ひとりごと ~Music & Life-Style~

HR/HMを中心としたCD感想、足を運んだライヴの感想をメインにひとりごとをブツブツつぶやくブログです。

BATTLE BEAST 『No More Hollywood Endings』

BATTLE BEAST 『No More Hollywood Ending』

バンドの音楽的な要であったアントン・カバネンが解雇されるという事件が勃発したものの、その後に発表された『Bringer Of Pain』においてアントン抜きでも個性を失わずに曲作りができることを証明したBATTLE BEAST

 

アントンが解雇された後に結成したBEAST IN BLACKが良質なアルバムを作っていることに対抗してか(まあ単なる偶然だろうけど)、彼らとかなり近いタイミングでのリリースとなった最新作です。

 

本作もまた前作以前の作風を順当に踏襲した内容で、80年代的な古き良きスタイルを貫きながらも、モダンな音作りのおかけで古臭さを感じさせない正統派メタル。「ホントに昔はアントンが曲作りの何から何までを手掛けていたの?」と疑いたくなるほどに持ち味は依然として残されています。

 

非常にキャッチーな歌メロ、ノーラ・ロウヒモによる強力なヴォーカルワークは相変わらず魅力的で、正統派のメロディックメタルファンであれば安心して楽しめる仕上がりになっています。

 

しかし個性が息づいているとはいえ、ここ数作続いていた全体的な楽曲のポップ化がまた一段と進んでおり、さらに角が取れて丸みを帯びたような雰囲気のサウンドは、攻撃力という点では過去最低レベルと言い切ってしまっていいほど。

 

ゴツゴツして武骨な印象を漂わせる硬派な正統派要素はほぼほぼ鳴りを潜め、爽やかとすら言えるほどの曲が多く、ノーラのヴォーカルもパワフルではあるものの、ロブ・ハルフォードにも通じるメタリックなシャウトはあまり多用しなくなっている。

 

M1「Unbroken」やM4「Unfairy Tales」のような正統派チューンでもその傾向は顕著ですが、爽やかポップ路線の最高峰と言えるものがM5「Endless Summer」でしょう。

 

これまでにもメタルの領域から逸脱したポップチューンもプレイしてきた彼らですが、今回もメタルのメの字もない一曲に。英米のメジャーなポップスミュージシャンが歌っていても違和感の無いレベルにまで到達しており、"戦闘獣"なんて名を冠するヘヴィメタルバンドに求められる音楽性とは口が裂けても言えない!ドメジャーキラキラポップスだ!!

 

......ただこの手の曲も優れたメロディーセンスを持つ彼らがプレイしているからか、僕は普通に好きですこの曲(笑) 個人的にはアルバム一枚に一曲はこういうのあっても良いんじゃない?と思うのですが、やっぱメタル一筋の人はこの曲は飛ばしちゃうのかな...

 

そしていくら演奏が柔らかくなったとしても、いくら非メタル曲を取り入れたとしても、それでもなおアルバム全体を通してメロディックメタルとしての完成度は高い。これはひとえに北欧出身が故の豊かなメロディーのおかげですかね。M3「Eden」、M6「The Hero」、M11「World On Fire」のサビは特に聴きやすいポップさを持ちながらも、哀愁が絶妙にブレンドされていてとても心地よく響く。

 

またM10「The Golden Horde」という必殺の疾走メタルナンバーが収録されているのもポイントです。わかりやすいキラーが入っているだけで全体の印象も底上げされますし、彼らがまだまだメタリックな曲で勝負できることの証明にもなりえますし。まあこういうのできるんならもうちょっと多めにやってほしいけど(笑)

 

ヘヴィメタルとしてのわかりやすい刺激がどんどん後退しているのにはやはり不満を禁じ得ないし、ギターソロがかなり控えめだったり、メタリックなシャウトの出番が明らかに減っていたりと、気になる点も多々あるのは確か。ですが正統派メタルと見なせるレベルは保たれてますし、良質なメロディーは全然損なわれていないため、充分に良作として捉えることはできました。

 

個人的にはメロディーがよりツボにはまり、バラエティに富んでいて飽きが来にくいこともあってBEAST IN BLACKの新作より気に入りましたね。

 

M3「Eden」 MV

 

M10「The Golden Horde」 Official Lyric Video