ひとりごと ~Music & Life-Style~

HR/HMを中心としたCD感想、足を運んだライヴの感想をメインにひとりごとをブツブツつぶやくブログです。

OBSCURA 『A Valediction』

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  • 文句無しのテクデス...なのにメロディア
  • 複雑に捻れる楽器陣の超絶技巧で圧倒
  • 普遍的なメロディックメタルとしても評価可能

 

正直自分には畑違いの音だと思っていました。

 

テクニカルデスメタルプログレッシヴデスメタルと呼ばれる音楽性。デスメタルには暴虐性や、メロデス特有の慟哭や叙情性を求めている僕。要はわかりやすい突進力とメロディアスな要素に惹かれており、小難しくなりがちなプログレッシヴさはやや苦手としています。

 

彼らOBSCURAは、そんな僕にとって敷居の高い音楽性を標榜するバンド。自分に魅力を見いだせるとは思っておらず、リリースされた当初は気にも止めず、とまではいかなくとも、「まあ買わなくていいか」と見送っていたのです。

 

しかし、どうもTwitter上で流れてくる評判がすこぶる良くてですね。12月に入ってから、「今年の9枚」とか「年間ベスト」みたいなツイートにおいて、頻繁に本作のジャケットを目にするのです。そんなに良い良いと言われるとどうも気になっちゃう。

 

「ホントだな!?ホントにこのアルバム良いんだな!?」と心の中で唱えつつ、いざ本作を購入してみると、これが確かに良い。すごく良い

 

もちろん非常にテクニカルで、プログレ風味の強い展開が多く、僕がエクストリームメタルに期待している慟哭メロデスとはやや趣が異なるスタイルではある。複雑怪奇にねじ切れ回るギターリフに、エクストリームメタルとしてはあまりにも目立ちまくるベースなど。

 

しかしそれが聴きにくさに繋がっていないといいますか、バカテク極まる演奏の応酬で押しまくる様に圧倒されつつ、随所に光る叙情的なメロディー、ネオクラ的なシュレッドが存在感抜群。テクデスという基本線を一切逸脱せずにメロウな旋律をまぶして聴きやすさを助長しています。これが僕に刺さる。

 

M1「Forsaken」のイントロから物哀しいアコギからして期待感MAXですが、その後もやたらとテクニカルにうねるギターとベース、超速のドラムに困惑されながらも、そこに見事に調和するメロディアスな旋律には心奪われる。

 

これだけ技術的に優れたことをやってのけながら、自然に、違和感なく魅惑のメロディーを溶け込ませる手腕は、少なくとも僕には他に聴き覚えのない音でした。これは確かに名作かも。

 

熾烈なエクストリームメタルの基本線は決してブレずに、美しいとすら思えるメロディーを聴かせるというスタイルは、ジャンルこそ違えど、ANAAL NATHRAKHの最新作を聴いた時と同じような衝撃を受けました。

 

show-hitorigoto.hatenablog.com

 

変拍子バリバリのプログレ的イントロがインパクトを放ち、ブラストビートと超速バスドラムによる狂気的な疾走を取り入れ、優れたテクニックの宝庫でありつつ、感情の爆発を表現し切ったM2「Solaris」、非常にキャッチーなクリーンヴォーカルのサビを取り入れたM4「When Stars Collide」、この手のエクストリームメタルとしては異常なまでにキャッチーなギターソロが耳をつんざくM7「The Beyond」など、"普遍的な聴きやすさを持つテクデス"という、ある種矛盾したような楽曲が立て続きます。

 

M10「In Adversity」なんて、ピロピロした速弾きとブラストでイカれた爆走を見せるのに、リズミカルでザクザクしたリフの刻まれ方、中盤以降顔を出す本作随一のメロディアスさを誇るギターは、テクデス云々ではなくヘヴィメタルとして魅力的とすら言える。

 

人間離れした機械のように正確な超絶技巧と、メロディックヘヴィメタルとして聴きやすく仕上げた美しいメロディー。それらを一切の破綻なく共存させることに成功した傑作。2021年末、ここにきて衝撃的なアルバムに出会えました。食わず嫌いはするもんじゃないですね。

 

 

個人的に本作は

"テクニカルデスメタルというジャンルを堅持しながら、メロディ志向の人間すら取り込む叙情美を共存させた異色の名盤"

という感じです。

 


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