- 歌謡クサメロプロジェクト第二弾
- 単にクサイだけじゃない!まとまってるぞ!
- メタル的迫力を付与したギターの魅力大幅増
一部のクサメロ愛好家の間で話題を振り撒いた、一人歌謡クサメロディックデスメタルプロジェクト・ZemethのJUNYAさんが立ち上げた、新たなメロデスプロジェクト。本作もまた楽曲のコンポーズから、ギター、ヴォーカル、打ち込みまで、全てJUNYAさん一人の手によって制作されているようです。
Zemethではこれまで3枚のフルアルバムをリリースしており、僕は2nd『MONOCHROME BLOOD』のみ聴いています。
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その時のアルバム感想文にも書き記しましたが、Zemethというプロジェクトは、そのクサメロのセンスにおいては凄まじいものを感じさせてくれました。
しかし、「楽曲が全体的に長めでアルバム収録時間も長い」「緩急のついた曲展開は皆無で終始クサメロ垂れ流し」「シンフォサウンドがメインで、ギターをはじめとするバンドサウンドの存在感が超希薄」という、かなり極端な作品に仕上がっており、さすがにちょっと聴き疲れというか、胃もたれがハンパない出来でした。例えるなら「焼肉屋さんでライスやサラダ、たまごスープの存在ガン無視で、ひたすらカルビだけ食わされ続ける」みたいな。
そんなわけで「過去最高レベルの楽曲を保存してある」と豪語していた3rdアルバムにはお腹いっぱいで手が伸びずじまい。前回感想文「応援したくなる」なんてこと書いといてスミマセン......
しかし新たに始めたこのBLOODY CUMSHOTは、「歌謡的クサメロを垂れ流して疾走する」という大筋はZemethと共通しているものの、楽曲の造り、アルバムの構成において、明らかにZemethより聴きやすくなっています。
まずなんといっても各楽曲、総収録時間が短い!!これがデカい!!(笑)
アルバム全編通しても30分を切る短さにまとめあげられており、これにより濃厚なクサメロを聴き続けた際の聴き疲れが大幅に緩和されます。これはナイス判断でしょう。
またほぼシンセ一辺倒で、他のバンドサウンドは軽い添え物くらいにしかなっていなかったバッキングは、ヘヴィメタルの生命線であるギターが完全に主軸になっているのが大きい。クサいメロディーをリードギターで泣かせるのはもちろんですが、メロデス的、曲によってはブラックメタルのような高速リフも頻繁に飛び出し、ヘッドバンギング欲をしっかりかき立ててくれる。リフがしっかり骨太になるだけで、メタルとしての聴きごたえはやはり段違いです。
さらにさらに、Zemethにおいては楽曲の個性が薄く、ほぼ全編似たような疾走クサメロシンセ祭でしたが、本作においてはリードに頼らず慟哭リフ主導だったり、キャッチーなキーボードを目立たせり、ややモダンなリフを用いヘヴィさを強調したり、ギャウギャウ叫ぶだけでなく低音グロウルを披露したり(Zemethでもあったっけ?)と、曲やパートにおいて、ある程度個性を持たせよう、多彩なアプローチを試みようという意志が明確に感じられる。
GYZEやTHOUSAND EYES、Serenity In Murderといった国産メロデスの先輩たちと比べれば、まだ一本調子感は強いし、未整理な部分もあったりするような印象ですが、これだけ曲を構築してくれるようになったことは間違いなく美点のはず。
唐突なテンポチェンジでギターがコテコテのクサメロを鳴らすM5「HATE FUCK」、『Follow The Reaper』期のChildren Of Bodomを思わせるような、ダイナミックなギターソロとキーボードが絡むM6「SLAVE HUMILIATION」、モダンなリフを適度に使いつつ、必殺の劇メロを疾走リードギターで放つM8「TRUE HUMANITY」が特に気に入りました。
「Zemethはクドすぎてちょっと...」と感じた人(僕以外にも結構多いと思う)も本作は聴く価値があるはずです。
個人的に本作は
"Zemethから歌謡クサメロ大乱舞の方向性はそのままに、楽曲構成力を大幅向上させた慟哭ギター中心メロデス"
という感じです。