- IRON MAIDENサウンド完成型!
- ストレートな曲で構成された絶妙な聴きやすさ
- 幻想的なエピック大作に陶酔できる圧巻のラスト
一つ前の記事にて、当ブログが6周年であることを書きました。
そしてヘヴィメタルファンにとって「6」という数字は獣の数字、そう、『The Number Of The Beast』を想起させるものなのです。そうでしょ?そうだよね?
イギリス出身のヘヴィメタルバンド・IRON MAIDENが、その後世界トップクラスのメタルフロントマンとなる逸材、ブルース・ディッキンソンをヴォーカルに迎えて製作した3rdフルアルバム。「ヘヴィメタルの名盤は?」という問いを投げ掛ければ、必ずや名前が上がるであろう歴史的作品です。
本作がリリースされたのはWikipedia情報で1982年3月29日とのことで、ちょうどリリースされて40年の年月が経っていることになります。当時からリアルタイムでメタル漬けだったっていう人は、もう「高齢者」に足を踏み入れている年齢なのでは...
何より特筆するべきことは、40年前の時点でIRON MAIDENというバンドの個性、強み、魅力といったものが、完成型にまで到達している点(僕が持っているのはリマスター盤なので、音質がクリアになっていることからよりそういう感想を抱きがちなのかもしれない)
流れ出るそのサウンドをほんの少し聴いただけで「あ、メイデンの音だ!」とわかるこの特別感。決して派手さやヘヴィさはないけれど、軽妙に、かつ仰々しく、目立ちまくるベースラインがリードしながら駆け抜けて、やや癖の強いブルースの歌いまわしが印象的なメロディーを紡いでいく。このIRON MAIDEN節のHR/HM!
アルバム全体通して、やや曲調が似通いがちな印象はあるものの、躍動感ある演奏とドラマチックな旋律でダレることなく、50分以内に収まっていることもあって、基本的にテンション高めの時間が続くのに聴き疲れも誘発しません。この辺のバランス感覚も素晴らしいですね(現在の彼らももうちょっとこれを意識してほしいな〜...)
まずは景気づけと言わんばかりにM1「Invaders」の問答無用な疾走でかっ飛ばし、続くM2「Children Of The Damned」の神秘的なイントロでズブズブ世界観へと浸らせたあと、徐々に徐々にスピードを増して煽ってくる後半の展開、ポップとも言えるくらいに開けたスケールを打ち出すM3「The Prisoner」というオープニングから、もう聴かせる聴かせる。この時点で作品の魔力に取り憑かれたも同然。高まりに高まったテンションを、雄大なサビのメロディーでうまく浄化させてくれるM4「22 Acacia Avenue」の存在も良いアクセント。
タイトルトラックのM5「The Number Of The Beast」と、シングルとなったM6「Run To The Hills」が連続する箇所なんかは、間違いなく本作のハイライトとなる場面ですが、個人的に結構好きなのが、その次にくるM7「Gangland」。メイデンの名曲という話題で出てくることはほぼ無いように思うのですが、この曲におけるサビの絶妙な哀愁加減がかなり魅力的なんですよねぇ。中盤からの滑らかに導入されるギターソロも好き。
その後のM8「Total Eclipse」はちょっと地味な印象が強いですが(笑)、まあその前が名曲続きだったから、これはさすがにしょうがないか。軽やかなポップさで聴きやすく、決して悪くはないのですが、いかんせんインパクトという点では前述の名曲群にはおよばない感じ。
そしてラストを飾るM9「Hallowed Be Thy Name」。「Fear Of The Dark」と並ぶメイデン流大作エピックメタル。中盤の幻想的な情景が浮かぶようなツインリードギターに、鬼気迫るブルースのヴォーカル表現、劇的極まるギターソロ経てから、どこまでも続いてくかのように感じられるギターの旋律。基本的に僕は「熱く盛り上がれるメタル」が好きなんですが、この曲の意識を侵食していくような、陶酔できる魅力もまた素晴らしい。最後の最後でこんな美しい大作ですよ。ズルいよ。
40年も前に、しかもフロントマンの交代という人事を終えたばっかりのタイミングで、ここまで完成しつくされたアルバムを生み出せるとは、いかに80年代の彼らが凄いバンドであったのかが伺い知れますね...。ポール・ディアノ在籍時のパンクっぽい荒さのあるサウンドも悪かないんですけど、やはりメイデンといえばこれ。
個人的に本作は
"劇的極まる演奏・メロディー・ヴォーカルが揃え、メイデンサウンドを完成させた歴史的名盤"
という感じです。