去年発表されたメジャー1stフルアルバム『時の肋骨』が大いに気に入ったガレージ/オルタナティヴロックバンド・THE PINBALLSを目当てに、KERBEROS Ⅱというスプリットツアーに行ってきました。
THE PINBALLSの他にはLarge House Satisfaction、Yellow Studsという、どちらも名前は耳にしたことはあるものの、曲はたいして聴いてきてないバンド。THE PINBALLSの出番はラストだったので、最悪この二バンドには間に合わなくても大丈夫かな...なんて思っていましたが、幸いなことにこの日は早めに仕事を抜け出せたため、3バンドじっくり観ることができました。
とはいえそこは平日、のんびり下北沢の街を堪能しているほどの余裕も無く、駅に着いたと同時にマップアプリとにらめっこしつつ会場である下北沢GARDENへと急ぐ。以前Kalmahの来日公演で来たことがあるとはいえ、何せ土地勘がないのでちょっとばかし迷うハメに。
開演20分前くらいに当日券で会場入りすると、だいたいフロアに入っているのは6割くらいでそこまで大入りではない感じ。時間が経つごとに徐々に密度は増えていきましたが、やはり今のオシャレな曲が好まれる日本の音楽シーンでは、この手のまっとうで男臭いロックンロールは売れないのかねえ...。
Large House Satisfaction
最初に登場したのが3ピースのLarge House Satisfaction。THE PINBALLSと同様に野郎臭さをしっかりと携えた、武骨なジャパニーズロックンロールらしい曲調で、フロアの反応もなかなか上々でした。
とにかくメンバー全員のパフォーマンスが暑苦しく、ヴォーカルはノドの心配をしてしまいたくなるほどの絶唱、ドラムは上半身をフルに使い、なかなか手数の多いパワフルなドラミングを決め、ベースはとにかく見た目が暑苦しい(笑)
人気曲と思われる疾走ナンバーが始まると、僕のすぐ前にいたYシャツ姿のお兄さんが待ってましたと言わんばかりに前方へ走り出しモッシュピットが発生、オーディエンスとの距離の近いコミュニケーションや掛け合いをする場面もあり、一発目として充分フロアを温めてくれました。
ただ曲もライヴも充分カッコいいと思える出来でしたが、メロディーは正直さほどキャッチーさがあるわけではなく(THE BACK HORNから歌謡的なフックをかなり薄めたような感じ)、良くも悪くも癖のない感じではあったかな。もうちょっと印象に残るメロを作ってくれると個人的には嬉しいです。まあ変に媚びることのないロックバンド然とした姿勢は非常に好印象なんですけどね。
Yellow Studs
続いてのアクトはYellow Studs。キーボードとウッドベース奏者(普通のベースも弾いてたけど)を含む5人組で、下手側から順にキーボード、ギター、ドラム、ベース、ギターとVの字を描くように組んだ編成が特徴的。
キーボーディストがヴォーカルを担っているのですが、これがまたやさぐれた野郎のにおいがプンプンで、薄暗いライヴハウスがとっても似合う声。サウンドもキーボードとウッドベースにより、普通のロックとは一味違う渋み溢れる枯れた味わいを演出。
モッシュやらなんやらで盛り上がるというよりは場末のバーやらパブやらで酒飲みながらジックリ聴き浸るのが正しい嗜みかたなのかな~と思いましたが、残念ながらワンドリンクのカシオレのカップはすでに空っぽ...
どこか怪しさや気だるさを感じつつも、そこそこ聴きやすいキャッチーさもあって心地よく聴くことができました。MCとかは若干不器用な感じでしたが、そこもまあバンドイメージには合っていたのではないでしょうか。
THE PINBALLS
そして個人的メインアクトであるTHE PINBALLSの出番。初っ端に出てきたベースの森下さんのなんとまあカッコいいことよ。グラサンも髪型も決まってる。
一発目の「Lightning Strikes」で中央にはモッシュピットも出現し盛り上がりを見せる。音源を聴いた限りでは「チャラさのない硬派なバンド」という印象でしたが、さすがに前にYellow Studsのような激シブなサウンドを聴いた後だと、相対的に今風というかチャラい感じに見えてしまうな(笑) 女性客も多かったし。
ただやっぱり泥臭さや胡散臭さをしっかりと持ちつつ、抜群にキャッチーかつ攻撃的にまとめ上げた楽曲は非常に魅力的で、全二組も普通にカッコよくて楽しめましたが、やはり今回の出演組の中では一番僕好みの音でした。
ただそんな楽曲の良さと反比例するように音響はイマイチでした。前二組はそれぞれの楽器の音がほどよく聴きとれたのに対し、彼らの音はどうも輪郭がぼやけ気味というか、いまひとつハッキリしておらず、さらに古川さんのヴォーカルも終始エコーがかかっているかのようにギャンギャン響いていてずいぶんと聴きとりづらいことに...
どうやら機材トラブルによるものらしく、バスドラのペダルにも不調が現れたりと、どうも環境に恵まれなかった感がありましたね。「片目のウィリー」なんかせっかくの名曲なのに、イントロのギターフレーズの時点で「アレ?何か音おかしくね?」と疑問符から始まってしまう。途中少し長めのインターバルも挟まざるを得ず、バンドにとってはやや悔いの残る出来のライヴになってしまったのではないでしょうか。
ただバンドのパフォーマンス自体は普通に良く、適度にアグレッシヴ、適度に落ち着いてスタイリッシュに決める姿はメリハリがあって、ノリノリなロックンロールと合わせて嫌でも体がうずいてしまう。やっぱベースカッケエな~...
選曲も文句なしで「アダムの肋骨」「CRASH」といった最新作の曲から、最大限キャッチーになりつつ、武骨な印象もあるロックンロールの「ひとりぼっちのジョージ」「神は天にいまし」、「蝙蝠と聖レオンハルト」のようにお得意の怪しさを見せる楽曲もプレイ。聴きたかった曲はほぼ全部やってくれて満足です。特に「ひとりぼっちのジョージ」は絶妙に哀愁を感じさせるサビが切なく響く名曲ですね!
しかし「蝙蝠と聖レオンハルト」終わった段階で、あっさりとメンバーが楽器を置いてステージ上を捌けてしまう。
え!?もう終わり!?
何だかえらくあっさりしたエンディングだな...と思いつつ、若干予定調和な雰囲気も感じさせるアンコールが発生し、先ほどまでジャケットで固めていた姿から一転、ツアーTシャツでラフな印象になったメンバーが再登場。
曲前にベースの森下さんが「やりたいのはやまやまなんだけど...四分の二(トラブルを起こしたギターとドラム)大丈夫なの?」と若干不安になることを言いつつも、無事にアンコールがスタート。
......しかしそのアンコールも「劇場支配人のテーマ」を一曲やっただけでまたまたあっさり終了。早い!
もっとたくさん聴きたければワンマンに来い!ということなんでしょう。それぞれ三バンド1時間弱の演奏時間を設けられており、これで3500円は安いものだ...と自分に言い聞かせて帰路に就くことになりました。
音の悪さとトラブル解消によるグダグダっとした時間がやや残念ではあったものの、彼らの持つ楽曲の魅力はしっかりと感じ取れたアクトだったと思います。必要以上に媚びのないストイックなスタイルも、骨太なロックの曲調に合っていたし(これは他の二バンドも同様)、100%とは言えないまでも概ね満足です。
今の日本のロックシーンにおいてはどうもオシャレなギターロック・ダンスロックばかり流行りがちな印象があるので、こういう泥臭い王道のロックンロールがもっと注目されれば良いんですけどね...。今年のROCK IN JAPANで今日以上のパフォーマンスをかましてくれることを願います。