ひとりごと ~Music & Life-Style~

HR/HMを中心としたCD感想、足を運んだライヴの感想をメインにひとりごとをブツブツつぶやくブログです。

人間椅子 『新青年』

人間椅子 『新青年』

イカ天で鮮烈なデビューを果たすも徐々に人気は失われて行き、まったく売れない時代を何年も経験しながらも作品を発表するペースは決して緩めず、ここにきて最盛期と言えるほどの人気を得たVの字バンド人間椅子。活動三十周年を記念した21枚目の(!)オリジナルアルバムです。

 

三十周年というメモリアルな作品であるからなのか、バンド名のもとになった江戸川乱歩がデビューを飾った雑誌の名を冠し、「ヘヴィで怖い」という人間椅子の基本的な曲のスタンスを忠実に守った、まさに現在まで活動を続けてきた彼らの集大成ともいえる作品です。

 

とはいえ聴く前はちょっと懸念もありました。人間椅子の曲というのは疾走しまくってるわけではなく、BLACK SABBATHに影響を受けたダークなハードロック。それが濃密に詰め込まれた作品になるのであれば、わかりやすいメタルを好む僕からしたら、個人的音楽許容量を超えてしまうのではないかと。

 

さらに本作の総収録時間は70分を超える気合いの入りっぷり。彼らの魅力はある程度尺を要するとはいえ、これはダレてしまいそうな予感...。

 

しかし聴き終えてみて、そんな懸念は大したことがなかったことが判明。確かにダークなミドル曲が集中する前半から中盤にかけては、多少ダレないこともないですが、リフ、メロディー、歌詞の面白さがしっかりと反映された曲が多数を占めており、普通に良曲の多い作品として大いに楽しめたのです。

 

彼らの"ダークでドロドロしてるんだけど、どこか滑稽で楽し気、明朗な雰囲気を感じさせる"という曲作りのアプローチが絶妙に活きており、怖いんだけど楽しい世界観がバッチリ。これが聴きやすさを助長させているのは間違いないでしょう。

 

M7「宇宙のディスクロージャー」から明らかにそういった要素が強調されているのがわかります。

 

ごきげんよう!地球人!愛しあってるかい?

 

爬虫類人 (いるぞ♪いるぞ♪)

まるで人間 (いるぞ♪いるぞ♪)

バッタカマキリ (いるぞ♪いるぞ♪)

 

い!き!も!の!だ!ら!け~~!

 

 

何これ楽しい(笑)

 

どこか口ずさみたくなるような面白いフレーズ、ハードロックとして普遍的なカッコよさを演出するギターリフ、三者三様のヴォーカル、和嶋さんのSGによる抜けの良いサウンドのギターソロが一体となっている様はまさに人間椅子ワールド。

 

ナカジマノブ兄貴の雄々しいヴォーカルと「これでもかぁ~~!」のシャウトがいちいち熱いM9「地獄小僧」、三人のヴォーカルの掛け合いが印象的なM10「地獄の申し子」、鈴木研一さんらしさ全開の生々しいグロテスクな歌詞と、オイ!オイ!コーラスが交錯するボートラM14「地獄のご馳走」など、後半に良曲がずらっと控えているため、長い収録時間でも飽きさせないようになっていますね。

 

そして8分を超える大作となったリードトラックM13「無情のスキャット」。不穏にジックリと進みゆく前半から、溌溂としたギターと厳かなヴォーカルワークが映える中盤、劇的なサビを終え怒涛のギターソロへとなだれ込むクライマックスまで、一切退屈する瞬間を与えない至高の一曲。まさに本作を代表するキラーチューンと言えるでしょう。

 

三十年のキャリアにおいてチャートで自己最高位を更新し、過去最大キャパとなる豊洲PITもソールドアウトさせてしまうなど、未だに上り調子が止まらない人間椅子ですが、そんな彼らの勢いがそのままパッケージされたような、前作にも負けず劣らずの快作でした。

 

M13「無情のスキャット」 MV