アメリカはニューヨークという、およそメロスピとは縁遠そうな地からデビューした北欧型メロディックスピードメタルバンドの1stフルアルバム。
以前このブログでも取り上げたCRY VENOMや、アメリカ人メンバーを有するNORTHTALEなど、アメリカ人にもこういったメロディアスなメタルサウンドを好む人が増えていることを実感していましたが、やはりこうも本格的なバンドが現れたらちょっとした驚きを覚えてしまいますね。
彼らShadowStrikeはメロディックスピードメタルとゲーム音楽に影響を受けた5人で結成されたらしく、まあ間違いなくナード寄りの人間だったのでしょう(笑) 学生時代モテなかったんだろうなあ......ドンマイ!
そんな嗜好が反映された本作は、まさに言われなければ米国産とは想像できない、北欧あたりのムードを演出するメロディックスピードメタルそのもの。モダンなヘヴィさを押し出さずに、シンフォニックなキーボードが全編を覆い、基本的に明るく、時に切なく、クワイアを交えながら疾走していく。
SONATA ARCTICAのような哀愁漂う歌メロと透明感、DragonForceにも通じる疾走感とギターソロを見せるスピードチューンを主軸にしており、彼らならではの個性というものは無いものの、とりあえずメロスピという音楽が好きならば間違いなく楽しめ、逆に嫌いなら受け付けないであろうスタイル。
どの曲にも明るくキャッチーなクサメロが息づいていますが、個人的にはひと際クサさと勇壮さを増強させたM8「Voice In The Night」からのM9「A Dream Of Stars」、M10「Gales Of Winter」という三連発にグッときました。
ただ全体的に楽曲が長めで、ボーナストラックを含めた全11曲中7分以上の曲が5曲もあり、アルバムの総収録時間が70分にもなるというボリューム。これで長さを感じさせないほど展開が凝っていたり、ドラマチックさが強かったりすれば良いのですが、このバンドの場合はあまりそういった印象はなく、あまり面白みのないインストパートで尺を使っているためにダレてしまいがち。
長い曲、アルバムを好まない身からするとこれは大きめのマイナスポイントですね...。10分越えのM10なんて半分くらいにまとめてくれたらさらに気に入ったと思うのですが。
前述のCRY VENOMがEDMやDjentっぽい要素を取り入れたハイブリッドな音楽性だったのに対し、彼らは徹頭徹尾王道メロスピであるので自国での人気には不安が募りますが(笑)、日本のメタルファンにはこういったスタイルの方がまだ受け入れやすそうなので、日本での知名度向上には期待できそうですね。90年代後半から00年代前半にかけてのクサメタルブームがとっくに過ぎ去ってしまっているとはいえ。
本人たちも「この手のメロスピやってりゃ日本でウケる」という認識があるのか、それとも単純に日本好きなのか、バンドの公式Twitterで積極的に日本語を用いたり、日本人の感想をリツイートしたりして日本のメタルファンにアプローチをかけて頑張っているっぽい。海外バンド側からこうも積極的に日本のリスナーに絡みにいっている例は稀では。
いや、でも実際に日本人好みと称されるメロディックメタルをメインにしているなら聴いてみる価値アリですよほんとに。うまいこと日本のシーンに加わって来日公演も実現できたらいいですね。
M3「Fly With Me」 Lyric Video
日本盤リリース予告