イギリス出身のメタルコアバンドの5thアルバム。
母国のロックチャートにおいて前作と前々作がそれぞれ1位・2位にランクインするなど、なかなかに高い人気を誇っているバンドのようですが、僕は彼らの音に触れるのは初。タワーレコードでCD物色中にストアプレイで本作の音を耳にし、「おっ!このバンドはなかなかカッコいいんじゃないの!?」と僕のアンテナがキャッチ。しばらく待てば国内盤も発売されるとのことですがそのまま買っちゃいました。
音楽性はKILLSWITCH ENGAGEやAS I LAY DYING辺りの流れを汲むもので、ヘヴィなリフとシャウトヴォーカルで思いっきりゴリゴリ進み、サビになるとテンポが落ちクリーンでメロウに聴かせるという、王道を行くメロディックメタルコアのそれ。
サビでクリーンになるタイプのメタルコアって、ややもすれば軟弱ともとられかねないエモエモしたポストハードコア系になるバンドが多いんですが(まあそれはそれで個人的にナシではないんですが)、このバンドは先に挙げた2バンドと同様に剛直なまでのヘヴィさ、タイトさが全編を覆っており、力不足に感じる瞬間は無い。
ガッチリまとまりヘヴィさを演出する演奏はさすがの一言だし、フロントマンのダニエル・ウィンター・ベイツによる低音デスヴォイスは凶悪っぷりをいかんなく発揮。ギタリストのジェイソン・キャメロンによるクリーンヴォーカルは特筆すべきものではないかもですが、メタルコアらしい叙情性を発揮するメロディーに見事にマッチしています。静かに聴かせるパートではその歌いまわしと相まって、どことなくSlipknotっぽい雰囲気があるかも。
どの楽曲も非常に高品質で、「これぞメタルコア!」を胸を張って言えるようなアグレッシヴで緊張感ある楽曲が立て続き、聴いていてグッと身が引き締まる思い。ゆえに捨て曲は無くどの曲もモダンでグルーヴィでヘヴィ、フロアを狂乱のモッシュに誘う強力な楽曲になっていて安定感は抜群です。
ただその安定感の代償か、彼ららしい個性みたいなものは薄く、かなりオーソドックスなメタルコアのスタイル一本に絞っているがために、アルバム全体通してやや画一的なきらいがあることはちょっと気になったかも。頭一つ抜きんでたキラーチューンが無く、箸休めになるような小曲も無いため、あまりアルバムに起伏がもたらされていないと感じ、物足りなく思ってしまうことが少なからずあったことは確か。最もストレートな勢いに満ちたM8「Stormbringer」なんかはもう少しサビにてキャッチーでグッとくるメロディーがあれば良かったんですが。
単純にメタルコアのアルバム単体としてみれば取り立てて文句のつけようがない良作であると思いますが、AS I LAY DYINGほどの悲哀に満ちたエモーショナルなメロディーは無く、BULLET FOR MY VALENTINEやAVENGED SEVENFOLDようにメタルコアというジャンルを飛び越えた大衆性があるわけでもない。"良くも悪くもスタンダードで期待を裏切らない作品"ってな印象ですかね。
M3「Black Flame」 MV
ちょっと形相が怖いですが(笑)ダニエルのヴォーカルパフォーマンスがカッコいい。
M7「The Age」 MV