- ヴォーカル、演奏共に極悪にうねるモダンメタル
- ヘヴィなんだけどどこか耳に馴染みやすいリフが特徴的
- 頭一つ抜きんでた疾走キラーがメッチャ良い!
現代アメリカン・メタルの中心バンドであるLamb Of Godの最新作。結成当初からドラマーとしてバンドを支えてきたクリス・アドラーが脱退してから初のアルバムです。
なんでもクリスは脱退時の声明において「型にはまるのが嫌だ」と語っていたそうですが、20年以上に渡って在籍してたのに、いまさらそんな感覚になるの?というのが正直なところ。まあバンドを続けるって僕らが想像する以上に大変でしょうし、いつ心変わりしてもおかしくないのかな。
そうして新たなドラマーであるアート・クルーズを迎え入れて作られた本作、セルフタイトル作ということもあり、バンドの原点となる音を徹底的に突き詰めて作成されたと思われます。
本作から聴こえてくる音は、いかにもアメリカのバンドらしいパワフルさ、グルーヴィな要素を取り入れたモダンなグルーヴメタル。いわゆるメタルコアとは若干異なる質感で、PANTERAから脈々と受け継がれてきたモダンヘヴィネス(もう死語かなあ...)を今に体現しています。ハードコアモッシュよりもヘッドバンギングの方が似合いそう。
個人的な好みからすると、PANTERA直径のオルタナティヴでグルーヴィなモダンメタルより、AS I LAY DYINGやKILLSWITCH ENGAGEあたりのメロディックメタルコアの方が好きなんですが、本作で聴ける憤怒に満ちた咆哮、地を這うようにズンズン響く轟音ヘヴィリフには閉口するしかない。文句なしにカッコいいメタルサウンドを鳴らしています。
疾走パートやギターソロの類いはほとんど存在せず、アルバム通してやや一本調子な印象が強い。しかし無機質になりすぎず適度に聴きやすいキャチーさを保つリフのセンスがとにかく素晴らしい!聴く者全て問答無用でヘッドバンギング地獄へ直行だ。
低音を強調したデスヴォイスから絶叫まで、アグレッシヴなヴォーカルパフォーマンスを終始安定して披露するランディ・ブライももちろん良いのですが、クリス・アドラーの後釜となったアート・クルーズのドラミングもかなりのものだなと。ヘヴィに弾み、うねりまくる混沌のグルーヴサウンドを一糸乱れぬプレイでガッチリと支える。ちょっとスネアの音作りが軽めかな...と思いましたが、まあさほど気になるほどでもない。
M1「Mement Mori」からボートラのM11「Ghost Shaped People」まで、現代社会への怒りや疑問、警醒を叫ぶ歌詞が鳴り響き、グルーヴィーな重低音で駆け抜けていきます。M11のクライマックス、"ヴゥオオウッ!"のシャウトの後に刻まれるリフの応酬なんか最高にカッコいいですね。なぜこの曲が本編に入らずボーナスなのか。
ただ、先にも書いた通り全体的に一本調子な印象が強く、ほぼすべての曲のテンションが同じなので、起伏を求める向きにはやや物足りないかも。バラードやインストも無いし。
ただM8「Routes」のみ一体どうした!?と言わんばかりの疾走感を感じさせるファストチューン。TESTAMENTのチャック・ビリーによるコーラスを交えつつ、今までほとんど聴かれなかったギターソロまで飛び出す!それもかなり気合の入ったキレのある速弾きをプレイを披露しておりメッチャカッコいい!!やっぱ俺はこういう曲が一番好きだ!!(笑)
基本的な骨格は歌メロやキャッチーな要素が薄いモダンヘヴィサウンドのため、メロディックメタル愛好家はどうしても聴きにくい音かもしれません。ですがヘヴィでアグレッシヴな曲にも理解のある人、充実したリフで思いっきり頭を振りたい、餓えたメタルヘッズであれば必ずや響くものが見つかるであろう力作でした。アメリカン・メタルはやっぱりド迫力な音がイイね。
個人的に本作は
"ヘヴィでアグレッシヴな演奏、怒号のようなヴォーカルでひたすら攻め続けるヘヴィネスの極み"
という感じです。
Lamb of God - Checkmate (Official Video)