ひとりごと ~Music & Life-Style~

HR/HMを中心としたCD感想、足を運んだライヴの感想をメインにひとりごとをブツブツつぶやくブログです。

9/17 HELLOWEEN / UNITED FORCES 2023 at 日本武道館

マイケル・キスクカイ・ハンセンが合流し、7人体制となったHELLOWEENの二度目の来日ツアー(二か所しかないけど)「UNITED FORCES 2023」の、日本武道館公演に行ってきました。

 

前日の大阪公演はソールドアウト、この日は当日券こそ出ていたものの、それを含めてソールドしたようです。武道館を満員にできる洋楽メタルアーティストなんて、もうかなり限られた数しかいないと思われるだけに、HELLOWEENというバンドの日本での人気を改めて思い知らされます。

 

前回の来日公演である「PUMPKINS UNITED WORLD TOUR」は、僕は行ってないため、マイケル・キスクカイ・ハンセンが並び立つステージを観るのは、今回が初めて。僕は世代が全く違うのもあり、さほどキスク時代のHELLOWEENに思い入れがあるわけではないのですが、メロディックパワーメタルというジャンルにトキメキを感じるメタルヘッズとしては、やはりそのオリジネーターのライヴというのは観るべきだろうと思いまして。15000円というなかなか張るお値段にも負けずに、早々にチケットを確保していました。

 

しかし、早い段階で買っていたというのに、いざ自分の座席に移動してみると......

 

横。

 

まあ横。とっても横。これ以上ないくらい横。一番端っこの一番上の方。

 

おいおいおい、確かに一般発売で取った身だけど、ここまで良くない席になるもんなんですかい?ひょっとしてクリエイティヴマンの会員になっている人だけで、アリーナと1階席、および2階席の観やすい位置は、すべて売れ切ってしまってるのかもしれない。

 

真横の最後方近い席という、考えられる限り最も悪い場所に当たってしまったわけですが、座って開演を待っていると、関係者の腕章を付けた若い女性スタッフが僕のところに近づいてくる。話を聞くと、なんと「この場所じゃ観にくいだろうから、もう少しマシな場所に移動できるよ。追加料金とかもないよ。どう?」といった提案をしてくれたのです。

 

安くない金額を払って来たのだから、これは断らない手は無い。スタッフの方が持っているチケットと交換してもらい、すぐさま記載されている席に移動しました。

 

そうして移動した場所の景色がこちら。真横であることには変わらないものの、1階席となったことで、格段に近い位置で観ることができる。これならバンドのパフォーマンスをしっかし視認することができるというものです。

 

視界に思いっきり黒の垂れ幕が下がっているので、ステージに設置されたスクリーンをちゃんと見ることはできないのですが、ポジティヴに捉えれば、スクリーンの映像に気を取られることなく、バンドのパフォーマンスに集中できるというもの。

 

客席の様子を見渡してみると、1階の関係者席と思しき位置にはやや空席が目立っていましたが(招待されてたけど来れなかったのかな)、全体的には後ろの方までびっしりと埋まっている。当日券の売り上げを含めればソールドアウトしていた模様です。

 

場内SEが今後のクリエイティヴマンの公演の宣伝のものから、GUNS N' ROSESの「Welcome To The Jungle」へと切り替わり、場内から自然と手拍子が鳴り響く。ショウの開始がいよいよ迫って来たことを、嫌でも感じさせられました。

 

そして暗転し、スクリーンにイメージ映像が流れ出すと、割れんばかりの大きな歓声が。前述の通り僕の位置からはスクリーンは全部見えないわけですが、このライヴ開場の空気が震えるかのような瞬間と、暗転した時のワクワク感は十二分に味わうことができる。

 

そしてツインヴォーカル以外の演奏陣がステージへと登壇。ドラム台が大きなジャックオランタン型になっている以外は、特にこれといった装飾はなし。真っ赤なジャケットに身を包んだカイ・ハンセンが、やっぱり一番目立ってる気がする。一番ロックスター気質が強い人なんでしょうねきっと。

 

オープニングナンバーは「Skyfall」。最新作『Helloween』のラストを飾る大作で、リードギターにて紡がれるメロディーの劇的さに息を呑む。

 

楽器陣がら少し遅れて、ヴォーカルのアンディ・デリスとマイケル・キスクが登場。歌い出しのサビのヴォーカルの入りから、胸の奥から込み上げてくるようなものがあり、やはりこの曲のドラマ性の見事さは底が知れない。

 

HELLOWEENの10分超えの大作といえば、「Halloween」「Keeper Of The Seven Keys」の2強みたいな感じですが(ですよね?)、僕としてはこの曲の方が好きかも。リアルタイムで聴けたという思い入れもあるかもしれませんが、やっぱりこのメロの良さがキモですよね。

 

今回はステージ中央に花道が作られていて、ヴォーカルの二人が頻繁にここまでやってきて、オーディエンスにアピールをしてくる。キスクよりかはアンディの方が、親しみのあるパフォーマンスをしてた印象。

 

ドラムのダニ・ルブレ以外の楽器陣も、ちょいちょい花道に出て来てくれ、時には横一列に並んでまとまったアンサンブルを聴かせてくれる瞬間もありました。そんな中、ベースのマーカス・グロスコフだけは一人後方に残っていることがままあり、あんまり自己主張しない人なのかな〜とも思ったり(さすがにベースソロのときとかはガッツリ前に出てました)

 

今回のライヴは基本的にキスク時代の曲、アンディ時代の曲を交互にバランスよく配分し、時折二人のヴォーカルが歌う曲を織り交ぜ、中盤にはカイ・ハンセンがヴォーカルをとる初期曲をプレイするという構成になっていました。誰か一人に負担が集中したり、注目度が偏ったりしないように配慮されていたような印象を受けました。

 

そして「Skyfall」が終わったあとは、キスク時代の曲になるわけですが、それがバンド屈指の有名曲である「Eagle Fly Free」。トップクラスの人気を誇る代表曲ですが、2曲目にやっちゃっていいんだ!?とちょっと驚き。

 

イントロのギターリフが鳴った段階で、さっそく本日の第一の沸点に到達する勢いで歓声が上がる。サビでキスクが合図を出すと場内大合唱。これが名曲のパワーか!

 

オーディエンスに歌を丸投げして自分は歌わない、なんてことにはならず、あくまで歌わせるのは1フレーズくらいのみ。あとはしっかり自身の歌唱を聴かせてくれたので、「もっとあなたの歌声を聴かせてくださいよ」という不満が生まれることもなく、ガッツリと名曲が生み出す圧巻の空気を感じ取ることができました。すごい、出だし2曲だけだというのに、もうこの時点で満足度がかなり高い。

 

キスクのヴォーカルは、さすがに衰えがないとは言えず、ちょっと音が怪しい印象を受けるパートもありましたが、サビにおけるまさにタイトル通りの飛翔感を生み出す、伸びやかなハイトーンは素晴らしかった。

 

その後はアンディが登場し、MCを挟んだ後の「Mass Pollution」へ。ロックンロールっぽい弾むようなリズムを持つ曲なので、わかりやすく盛り上がれるし、シンガロングもしやすく、「Eagle Fly Free」で高まった熱量が落ち着くようなこともない。アンディがしきりに「Make some noise!」とオーディエンスを煽り散らし、それに呼応するように歓声も止まらない。

 

アンディが歌うHELLOWEENにおいても、特にポップなわかりやすさが強い「Power」も飛び出す。アンディのヴォーカルは結構調子が良さそうで、自分の持ち曲でのパフォーマンスは、ほぼケチをつける要素の無いものだったと思います。

 

このよく通るヴォーカルパフォーマンスにて「Sole Surviver」とか「Straight Out Of Hell」とかも聴いてみたいのですが、さすがにそれらを全部セットリストに組むことはできないので仕方ない。いずれはやってくれい。

 

その後にやったキスク時代の楽曲は「Save Us」で、これはちょっと意外な選曲でしたね。そんなに注目度の高い楽曲とは思ってなかったのですが、これはこれでレアなものを聴けた気分です(Setlist.fmを見たところ、去年から頻繁にプレイするようになったっぽい) "ウィ〜〜...セイヴァスッ!"のシンガロングはかなりやりやすいので、これまた声を大にしてシンプルに盛り上がれますね。

 

その後はメンバーが一旦はけて、スクリーンにゴジラみたいな怪物が現れ、顔だけジャックオランタンになった人(?)がやっつけるような、よくわからないイメージ映像が流れ出す。どことなく舞台も日本っぽかったのですが、日本公演のためにわざわざ作ったのでしょうか。

 

映像が終わると、今度はカイ・ハンセンがヴォーカルをとる番。先ほどよりもラフな格好になって、まずはギターを持たない状態でヴォーカルのみ披露する。プレイされる楽曲は、当然カイがヴォーカルをしていた『Walls Of Jericho』からの楽曲群。

 

どうしても僕は「カイ・ハンセン = GAMMA RAYのヴォーカル」というイメージが強いので、この魔女声ヴォーカルで疾走するメタルを聴くと「GAMMA RAYっぽいな」という印象を抱いてしまいます。僕よりはるかに『Walls Of Jericho』を聴き込んでいるであろう他の人たちは、きっと僕とは異なる受け取り方をしていたかも(本当に80年代からのリアルタイム組の人は「これこそがHELLOWEENだぜ!」と思ってる人もいたりして)

 

Heavy Metal (Is The Law)」では、カイが花道前方まで出て来て、ギターヴォーカルスタイルに。音源通りに"ヘ〜〜〜ヴィメトゥ!"の掛け合いを生み出す。HELLOWEENはメタルバンドとしてはかなりポップで、「メタルらしさ」みたいなものを殊更に押し出すバンドではないだけに、この曲がこの日一番メタル度が高い時間帯だったと思います。

 

そんなメタルメタルした空間から一変、キスクとアンディが舞台上に再び現れると、花道の先端に椅子が置かれて二人が座る。バラードの「Forever And One (Neverland)」をプレイする時間。

 

ここでオーディエンスがスマートフォンのライトを照らし出して、武道館中が光の粒に包まれる。やはりこういう演出は大会場でこそ映えるものですね。未だにiPhone 6sを使っている僕は、バッテリーが心配だったため点灯させなかっけど

 

曲が終わると、キスクが自ら椅子を持って舞台裏のスタッフに手渡す。「片付けもあなたがやるんだ。スタッフさんに全部任せてもいいのに」とちょっと思った。

 

上から下まで真っ黒でスタイリッシュにキメたサシャ・ゲルストナーのギターソロタイム。ギターを頭上に持ち上げて、エフェクターを駆使しつつ会場を空気を盛り上げる。ただ、ギタープレイ自体はあんまり面白みのあるものではなかった印象。

 

ここに来てライヴもいよいよ佳境。スクリーンに映し出された"Dr. Stein"の文字に大きな歓声が上がり、宣言通りの「Dr. Stein」へ。シングルカットされただけあり、かなりポップ寄りの楽曲で、アルバムで聴いた限りではそこまで気に入るタイプの曲ではないのですが、ライヴ会場での一体感を味わってしまうと、なんとも言えない気持ちよさが生まれてくる。

 

アンコール前ラストの曲(この曲がラストだというMCが挟まれ、お約束の通り落胆の声が上がりましたが、予定調和のものではなく皆の本心だったと思います)How Many Tears」は、初期の曲ではありますが、カイだけでなく、キスクとアンディの二人もヴォーカルとして参加。間奏部分を大きく拡張して、楽器陣の活躍にもかなりスポットが当たるアレンジが施されている。

 

もちろんここで終わる訳はなく(ここで終わっても充分にチケット代の元は取れるけど)、一旦履けてから戻ってきたあと、アンディ時代の楽曲である「Perfect Gentleman」。この曲もまた、突出した名曲という印象はなかったのですが、アンディが「He is!」「You are!」とバンドメンバーやオーディエンスを指さしながら、 "Perfect Gentleman!"とシンガロングを生み出していく空間にいると、特別感のある楽曲に聴こえてくる。

 

そして次に投下された楽曲のイントロが奏でられた瞬間、悲鳴にも似た(実際僕の近くで「ギャーッ!」という叫びが聞こえました/笑)歓声が生まれる。大作「Keeper Of The Seven Keys」の登場です。

 

個人的にはHELLOWEENの大作なら、最初にプレイされた「Skyfall」が好きなんですが、名盤のタイトルトラックなだけに、会場の一体感は一際強い。ラストのサビにおける"You're the keeper of the seven keys"の歌声が木霊する瞬間、ここでの大団円感樽や素晴らしく、ライヴのクライマックス、およびハイライトにはピッタリ。

 

ゆったりとしたアウトロをサシャが奏でながら、メンバー紹介をしつつ、一人ずつステージを後にしていく。壮大な楽曲が終わりゆく余韻と、ライヴが終演に向かっていく寂しさを表現した締めとなりました。

 

.....が、ここからまたオーディエンスのアンコール手拍子に呼応するように、ドラマーのダニーが登場。マイクを通さずとも会場に響き渡る雄叫びを二度ほどかまして、パワーメタリックなドラムの連打を披露する。

 

これまでの疾走曲でも思っていたのですが、彼のドラムとタイトな突進力は、ライヴ全体を通してかなりカッコよかったんですよね。良いドラマーだ。

 

そしてメンバーが再び登壇し、さらにフロア前方からオレンジ色のバルーンを持ったスタッフがゾロゾロと現れる。いよいよこのライヴもラスト。

 

最後の楽曲は「I Want Out」。オーディエンスの半分からウォーウォーとコーラスをさせ、もう半分は"I want out!"のシンガロングをさせ、熱狂を沸点まで上げつつ、飛び跳ねるバルーンが会場をどこかコミカルなハロウィン仕様に染め上げていく。ただ、バルーンの跳び方が、どうも気持ちよくフロア全体に行き渡らず、前の方でグジャグジャと溜まりがちだったのはちょっと気になりました(笑)

 

 

終わってみれば2時間半近い時間が経っており、新旧HELLOWEENナンバーてんこもり、といった内容でかなりの充足感。キスク&カイの組み合わせは初めましてでしたが、予想以上に濃密なライヴアクトで大満足です。

 

オーディエンスの熱気もかなり高めで、シンガロングはバンバン飛び出すし、1曲1曲終わるごとの歓声も大音量。曲のパワーもあったとはいえ、一体感もかなりのもの。これは本当にスペシャルな夜になったと思います。日本におけるHELLOWEENというバンドの人気の高さを、まざまざと見せつけられたようでした。

 

武道館でのヘヴィメタルは、半年くらい前にMEGADETHを観ていて、あの殺気立った空間も素晴らしかったですが、それとはまったく異なるピースフルなムードこそ、HELLOWEENのライヴの特徴ですね。"UNIED"というタイトルに偽りなしの空間でした。