ひとりごと ~Music & Life-Style~

HR/HMを中心としたCD感想、足を運んだライヴの感想をメインにひとりごとをブツブツつぶやくブログです。

Suspended 4th 『Travel The Galaxy』

  • 路上ライヴの雄による待望の1stアルバム
  • 技巧と勢いを兼ね備えた演奏力が最大の武器
  • ライト層に聴きやすいキャッチーな歌も完備

 

名古屋の路上ライヴから実力を磨き、武者修行と称したロサンゼルスでのライヴも経験した実力派ロックバンド・Suspended 4thの記念すべき1stフルアルバム。

 

まだ全国流通盤すら出していない段階で、YouTubeにアップしたMVが話題を呼ぶなど、早くから注目されていたようですが、2019年になってPIZZA OF DEATH RECORDSからミニアルバムをリリース。そこから3年の時を経てようやくフルアルバムが完成しました。

 

正直このバンドがPIZZA OF DEATHからデビューするということを知ったときは、バンドとレーベルのイメージにだいぶ差があり、うまくバンドのカラーが伝わるのかな?なんて思ってましたが、まあちゃんとした音源がしっかりリリースされさえすれば、レーベルがどこなのかは(いちリスナー視点では)特に重要な点ではない。

 

さて、そんな1stアルバムとなった本作ですが、ただ一言「カッコいいロック・アルバムだ!」とだけ言っておきます。

 

現在の日本の音楽シーン(個別のジャンルごとのシーンではなく、ライト層まで含んだ全メジャーシーン全体)は、TikTokなどのSNSでバズった音楽がヒットソングとなり、必然的にSNS映えする音楽が流行しやすい傾向にあるかとは思うのです。なんでもZ世代と言われてる若い人たちは、サビにいたるまでが長かったりするAメロ、Bメロ、インストパートを飛ばして聴くことが多いのだとか。まあ、この手の話はニュースサイトがアクセス数を伸ばすために、大げさに切り取ってる可能性が高く、ホントにみんながみんなそうなのかは眉唾物だけど。

 

しかし本作に込められた音は、そんなトレンドには意に介さず、演奏家としてのエゴを炸裂させた技巧がバチバチに飛びかかってくる。スラップを交えたベースラインは蛇行するように捻じれまわり、ノイジーな歪みをかけたギターは硬質な刻みと共にソロを弾き倒す。ドラムはそんな暴れまわる演奏を的確に支えつつ、時には自身も怒涛の打音数をブチまける。

 

そのサウンドに乗っかるヴォーカルは、ドスが効き、やさぐれた雰囲気をまといながらワイルドに歌われる。この声がまた、変にお行儀の良さを感じさせなくて、ロックバンド然としたカッコよさを演出してくれるのです。

 

デビュー作となったミニアルバム『GIANTSTAMP』と比べて、本作は全体的に歌メロのキャッチーさが増していて、歌モノのロックとしてよりストレートな印象に仕上がりました。テンポも全体通して速めですね。

 

やや玄人好みのサウンドから離れた感じで、このことを残念に思う人ももしかしたらいるのかもしれませんが、僕としては高いミュージシャンシップに裏付けられた演奏の圧をまったくレベルダウンさせないまま、聴きやすい方に進化してくれていて好印象。あまり演奏に重きを置かないライト層にも魅力が伝わるはず。

 

バンドの強みを損なわないまま聴きやすさを増した、その最たる例がM4「Shaky」。非常にキャッチーでクールなサビを持ち、疾走感も抜群ながら、バックで流れてる演奏は超テクニカルでバッキバキ。ベースどうなってんだこれ。彼らの超強力な演奏を楽しみたいリスナーも、シンプルな突進力で暴れたいキッズも、両方の欲求を満たすことができるハイブリッドなキラーチューン。

 

M1「トラベル・ザ・ギャラクシー」や、M8「HEY DUDE」、M10「ANYONE」のようにキャッチーな側面を押し出しつつ、勢いに満ちたロックでテンションを上げ、中盤にあるM5「Venetzia」〜M6「Berry」の流れは、ジャジーなムードやアダルトテイストを盛り込み、勢いがあるだけのバンドではないことを見せつける。

 

M13「Tell Them」は、ドラムのデニスさんがヴォーカルをとって、ソウルの要素にゴスペル的なバッキングも取り入れた、あまりにも異色な楽曲。他とはカラーが違いすぎるので、ややボートラ的な側面があるのは否めませんが(本人たちにもそういう意図があるかは不明)、彼らの音楽的レンジの広さをアピールするのに十分なナンバー。

 

M8「BURN」は、なんとDEEP PURPLEの同名曲のインストカバー(今の時代、パープルをカバーする若手バンドが他にいるだろうか)。ハードロックも通ってきたというメンバーの遍歴を示すと同時に、彼らのダイナミックな演奏力が全開になっており、単純にカッコいい。サビにあたるギターはもう少し迫力があっても良かったけど。

 

2022年現在、ここまでロックバンドしてる音源が果たしてどれだけ受け入れられるのかはわかりませんが(少なくともティーンには絶対ウケないでしょう笑)、「最近は日本から良いバンドが出てこないみたい」なことを言いたがる人にまず聴かせたいアルバムですねこれは。

 

PIZZA OF DEATH所属のバンドとしては間違いなくトップレベルであろう技巧、変に日和らないワイルドなヴォーカル、ロックとしてのカッコよさをバッチリ描き出す楽曲。現代のジャパニーズロックを聴く上で、彼らを無視することはもうできないのでは。

 

 

個人的に本作は

"超絶技巧のアンサンブル、よりキャッチーな色を増した歌による、ロックバンド然とした音楽表現"

という感じです。

 


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