ひとりごと ~Music & Life-Style~

HR/HMを中心としたCD感想、足を運んだライヴの感想をメインにひとりごとをブツブツつぶやくブログです。

凛として時雨 『#5』

凛として時雨 『#5』

前回「アイドル化する邦楽ロック」の問題について書かれたBASEMENT-TIMESの記事についてちょっぴり触れました。純粋に音楽的な魅力で勝負するのではなく、ウケるためにバンドのコンセプトやキャラクターをある一定の客層に寄せていってる...ってヤツです。

 

まあ昨今の飽和し切ったシーンで頭角を現すためにはある種有効な方法なのかもしれませんが、純粋に音楽を楽しみたい人にとっては面白からぬ状況でしょうね。

 

しかし当然ながらそんなシーンの中でも、トレンドや客層に目もくれず、自分たちの音楽スタイルを決して曲げずに貫き通すバンドもたくさんいます。その中でも彼らは極北と言えるのではないでしょうか。

 

曲が再生されてものの数秒で彼らの音だと一発でわかる、個性的なサウンドという点においてはJ-ROCK界隈最高峰の3ピースカオティックハードコアバンド・凛として時雨

 

美しく浮遊感あるサウンドを奏でたかと思えば、一気にノイジーに歪み狂った破壊音をブチまけるギター、普通のバンドじゃありえないほどのぶっとい音色で縦横無尽にねじ切れるベース、異常なまでの手数足数でテクニカルにひた走るドラム、そして鼓膜を切り裂くような超ハイトーンのツインヴォーカル...

 

一つ一つを取り出してみればまともなバンドサウンドに適応できそうもない要素ばかりであるにも関わらず、それらががっぷり四つになると...

ほ~~~ら!時雨流バンドアンサンブルのでっきあがりでい!!

(なぜかOH!MYコンブ風に)

 

前作『i'mperfect』から5年ぶりとなるフルアルバムの本作でも、彼らの破壊的かつ不可思議な音世界は潔いほど不変。聴いている人の脳に容赦なく突き刺さるようなキレたサウンドが存分に堪能できる一枚となっています。頭痛持ちの僕にはツライぜ(笑)

 

リードトラックのM2「Chocolate Passion」やシングルリリースされたM8「DIE meets HARD」(ファンならイントロでニヤリとできますね)などは程よくキャッチーな歌メロがありながらも、複雑怪奇なサウンドがバリバリ自己主張するキラーチューン。

 

先行公開されたその2曲のみならず、アルバム全体を通してもスタイルは徹底されています。J-ROCK界屈指の超絶ドラマーであるピエールさんが本領を発揮するカオティックナンバーを主軸にしつつも、アトモスフェリックなおとなしいポストロック風のパートも頻繁に飛び出しており、時雨流の不思議な魅力は120%発揮されている。

 

特にハードとソフトの落差が大きいM6「ten to ten」にはそれが顕著。美しい壮大さとノイジーな狂気が目まぐるしく変わるM4「Who's WhoFO」も面白いですね。345さんのヴォーカルがまた柔らかくて、叙情パートと絶妙にマッチしてるんだなこれが。

 

終始狂気的なハードさを演出するカオティックハードコアチューンM9「High Energy Vacuum」はこれぞ時雨!と声高に叫びたくなる本作随一のキラー。サビ裏で炸裂しまくるピエールさんの壮絶なドラミングと、ラスト付近で畳みかけるTKさんのキレたシャウトが文句なしにカッコいい!まさにハイエナジー!!

 

個人的には「abnormalize」や「Who What Who What」のような、わかりやすいキャッチーさに秀でた楽曲が欲しかったのですが、ここまで迷いのない音を叩きつけられちゃ文句なんか言えませんね。

crazyかつsadistic、まったく己のスタイルを変えずに高いクオリティーも見せ続けるバンドの底力をまざまざと見せつけられました。やっぱこのバンドすげえんだな。

 

M2「Chocolate Passion」 MV

 

M8「DIE meets HARD」 MV