三作続けてスラッシュメタルの新作について取り上げます。
2019年のJAPANESE ASSAULT FESTでのライヴが素晴らしかった、スペイン産スラッシャー・CRISIXの5thフルアルバム。
show-hitorigoto.hatenablog.com
前回のDESTRUCTIONと似たようなこと書きますが、「これぞスラッシュメタルだ!」と言いたくなるほどピュアなもの。デスヴォイスばりに歪ませたヒステリックなシャウトに、切れ味抜群の研ぎ澄まされたリフに次ぐリフ。大半が疾走チューンで占められた潔いアルバム構成は、スラッシュメタルの王道をひた走るもの。
ただ本作は(本作に限らず彼らのスタイル全般に言えることかもしれませんが)、DESTRUCTIONで感じられたメタルらしい邪悪さ、ダーティーなムードは薄めで、ANTHRAXやGAMA BOMBあたりに通じる、溌剌としたイキの良さ、ハイエナジーっぷりが際立つ。
スラッシュメタルが含む成分のうち、パンク・ハードコアの割合が高くなっているのも特徴で、パンク的なシンガロングがふんだんに用いられ、ハードコアらしいアグレッション重視の作風が一貫している。ベースがバキバキとヘヴィに歪んでいる点も、その印象を強めている感じですね。
これらのことから、メタルらしいヘッドバンギングよりも、パンクらしいモッシュ、サークル、クラウドサーフといったノリの方が似合うような気がします。とにかく全編にわたってヤンチャなアグレッションがすごい。聴いてて力入ります。
そういった印象はバンド側も自覚的なのか、何せ収録されている曲名にも"Wolrd Needs Mosh"なんてワードがあしらわれているし、タイトルトラックM3「Full HD」の歌詞なんかは、完全にパンク的で痛快。
さらにM9「W.N.M. United」の歌詞なんか凄いですよ。
法律を制定する連中
テレビに出てる脳たりんども
店にいる貴婦人たち
ヤツらは今 この世界に何が必要かを知る
それはモッシュ
それはモッシュ
すごいモッシュ
今 この世界に必要なものはモッシュ
最っっっっっっっっ高
なかなか難しいご時世ではありますが、いずれは是非とも血の気の多いスラッシャーの皆さんと、この曲を爆音でかけてモッシュの波を作りたいもんです。
さらにさらに、M9「Shōnen Fist」は、彼らが愛してやまない日本のアニメ・マンガをモチーフにしたワードや、日本語によるシンガロングがわんさか詰め込まれた曲で、日本人としては反応しないわけにはいかない。
"か〜め〜は〜め〜波ーーーーっ!!"のインパクトはもちろんながら、"やれやれだぜ" "霊丸" "ペガサス流星拳"など、所々にクスリとできるフレーズが盛り込まれ(普通に聴いていたらなかなか気づきにくいかも)、"イイカゲンニシロ! フザケンジャネエヨ!キサマ!"は共に叫びたくなること請け合い。"獅子咆哮弾"なんて超久々に聞いたよ(笑)
そんなすんばらしい歌詞を持つ楽曲を収録した本作、楽曲面においては上記した通り溌剌したエナジー大爆発のスラッシュメタルで、スラッシャーならば有無を言わさずに満足させられる楽曲の宝庫。これぞというキラーチューンは不在ながら、一本芯の通った、ピュアスラッシュを最初から最後まで堪能できます。
個人的には「Johnny B. Goode」をオマージュしたと思しきフレーズが登場するM7「John Was Born For Metal」から、前述のM8、M9と続く流れが一番のハイライトかな。
しかし今年はKREATORとDESTRUCTIONに、TYMOなんて若手有望株も日本デビュー、さらにはこの後MEGADETHの新作も出るわけですよね?2022年はスラッシュメタルファン歓喜の年になるのかも?
個人的に本作は
"ダークな要素を削ぎ、ハードコア的な爆発力を重視したイキの良さ満載のスラッシュ。アツい歌詞と合わせてモッシュ誘発"
という感じです。