HR/HMの伝説的存在であるBON JOVIのライヴからわずか3日後、今度はメタルゴッドのライヴを観に行きました。11月は来日ラッシュですね~。KAMELOTは諦めざるを得ませんでしたよ...。
最新作『Firepower』が好調な鋼鉄神・Judas Priet。個人的には2015年の日本武道館以来、3年ぶり2回目の邂逅です。
会場となる調布の武蔵野森総合スポーツプラザは開場してからちょうど1年を迎えたばかりという非常に新しい施設で、メインアリーナは最大で1万人収容できるという、なかなか規模の大きい会場。
「平日木曜日に調布まで行けねえよ!」という声が多かったのか、追加公演となるTOKYO DOME CITY HALLはすぐに完売してしまったようです。この日の客入りがやや心配されるところ。
ちなみに僕はライヴ感想の文章内でさんざん「都心へのアクセスが良くない職場」と書いてきましたが、今回の会場はこれ以上ないほど楽に行けるため、定時をだいぶ過ぎてから向かっても超余裕で到着。遠方の人には申し訳ありませんが、平日に調布はとってもありがたいです(笑)
1年しか経っていない会場だけに会場内は非常にキレイ。今回は1階席のAブロックで予想通り後ろの方の席ではありましたが、会場の規模のためBON JOVIに比べるとかなり観やすくはある。しかも通路側の一番端っこなので、視界を遮られることもない。1階席としてはまあまあ良い部類と言えるかも。
ちなみに心配だった客入りの方ですが、アリーナ・1階席・2階席のうちアリーナはほぼ満員。1階席は半分強くらいで2階席は使用されていませんでした。平日木曜日の調布公演としてはアリーナの席がほぼほぼ埋まっていたのは健闘したのではないでしょうか。
明らかに内容を一切知らないけれどしゃべらされていることが丸わかりな、たどたどしさMAXの今後の公演情報アナウンスを苦笑いしつつ聞き、いよいよメタルゴッドがお目見え。新作に伴うツアーであるため、当然ながら一曲目は「Firepower」。
新作が50年近く活動している大ベテランとは思えぬほどエネルギッシュだったのが影響しているのか、想像以上にライヴパフォーマンスにも力が入っている。ベースのイアン・ヒルこそほとんど持ち場を離れず、淡々とプレイしている印象でしたが、二人のギタリストが積極的に舞台上を動いて魅せるプレイを連発。
やはりリッチー・フォークナーの影響が大きいですね。前回の武道館のときも思いましたが、やはり彼の躍動感あふれるパフォーマンスが、還暦バンドのような印象を与えないことに貢献しているのは間違いない。お立ち台やセンターに移動してきて、ギターを高く掲げて速弾きソロを弾きまくるその姿は文句なしのカッコよさ。
そしてパーキンソン病で満足にプレイができないグレン・ティプトンの代役を務めるのは、ヘヴィメタル界屈指の名プロデューサーであるアンディ・スニープですが、思っていた以上にメタルギタリスト然としていたことに驚きました。もともとメタルバンドでギタリストとして活動している経歴があるとはいえ、完全に"プロデューサー"という印象の人だったので...
短髪であるためか、若干の異分子感があるというか、完全にバンドに馴染んでいるというほどではなかったものの、リッチーと同様にステージ端のお立ち台に積極的に上がり、硬質なメタリックリフをガシガシと刻む。今回はギターの音量が結構大きめで(その分ベースは全然聴こえない)、"THE ヘヴィメタルリフ"を存分に堪能することができました。
そしてそのギターと同様、もしくはそれ以上に存在感を見せつけたのがロブ・ハルフォード。
その声だけでヘヴィメタルであることを実感させる彼ですが、今回はどうやらかなり調子が良さげで、目の覚めるようなシャウトを連発。特に「The Ripper」のラストにおけるシャウトのあまりのすさまじさに鳥肌。一瞬思いっきり歪ませたギターがギュワ~ンと唸っているのかと思ってしまいました(笑)
ただステージの立ち振る舞いに関してはさすがに年齢を感じさせるもので、間奏部分ではノソノソとゆっくり歩いたりフラフラ~ッと揺れたりしていて、こないだのジョン・ボン・ジョヴィとは比べものにならないほどキレがない(笑) 衣装はかなりギンギラギンだったんですけどね...
まあJudas Priestは快活なハードロックではなく、重厚で崇高なヘヴィメタルなので、あまりロックスター然とした毒気や華は無くてもいいのかもしれません。
セットリストは多くのアルバムからかなりバランスよく持ち寄っているもので、多くの楽曲において英国出身のアイデンティティーを感じさせる様式センスが息づいている。前述のようにギターがかなり目立ったサウンドなので、メタル魂が鼓舞され思わず拳を握りしめ頭を振ってしまいました。
そして圧巻だったのがライヴ中盤から終盤にかけての流れ。最新作でも屈指のドラマチックさを誇る「Guradians」~「Rising From Ruins」がプレイされて、そのブリティッシュヘヴィメタルの王道ともいえる展開に息を飲みましたが、そんなものはまだ序の口。
個人的にJudas Priest全楽曲の中でも1、2を争うほど好きな疾走大名曲「Freewheel Burning」、ライヴではお馴染みのノリノリハードナンバー「You've Got Another Thing Comin'」、ロブがハーレーに跨って登場し喝采を浴びながらの「Hell Bent For Leather」、そして煽りのMCからスコット・トラヴィスのあのドラミングによるイントロが流れてきてからの「Painkiller」。
いったい何なのだこの名曲の連打は!?
一秒たりともステージから目が離せない状況。ヘヴィメタル史に残る名曲の数々が生で爆音で演奏されているという事実。たとえグレン・ティプトンとK・K・ダウニングがいない状況であろうと、これで熱くならないメタルヘッズはいないだろう!!
「Painkiller」におけるロブのヴォーカルは高音こそ冴えわたっていたものの、全体的に音程が外れ気味で、かつ目に見えて疲労がたまっているのが見て取れました。ただ御年67歳、もうおじいちゃん扱いされておかしくないはずの人間が、1時間半ぶっ通しでシャウトを交えつつ歌い、終盤になってもこれほどのシャウトを連発していることを考えれば驚異的以外の何物でもない。
ラストのステージ中央でしゃがみこみつつも放ったハイトーンロングシャウトは凄まじい情念を感じましたね。さすがメタルゴッド。
いったんステージをはけたあと、間髪入れずにパーキンソン病で療養していたグレン・ティプトンが上手側から登場し喝采を浴びる。TOKYO DOME CITY HALLでも出演していたようですし、ライヴ前のメッセージ動画にも顔を出していたので驚きはありませんでしたが、オーディエンスは温かく迎え入れる。
そしてグレンを交えてトリプルギター編成によるアンコールは「Metal Gods」「Breaking The Law」「Living After Midnight」という3連打。グレンはやはり体がうまく動かないのか、右手の動きが明らかにおぼつかない。あまり無理はしないでほしいものです。
個人的には「Metal Gods」はやや地味な曲という印象が強いのですが、今このタイトルの曲をグレンのギターで聴けるというのにちょっとした特別感を感じますね。ただバックのスクリーンに映っていたメタルクウラの行進みたいな映像は何だったのだろう?(笑)
こうして90分ほどのライヴが終了。サウンドの中核を担うギタリスト二人が離脱してしまった状態ではありますが、それでもなお信念の守護者たる存在感と、王道のブリティッシュヘヴィメタルはやはり素晴らしかったです。あと何度観ることができるかはわかりませんが、ヘヴィメタルファンの端くれとして、可能な限りはメタルの神の御姿をこの目に収め続けていきたいところです。