ひとりごと ~Music & Life-Style~

HR/HMを中心としたCD感想、足を運んだライヴの感想をメインにひとりごとをブツブツつぶやくブログです。

9mm Parabellum Bullet 『DEEP BLUE』

9mm Parabellum Bullet 『DEEP BLUE』

10年を超えるキャリアにあって、前作『BABEL』は「最高傑作ではないか」と思わせるほどの素晴らしい出来でした。10曲30分強という短さの中に、メタル、ハードコアからの影響バリバリの熾烈なサウンド、フック満載の歌謡的メロディーが濃縮された強力作。

 

そんな名盤の後に来るアルバムとくれば、当然ながらハードルは上がりに上がっている。次も9mmらしさ全開の名盤で頼むぜ!という大きな期待感を持ちつつ購入しました。

 

従来のアルバムとは打って変わって鮮やかになったジャケットに、なぜか「青春とは」について書かれた紹介文に、今までとは違うカラーの作品なのかな?と一瞬思いましたが、フタを開けてみれば「メタリックなサウンドでマイナーキーのメロと共に疾走」という9mm節は不変。今まで多少の出来の差こそあれど、駄作は一度たりとも作ってこなかっただけに当然と言えば当然です。

 

ただ良作ではあるものの、残念ながら『BABEL』ほどの圧倒的完成度には及ばないか...というのが正直な感想。

 

『BABEL』はダークでヘヴィなスタイルで統一するという目論見がソングライターの滝さんが生み出す哀メロと見事にハマりましたが、本作はそこに若干の「陽」の要素を落とし込んでおり、もちろんあからさまにポップになるなんてことはありませんが、哀愁漂う歌謡性がやや減退している。

 

特にアルバム中盤のメロディーが薄暗く淡白な感じで、どことなく4th『Movement』に近いと言えるでしょうか(ハードコアっぽさの強い『Movement』に対して、クリーントーンやアコギの美麗なアレンジが目立ち、ジャケット同様鮮やかな色味が増えたような印象)

 

彼らの最大の武器である「ダサさ」も全体的にかなり控えめになっているので、クセになるような中毒性は彼らの作品の中でも低めな部類に入るのは否めないです。

 

とはいえやはりメロディーセンスには定評のある滝さんが全曲作曲を手掛けているだけあり、M1「Beautiful Dreamer」やM2「名もなきヒーロー」に顕著な、仄暗くもどこか煌めきを感じるメロディアスな旋律は充分に活きているし、M5「夏が続くから」はアダルティなクリーントーンが物哀しい歌メロと噛み合った、今までありそうでなかった印象的なナンバー。要所でしっかり耳を引きつける楽曲を配置しているので、アルバム全体のインパクトは薄めでも退屈させるような瞬間はない。

 

そして本作を語る上で外せない、最大の聴きどころとなるのがラストの名曲3連発ですね。

 

滝さんらしい特徴的な歪みのギターとアコギ、ドラマチックなサビが強烈な哀愁を放つM10「君は桜」、本作最大レベルの泣きメロが垂れ流される、美しきスローチューンM11「いつまでも」、そして最高密度に練り込まれた演奏と悲壮美が共に疾駆する問答無用の爆走ナンバーM12「Carry on」の流れが凄まじく、最後の最後でアルバムの印象をガッツリと底上げしているのが素晴らしい!

 

9mmらしいサウンドは未だ健在ながら、全体を通してイカれ気味のカオティックな展開や歌謡曲直系のダサさは若干鳴りを潜め、良くも悪くもクセやインパクトは弱くなっており、そこは評価が分かれてしまうところだと思われます。

 

個人的にももう少し彼らの強みである強烈な歌謡性が欲しかったのですが、それでも必要充分なクオリティーを有した哀愁、テンションの高い演奏、そして何よりクライマックスの完成度の高さは申し分なく、前作ほどではないにしろ本作もまた良作と言えますね。

 

M1「Beautiful Dreamer」 MV

 

M8「DEEP BLUE」 MV

彼らのタイトルトラックとしてはやや地味な部類の曲ですが、何度か聴いていくうちにジワジワくるメロディーはさすが。