ひとりごと ~Music & Life-Style~

HR/HMを中心としたCD感想、足を運んだライヴの感想をメインにひとりごとをブツブツつぶやくブログです。

The Black Dahlia Murder 『Verminous』

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  • 残虐でメロディアスな安定のブラダリサウンド
  • 爆走一辺倒ではない引きの展開も見事
  • 地下を蠢く害獣は死なない

 

元々僕は日本のパンク・メロコア界隈からロックという音楽に入門したので、メロディアスな要素を削ぎ落としたデスメタルにはあまり触れていません。

 

エクストリームな音といえば専らメロディックデスメタル、もしくはメタルコアスラッシュメタルといった具合で、ガチのおどろおどろしいデスメタルは積極的にアルバムを買おうという気にならないのが本音。早い段階でマキシマム ザ ホルモンに触れていたおかげでデスヴォイス自体への耐性はしっかりとついてはいましたが。

 

そんな軟弱リスナーである僕が聴ける、一番過激なデスメタルアクトはこのバンドになります。20年近いキャリアを持ち、全米チャートトップ40にも食い込むほどになったメロディックデスメタルバンド・The Black Dahlia Murder。

 

実際にあった猟奇殺人事件を基にしたバンド名から想起されるように、彼らの音はひたすらに残虐で恐ろしい。殺傷能力に満ち溢れた重音リフに、ひたすらバスドラムを連打し狂気的な疾走感を見せ、高音主体のデスヴォイスで鼓膜を蹂躙する音はまさに地獄からの音。

 

そしてただ残虐なだけではなく、北欧メロデスにも通じるような泣き・慟哭・悲しみのエモーションをリードギターで存分に放っているのが何よりの美点。デスメタルとしての凶悪さを一切縮小させることなく、繊細なメロディアスさもバッチリ表現しているのが、他の十把一絡げなアメリカ産バンドとは異なるところ。

 

最新作となる本作もまた従来作と変わらず、凶悪・残虐・哀愁のメロディックデスメタルを徹底してプレイ。ぶっちゃけ過去作の楽曲が本作にしれっと収録されてても気づかない自信があるのですが(笑)、流行りのポストハードコア、モダンメタルコア路線に目もくれないその姿勢たるや素晴らしい!

 

せわしなさすぎるドラムも従来通りではあるものの、今回はやや引きを見せる所が多いと言うか、爆走オンリーとは異なりテンポを落とした展開の頻度も増えている。それによってアルバム全体にメリハリがついている印象につながっているのも嬉しいですね。

 

安心安定のブラダリ印の爆走デスメタルM1「Verminous」で幕を開け、より強靭なリフとバカっぱやいドラミングで脳を切り刻むM2「Godlessly」、本作中特に耳に残りやすい悲しいリードギターが素晴らしいM3「Removal Of The Oaken Stake」へと続く。

 

スローテンポな中で極上の悲しくドラマチックな旋律を奏でるM6「Sunless Empire」、クライマックスにかけてテンポアップしていく轟音リフに手に汗握るM8「The Wereborn's Feast」など、随所に琴線にガッチリ響く瞬間があるのも、一本調子にならない効果をもたらしてくれる。

 

国内盤ボーナストラックであるM11「Sabre The Dog Theme」は本編以上かと思えるほどにドラマチックなギターが堪能でき、なぜコレがボートラ扱いなのかが不思議なレベル。1分ちょいしかないのが実に解せない!

 

アメリカ出身らしいひ弱にならない屈強なサウンドに、アメリカ産とは思えないエモーショナルなギターワークのコンビネーションが全曲にわたり展開され、収録時間も40分を切る短さ。聴きやすくも禍々しいデスメタルらしさが担保された名作です。

 

なお音楽とは直接関係はありませんが、ライナーノーツの最後に記載されている、ギタリストのブライアン・エスクバックの言葉が素晴らしい名言でした。

 

"デス・メタルは忌み嫌われる存在。ネズミやゴキブリみたいなものだ。でも地面の下には、害獣や害虫が大量に蠢いている。デス・メタルも同じだ。根絶することはできないんだ。"

 

彼らがいる限りデスメタルは死なない。ゴキブリは根絶されてほしいけど

 

 

個人的に本作は

"凶悪で禍々しいデスメタル像を完璧に描き出しつつ、ブラダリ印のエモーショナル極まりない悲しみの旋律が活きた、安心安定のメロデス名盤"

という感じです。

 


The Black Dahlia Murder - Verminous (LYRIC VIDEO)

 


The Black Dahlia Murder - Child of Night (OFFICIAL VIDEO)