- バンドの闇を強調したDark Side Album
- ヘヴィで変態、ポップでファニーな要素もしっかり内包
- 過去作と大きく違わないドーパらしい作品
目まぐるしいという言葉すら生ぬるいほどに狂った変態的展開、ポップもハードコアもメタルもブッ込んだ多彩な音楽性、非常に高いレベルの演奏とヴォーカルを見せる国内ロックシーンの実力派&異端児・Ailiph Doepa。
僕も前作『OXYGEN』にて彼らの描く超絶変態ワールドにヤラレてしまったクチで、その後渋谷メタル会とシングル『COCOON』のレコ発ツアーで、強烈な世界観を生でガッツリ味わっています。
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そんな彼らがこの年の瀬に放つのは、"闇"と"光"というバンドが持つ要素を明確に分けた、フルアルバム2枚同時リリース。闇サイドは彼らのヘヴィな変態っぷりを存分に見せつけ、光サイドはシャウトの類をほぼ封印し、彼らのポップなフィーリングを強調したアルバム。
本作は4th Dark SIde Albumと銘打っており、その強烈なジャケからも想起されるように闇サイドのアルバム。ヘヴィでカオスなドーパらしさが全開の1枚。
しかしAiliph Doepaというバンドは、遊園地的とも言えるようなファニーさ、エンターテインメント性も多分に持ち合わせているバンド。それは闇サイドである本作においても例外ではなく、そう言う意味では過去作と比べてそこまでダークに徹底しているというわけではありません。いつものドーパ節が全編にわたって繰り出される、ファンであれば納得の1枚でしょう。
事前の宣伝文句からもうすこしエグい作品になっているのかと思っていた僕としては、良くも悪くも「いつものドーパ」な作風に若干の肩透かし感がないわけではないのですが、下手にヘヴィ一辺倒になるのではなく、ポップでファニーなフィーリングがあることこそ彼らの個性なので、方向性自体には不満はなし。
楽曲・ヴォーカル・演奏のクオリティーは前作『OXYGEN』で聴かせてくれたのと同様に高く安定している。というかここまで個性的&変態的なサウンドを、このクオリティーで量産できることは驚きとしか言えず、彼らの実力は底が知れませんね。
M1「My right hand thumb is a Kraken」は、彼らの新たな代表曲になり得るであろう、ドーパ100%の名曲。わけのわからん不穏なイントロのフレーズ、オペラチック歌唱からキレたシャウトまで使い回すヴォーカル、予測不能な展開に、サビはHawaiian6のような哀愁美メロで疾走と、彼らのやりたい放題加減が炸裂している。
怒涛の早口ヴォーカルで畳みかけ、サビはM1に負けず劣らずの哀愁を放つM3「My Goblin」、彼ららしい変態的展開バリバリなのにサビはメチャクチャキャッチーでクールなM8「Galactic Kamadouma」、ヘヴィにうねるリフで疾走感、縦ノリのリズムを生み出し、途中スカコアのようなカッティングまで飛び出すM9「Exormantis」などはまさに彼らの真骨頂とも言うべき楽曲。
そんな中アルバムの中盤には彼らの子憎たらし~~いポップ感が解放された楽曲が集中。もちろんリフ自体はかなりヘヴィに仕上がっていますが、もうヴォーカルがアイガーゴイルさんのあのニヤケ顔が目に浮かぶような(笑)ファニーさ全開。M6「UG-12」はアルプスの少女ハイジ並みの牧歌的な歌が飛び出し、M7「Fairy in my mouth」は「Rainy Tip」のようなウザいキュートさ丸出し。もちろん闇サイドのアルバムだけに容赦ないシャウトパートも存在。
総合して、バンドの闇の部分を強調したという以上に、単純にAiliph Doepaらしい変態ヘヴィロックとして充分に楽しめる良作と言えます。ジャケットの凶悪さに反して聴きやすいキャッチーさも担保されてますので、アグレッシヴなだけだと惹かれないメロディー派の人も安心です。その代わり過去作以上にドヘヴィなものを期待した人にはやや拍子抜けするかも。
個人的に本作は
"ヘヴィ・ラウド・ポップ・ド変態というAiliph Doepaの神髄が発揮された一作。闇サイドという体ではあるが、必要以上に闇に傾いているわけではない"
という感じです。
【MV -Dark Side-】Ailiph Doepa「My right hand thumb is a Kraken」Official Music Video