ヴィジュアル系ヘヴィロックの先達として数多くのフォロワーを生み出すも、どんどんと難解かつ不可思議な魅力を増していき唯一無二の存在感を発揮、今やすっかりフォロワーにはマネできない領域にまで到達してしまった感のあるエクストリームメタルバンドの記念すべき10作目のフルアルバム。

 

10年ほど前からヴィジュアル系らしいメイクから卒業するも、ここ数年はメイクに対して抵抗も無くなったのか、ライヴやアー写において派手なメイクを施すようになったものの、いわゆるヴィジュアル系らしいものとは趣の異なる現代アートみたいな奇抜なモノになっていますね(笑)

 

過去のアルバムの楽曲を演奏する企画ライヴ「mode of <過去作のタイトル>」みたいなのをやるようになったのも、かつてのヴィジュアル系時代を肯定的にとらえるようになったからなのでしょうか。

 

そしてサウンドにも若干の変化が見て取れたのが前作『ARCHE』。

UROBOROS』『DUM SPIRO SPERO』という二大傑作から続いてリリースされた前作は、それまでの難解でカオティックとも言える作風から一転して非常に歌メロがキャッチーかつわかりやすくなり(あくまでこのバンドにしてはですが)、ヴィジュアル系ロック時代の要素を思わせるほどにストレートになりました。

 

そして10作目となる本作も、そんな『ARCHE』からの流れを汲むわりかしストレートなアプローチの作品。『DUM SPIRO SPERO』のような密度の濃すぎるプログレッシヴな雰囲気はあまりなく、キャッチーさが目立った感じで敷居はかつてほど高くない。

 

ただ『ARCHE』が落ち着いた叙情性を押し出した曲が多かったのに対し、本作はかなりアグレッシヴな曲が多いのが特徴。京さんのヴォーカルワークもキレまくっており、実にテンションの高い狂気的な奇声を張り上げまくっている!(笑)

 

叩きつけるようなヘヴィリフから牙むき出しの獣のような咆哮でまくし立てるM1「軽蔑と始まり」から、不気味で怪しげなギターサウンドと、変幻自在のヴォーカルワークが特徴的なM2「Devote My Life」、シングルとなったキャッチーな側面も強いM3「人間を被る」と続くアルバム序盤の勢いが凄まじく、近年のアルバムとしては珍しいほどわかりやすいインパクトのある楽曲が続きます。

 

アルバム後半になると疾走感はやや落ち着きを見せ、ゆったりと聴かせるパートも目立つようになります。ダークさよりも儚さ、美しさを重視したM10「Followers」、ズルズルと引きずるような不穏感を放ちながらスローに進むも、途中からキレたように爆走するM11「谿壑の欲」、M12「絶縁体」の三連発はかなりの密度の濃さ。

 

ラストを飾るM13「Ranunculus」は前作の「空谷の跫音」と比肩するほど、わかりやすさに満ちた歌メロが特徴的な美しいバラード。エクストリームな楽曲のみならず、こういった楽曲でも"らしさ"みたいなものを十二分に発揮できるのがこのバンドの強みですね。作品を締めくくるに相応しい名曲だと思います。

 

ブチ切れたような疾走感、アグレッシヴさにフォーカスした作品と思いきや、不気味でドゥーミーなスローパート、京さんの高音ヴォーカルを活かしたドラマチックなパートもしっかりと備えたDIR EN GREYらしい作品であり、単一の作品としては文句のない出来です。

 

しかし『UROBOROS』『DUM SPIRO SPERO』で提示されていたような、このバンドでしか成し得ない孤高の世界観、荘厳かつ圧倒的な凄みみたいなものはやはり薄れており、『UROBOROS』を聴いて「このバンドは単なるV系上がりのバンドじゃねえ!唯一無二の存在だ!」と感嘆した身としてはやや物足りなさを感じるのも事実。

 

まあ良く言えばとっつきやすくなったと言えますし、個人的にも音楽には難解さよりもわかりやすさ、爽快感がある方が好きなのですが、DIR EN GREYにはあんまりそういったものは求めていないんですよね。

 

あとM5「詩踏み」はアルバム収録に際しヴォーカル含めてレコーディングし直されているみたいですが、シングルバージョンの方が個人的には好みです。

 

M13「Ranunculus」 MV

京さん曰くこのMVは「いつ見ても爽やか」とのことですが、コレを爽やかと思えるとは、やはりこの人の感性は常人のそれとはまったく異なるのだなあと思わざるを得ない(笑)

 

本作のトレーラー