ひとりごと ~Music & Life-Style~

HR/HMを中心としたCD感想、足を運んだライヴの感想をメインにひとりごとをブツブツつぶやくブログです。

Pay money To my Pain 『Another day comes』

  • ニューメタル、ハードコアらしいヘヴィさと疾走が魅力
  • 前半疾風怒濤、後半は一気にスローダウン
  • 大きなスケールを放つキラー・タイトルトラック

 

今から10年前の2012年12月30日、国産オルタナティヴロック/メタルバンド・Pay money To my PainのヴォーカリストKさんが、急性心不全により若干31歳でこの世をさりました。

 

そのニュースを目にしたときの衝撃は今でも覚えています。公式サイト上では他PTPメンバー3人からの悲しみ、そして彼への愛が込められたメッセージが掲載されていました。

 

その後も親交のあった多くのバンドマンや音楽関係者からのメッセージが寄せられ、本当に多くの人達から愛され、リスペクトされていた人だったんだと改めて思わされました。

 

今更言うまでもないとは思いますが、Pay money To my Pain(略称PTP)とは、元GUNDOGのヴォーカルKさんを中心に2004年に結成された、4人組(結成当初は5人)バンド。00年代後半〜10年代前半に日本のバンドシーンを見ていたなら、ほとんどの人が知っているはず。

 

彼らが活躍してた時期は、僕の中高生の頃と完全に被っていました。メタルのようなヘヴィサウンドをまださほど知らず、パンク・メロコア系統にハマっていたので、彼らの活動をしっかりと追っていたわけではありません。しかしバンド音楽にハマり始めたときだったので、今以上に熱心に「カッコいいバンドはいないのか」とアンテナを高く張っている時期でもあり、当然ながら彼らの存在は認知していて、MVの楽曲などは聴いていました。

 

ある程度年齢を重ねたレジェンドだったり、大御所になったミュージシャンが亡くなったというのであれば、ある程度仕方がないと割り切ることもできますし、そもそも自分とはまったく世代が異なる人達なので、そこまで大きな衝撃は受けなかったでしょう。

 

しかし彼は31歳と言う若さで、しかも現在進行系でアルバムを出しライヴもしている、現役バリバリのバンドマン。「自分の時代のバンドのフロントマンが死ぬ」という現実は思った以上に衝撃的だったのです。

 

あの知らせを受けてからもう10年も経ったのか...と、先日ちょっと感傷的な気分にもなり(正確にはニュースは2013年に出たものですが)、ここ最近は彼らが残した名盤1st『Another day comes』をよく聴いていました。

 

PTPは後期になると、比較的歌メロに比重を置いたポップ寄りの楽曲の存在感が増していた印象ですが、本作は1stフルということもあってか、後期ほどの引き出しは多くない。彼らの影響元であるニューメタルや、ニュースクールハードコア的なヘヴィさがかなり色濃く出ている。

 

アルバム前半はそんな彼らの直情的な勢いが全開となり、ヘヴィリフとシャウトの応酬でハードコア的なアグレッションを見せつけながら、サビになると非常にメロディアスな歌で魅了するM2「Paralyzed ocean」からノンストップで突き進む。

 

ニューメタルらしい弾むような縦ノリヘヴィリフが気持ちいいM3「Unforgettable past」に、のっけからタカが外れたような爆走を見せつつ、中盤にはスローなヘヴィパートも挟むM4「Lose your own」、ブラストビートばりの怒涛のドラムからダークに突っ走り、シンガロングパートも取り入れたショートチューンM6「The sun, love and myself」と、この前半の勢いたるやすさまじいものがある。

 

この90年代のニューメタル/ハードコアを彷彿させるヘヴィサウンドに、刺々しいシャウトも、抜群の表現力を誇るクリーンヴォイスも、どちらも様になるKさんの素晴らしいヴォーカルワークが噛み合うことで、初期PTPならではの音楽が体現されています。

 

ただ、M6を過ぎてしまうとそこからはインストを挟んで、あとはスローテンポの曲が並ぶというアルバム構成となっており、後半の勢いが沈静化されてしまう造りになっているのが惜しいところですかね。後半も曲単体で聴けば良質なんですが、こうも固まってしまうとね。前半の勢いがすさまじかっただけに、その落差も大きくなってしまう。せめて後半にもう1曲激しい曲が欲しかった。

 

まあ、アルバム全体通して9曲30分というコンパクトさなので、ダレを生むことなく聴き通すことはできます。

 

そんな本作、1曲キラーチューンを挙げるとするなら、やはりオープニングを飾るタイトルトラックM1「Another day comes」でしょうか。この曲の存在感はやはり別物ですね。Kさんの激情を込めたヴォーカルがサビに載る様は、いつ聴いても込み上げるものがある。決して疾走感があるタイプの曲ではないのですが、もの悲しくも爆発力あるサビのスケールは素晴らしいの一言。「From here to somewhere」と並ぶ、初期PTPを代表する楽曲と言えます。

 

後半グッと勢いが落ちてしまう構成こそ若干疑問ながら(ラスト作となった「gene」もそんな感じだったから、これが彼らのスタイルなのかも)、90年代型ヘヴィネスと抜群の存在感を放つカリスマヴォーカルが組み合わさった充実作。

 

今日本にはメジャーシーンのラウドロックに、ややアンダーグラウンドメタルコアまで、クオリティーの高いバンドがたくさんいますが、本作がリリースされたのは2007年。

 

まだ今ほどヘヴィミュージックが潤沢ではなかったはずですが、その時点でこれだけ本格的な音楽が作れたバンド、もしKさんが生きていて今でもバンドが続いていたら、どんなアルバムを出していたのかな...と、考えても意味のないことが頭によぎってしまいます。

 

 

個人的に本作は

"90年代型のニューメタル/ハードコアと、極上のヴォーカルパフォーマンスが合わさったオルタナティヴメタル。アルバム前半のハードチューンの勢いが圧倒的"

という感じです。

 


www.youtube.com

 


www.youtube.com