- オープニングのタイトルトラックで最高の掴み
- 熾烈なシャウトとアグレッシヴな演奏は少なめ
- エモコアらしい良質なメロウさが際立つ
スクリーモ/ポストハードコアというジャンルの代表格にして大御所、STORY OF THE YEARの最新フルアルバム。
超有名バンドであるにも関わらず、実は彼らの音は大して通ってきてないんですよ僕。2nd『In The Wake Of Determination』をちょっと聴いたくらい。
本作も特に聴く予定はなかったんですが、CDショップの棚に並ぶ、あからさまに過去作を想起させるジャケットを見てちょっと気になりまして。過去の名盤と比較されるリスクを背負ってまでリリースするなら、それ相応の自信作なのかなと。
そうして音源の再生ボタンを押して、オープニングのM1「Tear Me To Pieces」のヴォーカルが入ってきた瞬間「あ、こりゃカッコいいぞ」とすぐに思いました。
なぜかって、とにかくメロディーが良い。溌剌としつつ哀愁もある、非常にキャッチーなヴォーカルメロディーが、小細工なしのストレートなカッコよさに満ちている。ダン・マーサラのエモコアらしい声質のヴォーカルがとてもよく馴染んでいて、聴き通した際の爽快感が素晴らしい。こういうストレートなカッコよさを押し出す曲をオープニングにしたことにより、アルバムの掴みは充分。
全体通して、スクリーモのような激情のシャウトで爆走する攻撃性はだいぶ控えめ、アグレッシヴな印象はせいぜい「そこそこ」どまりでしょう。曲によっては張り裂けるように叫び、エモーション全開になる瞬間もありますが、それはあくまでスパイス程度。
僕が聴いてた2ndのような、メタリックな印象もかなり薄めですね。メタルらしいザクザクとした刻みのリフ、流麗なギターソロなどは皆無と言っていい。正直はじめは「ちょっとおとなしいな」と思ってしまいました。
しかし、エモらしいクリーンヴォーカルで歌われるメロディーには、しっかりとキャッチーなフックが備わっていて、非常に耳に馴染みやすい。M1ほどのインパクトは感じられなかったものの、それ以降の曲も捨て曲になるようなものは無い。
ポストハードコアらしいシャウトとクリーンの交錯が楽しめる曲、王道のエモロック、感傷的なメロディーを堪能できるバラードと、どれもが高いクオリティーを持っています。
本作の中ではアグレッシヴな印象が強いM3「Afterglow」、M4「Dead And Gone」には、サビでアップテンポに駆け抜けつつ、クリーンとシャウトを巧みに使い分けるヴォーカルにより、確かな激情を演出する。M6「Can't Save You」(どことなく近年のBRING ME THE HORIZONっぽい)なんかは特にシャウトによる感情表現が素晴らしく、大きなスケールを描く、終盤のメロウなギターも大きな聴きどころ。
アリーナロックのようなメジャー感あふれるM2「Real Life」や、ハードコアの要素皆無で、完全にソフトなエモナンバーとなっているM7「2005」、ヴォーカル主体の美しいバラードM8「Sorry About Me」、M11「Use Me」といった、激しさを抑えた楽曲においてもメロディアスさが損なわれず、聴き手のテンションが保たれるのが嬉しいところです。
ガッツリと疾走するスクリーモを期待すると(僕もそのクチでした)、若干肩透かしは喰らってしまうかもしれませんが、エモやポップパンクに通じる、誰が聴いても良いと思えるような普遍的メロディーは、とても気持ちよく聴けるシロモノでした。
これでさらに「"Is This My Fate?" He Asked Them」みたいな超絶キラーが1曲入ってたら、さらに締まった印象になったとは思うのですが、今のバンドの狙いはそういった曲調ではないんだろうなあ。ちょっと寂しいですが。
個人的に本作は
"スクリーモ的な激しさはそこそこ。普遍的なエモコアとしてのテイストが色濃く根付いた、メロディアスなロックとして良質な一作"
という感じです。