- タイアップ前提に制作されたミニアルバム
- メロパワチューンはわずかでポップ寄りの作風
- 濃密に練り上げられた疾走キラーももちろん有り
人間椅子、BLOODY CUMSHOTと日本のメタルが続いたので、流れに乗ってもういっちょ国産メタルの作品について書きます。J-METALの至宝GALNERYUSが、2012年に発表したミニアルバム。
表題曲であるM1「絆」は、ジャケットに堂々とケンシロウが出ていることからもわかるとおり(?)、「ぱちんこ CR 蒼天の拳」のタイアップソング。パチンコ・パチスロには全く縁がない僕にとって、パチンコのタイアップってどんなもんなのかはよく知らない。打ってる途中で音楽が鳴るとか?
M1は作詞者である小野さんが蒼天の拳を読み漁り、歌詞を原作者である原哲夫さんに見せてOKをもらったらしく、完全にタイアップありきで作られた楽曲のようです。
作曲面においても作品の雰囲気に合わせたようで、ミドルテンポで勇ましく進んでいきつつ、アニソン的なキャッチーさも多分に含まれた楽曲。演奏の主張もGALNERYUSらしくバリバリですが、あくまで歌メインの曲といった印象。
そして表題曲の音楽性は作品全体にも顕著で、6曲中メロパワ的疾走チューンはM3「ACROSS THE RAINBOW」と、M5「WINNING THE HONOR」のみ。しかもM3は2ndアルバム収録の「Whisper in the red sky」のリメイク楽曲なので、純粋なメロパワ新曲はM5しかないことになります。
M2「終わりなき、この詩」も過去曲のリメイク(こちらは曲名や歌詞はそのまま)で、やはり日本語歌唱がしっくりきやすい小野さんヴォーカルのおかげで、オリジナルよりもスッキリ聴きやすくなっていますね。泣かせるギターソロは相変わらず魅力的。
M4「TIME AFTER TIME」はこれまた歌モノテイストの強い楽曲で、メタルというよりはメロハーに近いかもしれない。爽やかな哀愁を効かせたメロディーが魅力で、超絶技巧でゴリゴリ聴かせるメタルだけではない、彼らの音楽的懐の深さが垣間見える。
M6「departure!」はGALNERYUSの曲ではなく、アニメ「HUNTER×HUNTER」(単行本何冊か持っててメチャクチャ面白かった記憶あるけど、いつの間にか読むの中断しちゃってた)のオープニングテーマを全英詩にして、GALNERYUSが演奏を担当したもの。作曲者が別人なので、当然曲自体にGALNERYUSらしさはないのですが、テクニカルなソロパートを入れる自己主張は忘れていません。そしてこの曲はこれはこれで結構好きです(笑) ちょいと切ないBメロが特に好き。
メロディーセンスに定評のある彼らなので、歌モノ路線が中心でも十分に楽しめる楽曲が揃っていますが、やはりなんだかんだ言って最も気に入るのはM3、M5のメロパワナンバーですかね。メタルバンド・GALNERYUSの本領はこういった曲で100%発揮されるというもの。
特にYUHKIさんが作曲したM5は、異常に音数の多いギターとキーボードがバチバチに弾き倒されたまま疾走するド派手な1曲。クラシカルな要素も持ち合わせたキーボードのサウンドに、翳りつつも飛翔感を持ったヴォーカルメロディーが実にドラマチック!中盤のギターとキーボードソロもかなり気合が入っており、怒涛の如く押し寄せる勢いがたまらん。
トータル40分ほどで、GALNERYUSの作品としてはそこまでボリューミーではありませんが(6曲40分は十分ボリューミーじゃねえかと言われそうですが/笑)、彼らのポップサイドが強調されつつ、劇的なパワーメタルとしての要素も入れ込んだ、聴きごたえのある1枚かと。
ただまあポップに寄りすぎている感はあるので、最良の作品とは言えませんし、この1枚にGALNERYUSというバンドの真髄があるとも思いませんけどね。
個人的に本作は
"メロパワ風味控えめのポップな歌モノハードナンバー中心。良曲揃いではあるけど、メタルバンドGALNERYUSはこんなモンじゃないよ"
という感じです。