都市型フェス・SUMMER SONICなんてイケてるフェスの感想の後に、こんなイケてない音楽の感想を書くというのもどうなんだろうな(笑)
マニアックなメロディックメタルを愛するメタルヘッズにとって、最大の呼び屋になった感のあるEvoken de Valhall Productionが主催するEvoken Festに2年連続の出演となったメロディックスピードメタルバンド・Derdianの最新作。
前作フルアルバム『Human Reset』でヴォーカルを担ったアイヴァン・ジャンニーニ(イヴァンという表記もありますが、本作の国内盤解説の記載に則ります)が脱退、ヴォーカル不在の状態の中で、2016年になかなかに豪華な顔ぶれのゲストヴォーカルを招いたリレコーディングベスト『Revolution Era』を発表。その後Evoken Fest 2017において奇跡の来日を果たし、そこでヴォーカルをとったアイヴァンが再び元の鞘に収まることとなり、こうして新作が発表されました。
クサメタル大国イタリアから現れたキーボード入りメロスピ...ということで予想できる通り、彼らの音楽性は純度100%のクサメタル。強烈な哀愁を持つメロディー、洗練されていない演奏と音質、全体から漂うダサさ、ものの見事にクサメタルというスタイルをデビュー当時から体現しており、本作においても方向性はまったくブレていません。
...っていうかあまりにもブレてなさすぎる!ホントに2018年のアルバムなのか疑いたくなるレベルです。90年代後半~00年代前半にかけて、本作とまったく同じ内容のアルバムが出ても何らおかしくないでしょコレ。
数多のクサメタルバンドが活動休止・解散に追い込まれたり、音沙汰無しの開店休業状態になっている中、こうも自分たちのアイデンティティを持ち続け、活動を継続するってすごいことですよ。
垢抜けない演奏と、クラシカルとも歌謡的とも言えそうなメロディーで疾走する軽いメタルサウンドは、初期Dark Moorや伝説のクサメタルバンドSKYLARKらが築き上げてきたクサメロスピの王道。どうしようもねえほどB級なんですが、やっぱキライになれん(笑)
同様のクサメロスピとしてMelodius Deiteの感想を以前上げましたが、そちらは演奏のクオリティは割としっかりしたものを持っていたのに対し、彼らは演奏技術もB級のまま据え置きです。これぞクサメタル。
ストリングスとピアノが強烈な哀愁を発散するイントロのM1「Abduction」から、劇臭を放つキーボードが乱舞し、ヴォーカルメロディーも全編クサすぎるM2「DNA」で、クサメタラーなら咽び泣くことでしょう。
アップテンポなパートから一気に激クサ疾走のサビを展開するM4「Never Born」、もはやクサいを通り越して、完全にクソダッセエ領域に足を踏み入れている(褒めてます)キーボードのフレーズがマニアの琴線に触れまくること請け合いの、時代錯誤甚だしいクサクサチューンM8「Nothing Will Remain」などはまさにクサいものを愛するリスナーを殺しにかかっていますな。
途中なぜかジャジーなムードを醸し出すM7「Elohim」、半端にプログレメタルっぽさを演出するM9「Fire From The Dust」などちょっと風変わりな曲も収録しつつも、基本的にはB級クサメロスピスタイルを貫いており(曲によってややメロディーの出来に差が見られるものの)、この手の音楽を愛してやまないナードメタラー(?)は聴き逃し厳禁のクサメロの宝庫となっています。
僕はA級とB級であればやはりA級のサウンドを聴きたいし、メロディーもツボにはまるキャッチーさがあれば特にクサさにこだわっているわけでもないので、正直に言えば彼らの音はいささかチープすぎるのですが、どうにも無視できないというか...なんか応援したくなっちゃうんですよね。
なお本作のライナーノーツによると、バンド活動がなかなか厳しい時期があったらしく(まあこの音楽性とクオリティーを考えれば仕方ないかもですが)、その時には活動自体をやめようかとも思っていたのだとか。
そんな折、Evoken Fest 2017での来日公演を行い、日本のマニアックリスナーによる熱烈な歓迎を受けたことで、再びメタルへの情熱を取り戻したのだそうです。
本作に収録されたM6「Red And White」、およびボーナストラックのM14「Never Born (Japanese Version)」(なかなか発音が上手!)の2曲は、日本のファンへの感謝の気持ちを込めた楽曲であり、日本人としては嬉しい限りですね。
特に前者はあの伝説のクサメタルアンセムである、Dies Ireの「The Voice Of The Reason」を彷彿させるようなクサすぎるサビが聴ける名曲に仕上がっています。
M6「Red And White」 Official Lyric Video
本作のティーザー