ひとりごと ~Music & Life-Style~

HR/HMを中心としたCD感想、足を運んだライヴの感想をメインにひとりごとをブツブツつぶやくブログです。

HEAVENLY 『Sign Of The Winner』 (2001)

HEAVENLY 『Sign Of The Winner』

ふと思う。同じことを何年も何年も継続してやることの難しさ。

 

僕自身飽き性というか、めんどくさがりな性分なので継続することがいかに大変かはわかっているつもりです。本屋さんやネットにおいても「途中で挫折しないやり方」みたいなハウツーがあふれているところを見るに、同じように思っている人も多いはず。

 

それでも自分一人でやることだったらまだ良いのです。何かを始めようともやめようともすべて自分次第。三日坊主だろうが何だろうが自分の好きにやりゃいいだけですからね。大変なのは複数の人を巻き込んでやるとき。自分だけの判断で方針が決まりませんから。

 

特にバンドなんて「音楽で金稼いでスターになってやるぜ!」みたいなある種の無謀な志を持った人間の集まり。各々が異なるエゴを持ち、容赦なくぶつかり合うときだってある。顔を合わせたくないときですら密なコミュニケーションをとらなければいけない。

 

これが普通の仕事仲間であれば嫌いな人間でも我慢して話せってだけで済みますが、ツアーで長期間寝食を共にすることもあるバンドという間柄ではそうもいかないはず。さらに長く活動できたとしても、ビッグな存在になれるのはほんの一握り。数多のバンドたちは昼の仕事と並行しながら細々と食いつないでいくという状況。活動を継続するなんて至難の業でしょう。

 

HEAVENLYの『Sign Of The Winner』というアルバムを聴いて、そんなことを思ってしまいました。

 

ルーブル美術館やらベルサイユ宮殿やら、やたら素敵で上品なイメージのあるフランスで結成されたメロディックスピードメタルバンド・HEAVENLY。2000年前後のクサメタルブームに登場し、日本でもマニアに注目されたであろうバンド。

 

彼らほどの充実した作品を発表した実績あるバンドでも、2009年以降一切ニューアルバムを出すことができず、目立った活動の情報も入ってこないとは、やはりバンド活動って難しいのかなあと。Facebookこそここ数年の投稿はあれど、バンドの公式サイトすらない有様ですからね。

 

そんなHEAVENLYの傑作と称されることが多いのが、この2nd『Sign Of The Winner』。クサメタルというジャンル(?)を代表する歴史的名盤として、日本のメロスパーから多大なる支持を集めている作品です。

 

HELLOWEENGAMMA RAYが作り上げたジャーマン系メロパワの下地に、美しく煌びやかなキーボードとクワイアの装飾を施し、強烈なクサさを持つメロディーをまとって疾走する。この劇的な歌メロ、ギターフレーズ、そしてツーバスドコドコのサウンドはまさに日本人が思い描く「メロスピの理想郷」そのものであり、クサいもの好きのメロスパーを次々と悶絶死させていくこと間違いなし。

 

特にオープニングであるM2「Destiny」~M3「Sign Of The Winner」~M4「The World Will Be Better」という疾走疾走、また疾走の3連打は強烈ですね。どこを切ってもドラマチックなメロディーと展開しかない。M4なんか気恥ずかしくなるほどサビがクサいのですがそれがたまらん(笑)

 

ラストのM10「Until The End」は8分以上に及ぶ大作で、前半から中盤にかけてのキラキラしたキーボード、およびギターソロはDark Moorに迫るほどの強烈なクサさ!その後少しのブレイクを挟み、さらにスピードをグイグイ上げて疾走するのだから興奮は避けられません。

 

欠点としてはよく言われるようにヘナチョコのヴォーカル。ベン・ソットのヴォーカルは完全なるヘロヘロハイトーン型で、音域自体はすさまじく高いのですがヒジョ~に線が細い。まあ個人的にはさほど気にならないし、アルバムの至る所でかまされるヤァーーーーッ!ってなスクリームの伸びは決して悪くない。はたしてこれがライヴで再現できていたのか...

 

ヴォーカルのタイプは若干人を選ぶかもしれませんが、とにかくクサく!ゴージャスに!スピーディーに!最初から最後まで徹底して作り上げられたメロスピ界の名盤中の名盤。発売から20年近く経てもなお古色を帯びることない「THE・メロスピ」です。こういった作品が量産され、そしてよく売れていたという時代は、クサメタルブームがすっかり廃れた世を生きる現代っ子の僕にはにわかに信じがたいですね~...。

 

2020年現在、彼らがどんな活動をしているのか、そもそもバンドはまだ存続しているのか(The Metal Archivesでは解散したとは書いてませんが)はわかりませんが、過去に残していった楽曲がまだ世界のどこかでプレイされる機会があればいいなと思います。

 

ちなみにこのHEAVENLY、メロスピの先人たちのフレーズを臆面もなくパクリまくるバンドとしても有名です。まだまだメタルを聴きだして10年も経たないペーペーの僕からしたら気づかない点も多く、「この瞬間に"アーライ!"が来そうな感じだな~」とボンヤリ思う程度です(笑) 僕よりずっと前からメロスピを聴き狂っていた人はピンとくる瞬間も多いのでしょうね。

 

2013年の非公式ライヴ映像。かな~り苦しそうですがキーを下げることなく頑張って歌い上げている!