ひとりごと ~Music & Life-Style~

HR/HMを中心としたCD感想、足を運んだライヴの感想をメインにひとりごとをブツブツつぶやくブログです。

IN FLAMES 『I, The Mask』

IN FLAMES 『I, The Mask』

メロディックデスメタル/イエテボリサウンドのパイオニアでありながら、現在はメロデスとはまったく趣の異なる、歌を重視したオルタナティヴメタルをプレイするようになったIN FLAMES。前作『Battles』より2年半ぶりのニューアルバム。

 

今更彼らに「かつてのようなメロデスをやってほしい」と期待している人はほぼ皆無だろうし、僕も現在の彼らが「Stand Ablaze」やら「Embody The Invisible」のような楽曲を新たに作り出すことはもうないと思っています。

 

しかし前作の感想にも書いた通り、現在の彼らもメロデス由来の慟哭は無くとも、不思議と胸に来る哀愁のあるメロディーを生み続けており、その楽曲のクオリティーの高さは侮れないものがあります。真正のデスメタラーではない僕からしたら、これだけスタイルが変わったとしても充分聴く価値のあるバンドであることに違いはありません。

 

さらに本作の前評判では「名盤『Come Clarity』を彷彿させるアグレッシヴな仕上がり」とのことだし、先行公開されていた楽曲がいずれもなかなかカッコよかったため、結構大きめの期待を持ちながら購入しました。

 

そして結論から言うと、持ち合わせていた期待には順当に応えてくれた作品と言えます。

 

前作からの延長線上的な作風を貫きつつ、全体的にバンドサウンド・ヴォーカルともに勢いを増し、メタルとしてのカッコよさはしっかりと保っています。さすがに『Come Clarity』ほどモダンなサウンドメロデススタイルのバランスがとれているわけではなく、メロデスっぽさは希薄、オルタナ由来の気だるさが色濃い部分もありますが。

 

そして何よりヴォーカルメロディーの哀愁、胸焦がす切なさが良いですね!かつては「メロディーはリードギターに頼り切りで、ヴォーカルはただ喚くのみ」みたいな塩梅だったアンダース・フリーデンのヴォーカルですが、シャウトからクリーンに至るまで非常にエモーショナルな歌唱を響かせる。オルタナティヴメタルに路線変更してからというものの着実に歌唱スキルを上げていた彼ですが、ここにきてさらに歌に磨きがかかったのでは。

 

特にM3「Call My Name」やM9「Burn」のようなシャウトとクリーンヴォイスのコントラストが特徴的な楽曲では、その振り絞るような叫びにより生々しい悲哀の感情を見事に表現。

 

M7「We Will Remember」はギターフレーズから切なさ全開ですが(メロデス的慟哭とはやっぱりちょっと異なる)、そこに絡むアンダースの歌声も負けず劣らずに堂々と響く。とてもアンダーグラウンド色濃いメロディックデスメタルバンドのシンガーだったとは思えないヴォーカルパフォーマンスです。

 

どの楽曲にも胸を締め付ける激情が確実に息づいていますが、中でもとりわけ哀しく美しいメロディーを聴かせるのがM12「Stay With Me」。

 

アコギとヴォーカルがメインとなるバラードナンバーで、ここで聴けるもの哀しさ全開のメロディーの出来が素晴らしく、感傷に浸れること間違いなし。サビにおける荘厳なコーラス、最後の最後で飛び出すエモーショナル極まりないシャウトがビリビリ心に響いてきますね。名バラードです。

 

惜しむらくはその後すぐに比較的哀愁の薄いボーナストラックM13「Not Alone」が来てしまい、せっかくの美しいバラードの余韻がかき消されてしまうこと。このメロディーに心酔した状態でアルバムを終えたかった。

 

あとM1「Voices」がアルバムの幕開けを飾る楽曲としては、ちょいと平坦というか、フツーな感じが否めず(つまらない曲ではないけど)、これだったら短いイントロのあとすぐに本作随一の疾走曲であるM2「I, The Mask」へとなだれ込んだ方がオープニングの印象が良くなったのではないかとも思いました。

 

決して大満足とは言えないものの、彼らのメランコリックなメロディーセンスがアンダースの歌唱によってしっかりと活きた、歌モノメタルとしてなかなか高い完成度を誇るアルバムになったと思います。特にメロデスがどうだオルタナがどうだとジャンルにこだわらないのであれば、良いメロディーを聴きたいという欲求にはちゃんと応えてくれますね。

 

M2「I, The Mask」 Official Lyric Video

ツーバスベタ踏みの疾走から、広がりのあるサビへと展開する流れが気持ちいい。

 

M3「Call My Name」 MV