ひとりごと ~Music & Life-Style~

HR/HMを中心としたCD感想、足を運んだライヴの感想をメインにひとりごとをブツブツつぶやくブログです。

THE BACK HORN 『カルペ・ディエム』

THE BACK HORN 『カルペ・ディエム』

先日の豊洲ナイトカーニバルでの熱演も記憶に新しい、国産オルタナティヴロックバンドの12枚目のフルアルバム。

 

ここ最近の彼らのアルバムはどれも「悪くはないけどもう一歩突き抜けるものが欲しい」という感想を抱きがちで、最初は本作は買わずにパスするつもりでいたのですが、ライヴの印象が良かったので買ってみました。

 

ライヴでも披露された本作のリードトラックであるM8「太陽の花」があざとくも非常にキャッチーで彼ららしい(栄純さんらしいと言うべきか)アップテンポナンバーだったのも期待が高まった理由の一つですね。

 

ただ実際に本作を聴いてみたあとの感想は、やはりここ最近のアルバムとほぼ同様。決して悪くはないのだけれど、ちょいとテンションダウンする瞬間もあり、絶賛はしかねるかな...という感じ。

 

彼らのドロッとした狂気・闇の部分にフォーカスしたM1「心臓が止まるまでは」で幕を開けいきなりリスナーを揺さぶってくるも、その後のM2「金輪際」、M3「」というハードなギターとキャッチーなヴォーカルメロディーで攻め立てる王道のバクホンナンバーで鼓舞してくれる前半の印象は良い。特にM3はカッコよくて気に入りました。

 

しかしその後の楽曲はやや勢いとわかりやすさを減退させ、大人しめの部分やトリッキーな展開が押し出されてくる。これでメロディーが抜群に綺麗だったり、アレンジが壮麗だったりすれば良いのですが、あまりそういった要素も見られず、どうも物足りなさが浮き彫りになってしまうのです。M7「デスティニー」なんかは歌謡的な哀愁が強めで、悲壮感を煽るストリングスも良い線いってるのですが、やっぱりちょっと地味な印象は拭えません。

 

また後半に出てくるM9「I believe」、M10「果てなき冒険者」はそれぞれ非常にポップでフックあるメロディーが堪能できる良質なバラードなのですが、2曲連続で似たタイプのバラードを続けるのはあまり得策とは思えませんでした。単体で聴く分にはどちらもすごく良い曲なんですけどね。

 

捨て曲らしい捨て曲などはなく、ちゃんとキメとなる曲も収録されている、バラードの出来も良いという美点は持ちつつ、ある程度仕方ないとはいえ山田さんのヴォーカルが若干苦しそうなところがあったり、相変わらずギターソロは洗練されていなかったり(栄純さんは独自で硬派な詞の世界観と、それにバッチリとハマるメロディーのセンスが優れている人であって、技術的にどうこう言われる人ではないのだから無理してソロを弾く必要はないと思うの)、アップテンポの曲も明朗なメロディーばかりで哀愁が不足気味だったりと、足りない部分も目立つ出来になってしまった感があります。

 

初期のような狂った叫びと陰鬱なメロディーは望めないとしても、『パルス』や『ヘッドフォンチルドレン』あたりで聴けたハードさ、キャッチーさはまだまだ欲しいですね。やっぱり本作もあともう一歩!

 

とはいえ"マッシュルームカットのヒョロい男数人が歪みの薄いサウンドでホレたハレた歌ってるだけのかったるいギターロック"が幅を利かせまくる(笑)昨今のJ-ROCKシーンにおいて、20年間基本的な軸がブレずに男らしい骨太なヴォーカルと演奏を貫き、それでいて商業的な成果もしっかり挙げている。それだけでもポジティヴに評価したいところなんですが。

 

M1「心臓が止まるまでは」 MV

 

M8「太陽と花」 MV