東京メタルコア3バンドが一挙出演するアツ〜いイベントに行ってきました。
2015年に結成された同世代メタルコアバンドのEarthists.、Sable Hills、Graupelの3バンドによる3マンライヴ。このメンツでチケット代は2000円という破格だったので、僕としては行かない理由が無かった。
こんなもんすぐソールドだろ、と思って速攻でチケットは確保したのですが、実際にソールドアウトするまで1週間くらいはかかったらしい。300〜400人くらい入ればパツパツになるような会場で、土曜日にこのメンツにしては、ちょっと時間がかかったような気がする。やっぱ告知されたのが1ヶ月前という急な日程だったからでしょうか。
場所は渋谷のclub asiaで、解散直前のHER NAME IN BLOODを観て以来のハコ。あのライヴが終わってすぐに解散の報が出たんだよな...。ちょっとセンチな気持ちにさせてくれる場所だ。
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当日は早めに渋谷へと繰り出し、タワーレコードやディスクユニオンを物色しつつ、スタバで休憩入れたあとに会場へと到着。すでに入場待ちの列が出来上がっていましたが、僕の整理番号はかなり若かったので、さっさと会場入りに成功。ワンドリンクチケットをジントニックに変えてフロアへと入る。
このアンダーグラウドなムード漂うフロアに、お酒持って待機しているこの瞬間こそ、「ライヴハウスに来たな」って感じがしますよね。Zeppのようなデカバコでは味わえない感覚です。
ライヴハウスでジントニック。
— Show (@show_hitorigoto) July 8, 2023
場内BGMはなぜかDIR EN GREYの「C」#Earthists#Graupel#SableHills pic.twitter.com/dBCQTSihZM
Earthists.
時間ちょうどくらいになって暗転し、ステージを覆っていた幕が開くと、スクリーンにEarthists.のバンドロゴが映し出される。なぜか三つ編み(?)のような髪型で登場したヴォーカルのYUIさんが飛び跳ねながらオーディエンスを煽り、最新シングルである「Hyperhell」からスタート。
軽快なモダンさを有しつつ、ダンスミュージック的なノリやすいリズム、バックで終始流れ続けるピアノ、ちょっとチャラめなキャッチー有した、近年のEarthists.らしい楽曲で、勢いの良さもあってかフロアの反応は上々。こういう気持ちよくテンションを上げられる曲は、オープニングにピッタリですね。
フロア中央では早速バンドのパフォーマンスにつられるように、ハードコアモッシュのピットが生まれる。幸い僕は下手後方くらいに位置どっていたので、殴られたり蹴られたりといった被害は及ばない。
その後も勢いを止めずに、「Yours」「Lost Grace」と、フィジカルの最新作である『Have a Good Cult』のオープニング順に曲を投下していく。初期のDjent色濃いプログレメタルコアが好きだった人にとっては「チャラくなった」と言われそうなくらいメロディックな流れですが、メロディー重視リスナーとしてはこのキャッチーさはとっつきやすくて良い。"White birds came to me Singing the song~"のところとか、一緒に歌って気持ちいいんですよ。
あと音源だけ聴いてるだけだったので全然知らなかったんですが、近年の曲で増えているクリーンヴォーカルのパートは、ギタリストのYUTOさんが担当しているんですね。声質がそんなに違わないからわからんかった。
ちょっと音響面で損していたのか、クリーン、シャウト共に若干聴き取りにくかったのは残念でしたが、重心の低いヘヴィサウンドと、そこに絡むアトモスフェリックな同期音源の妙は十分に味わえる。「メタルコア」と一口で言っても、他2バンドには無い個性を見せつけるかのよう。「Home」はこの日唯一のバラードだったのでは。
「Skywalker」では、今回の対バン相手のフロントマン2人に加え、PromptsのPKさんも登場し、本日中最もステージ上が豪華仕様になる。ソールドしているだけに人が多く、僕の位置からはステージ全域は見えませんが、それでもPKさんの爽やかイケメンっぷりはしっかり目に焼きつけられました。
この3バンドが集まるということで、絶対にやるだろうと思っていましたが、予想通り『BIRTH』からGraupelの名曲「Fade Away」のカバーを披露。やはり名曲は強く、曲が始まるやいなや猛然とオーディエンスが前方に詰めかけ、クラウドサーファーが多数飛び出す大盛り上がりを見せました。
Sable Hills
イベントの告知画像の並び順からだと、てっきり二番手がGraupelかと思っていたのですが、スクリーンに映し出されたバンドロゴはSable Hillsのもの。長髪にメタルバンドロゴのパッチをつけたジャケットと、典型的なメタラールックスのメンバーが登場し、最新シングルの「Bad King」をプレイ。
先程のEarthists.は落ち着いたクリーンなパート多めで、徹頭徹尾モッシュ向きというわけではなかった反動なのか、ガッツリとメタルを感じさせる楽曲が来た瞬間、フロアは一気にグチャグチャのモッシュピットが発生する。
つい先日バンドが5人フルで正規メンバーとなり、代官山のワンマンも成功させたというタイミングもあるのか、バンドのパフォーマンスは終始気合いがみなぎっている様子。ヴォーカルのTakuyaさんがオーディエンスの頭上へ乗り出し(というかこの日は全体的にバンドマンがフロアまで来ることが多い)、神輿のようにフロア中央で担がれた状態で、それを囲むようにサークルピットが発生するという、なかなか見られない光景が発生していました。
「Snake In The Grass」ではウォールオブデスまで呼び起こすなど、熱量は止まることをしらない。落ち着いたのは、Takuyaさんがマイクスタンドを持ち出して、Earthists.カバーの「SUNBLOOD」をプレイし、少しフロアが聴き入るムードになった時くらいか。それ以外はとにかくアグレッシヴ極まりない、ライヴハウスらしいライヴが繰り広げられる。
また、本日中もっともバンドとオーディエンスとの距離感が近かったのも彼らで、「扇風機やって!」「髪短い方が似合うよ!」と、盛んにガヤが発生していて、バンド側もそれに笑いながら応える一幕が。
しかしGraupelが今年でライヴ活動を一時中断する(自分もよく知らなかったのですが、ギタリストのYuuさんがカナダかどこかへ行くらしい。留学?)ということに触れたときは、少しだけしんみりした空気感に。ライヴを少しの間とはいえ止めてしまうので、Earthists.のYuiさんと一緒に相談し、Graupelにあともう一度ライヴをする機会を設けようと働きかけたことで、この日のライヴが実現したことを話す。
ほぼ同時期に出てきた2バンドを仲間だと強調したうえで、ラストスパートは「Embers」と「The Eternal」という、バンドのキメ曲と言ってもいいポジションになった曲。僕は下手側にいたので「Embers」における、あのRictさんのメロディックなリードギターが若干聴きにくかったのは残念でしたが、トリのGraupelにこれ以上無いほどのバトンを渡したなと。
自主企画も成功させ、海外バンドを巻き込んだツアーも予定し、WACKENの出演も決まっていると、今ノリに乗っているバンドの状態が反映された、貫禄めいたものも感じるステージでした。
Graupel
先ほどのSabel HillsのMCでもあった通り、この日を境に少しの期間活動が停止してしまうGraupel。
彼らのライヴを観たことがある人はわかっていただけると思うのですが、彼らのライヴは爆発力・求心力共にカンストしているほど、観る者の感情を激らせるアツいもの。それがしばらく観られなくなるとは、大袈裟ではなく今後のJ-METALシーンにおいて小さくない損失と言えましょう。
この機会を逃すわけにはいかないだろうと、この日一番といってもいいくらいの前方位置で待機。モッシュの波に揉まれること確定の位置どりですが、そんなのはもう覚悟の上よ。
幻想的なSEでメンバーが登場し、「Bereavement」の叙情リフで爆走スタート。重心の低いヘヴィサウンドに煽られるように、モッシュとクラウドサーフは過激化し、それにつられるようにバンド側のパフォーマンスも熱を帯びてくる。
かなり前の方、それも後方からの圧迫によって、ほぼ最前近い場所にまで来ていたため、バンドのパフォーマンスがよく見える。普段は人の頭で見えないことも多いドラムまで手に取るようにわかる。クラウドサーファーの足が頭に当たらないように気を配りながらも、しっかりとメンバーの姿を目に焼き付けました。
やはりアツい。彼らのライヴは何度か体感してますが、このメタルコアだからこそ出せる叙情性と、持てる感情の全てを搾り切らんとするSotaさんの叫びが一体となり、猛烈なアグレッションを纏う演奏と共に襲いかかってくる様は、何度でも圧倒される感覚を呼び覚ましてくれる。
「Flash Back」のような一際ヘヴィさを押し出した楽曲においては、メンバーが一斉に重心を低くし、スローなヘッドバンギング。低音部が強調されたグロウルの迫力も増す。翻って「Empty Vessles」のような叙情ナンバーでは、非常にもの悲しいメロディアスさが貫かれ、暴れながらもホロリとさせられるような、切ない感情で胸がいっぱいになる。本当にこのバンドは感情表現も、暴れ狂う攻撃性もピカイチだ。
「ダイブしてこいとは言わないけど......気をつけろよ」と、ちょっと含みのある言い方で注意喚起したあと、バンド随一の人気曲である「Towpath」がプレイされる。MCに煽られる形で、ここから一気にモッシュの波の威力が増したように感じました。手を挙げて叫びながら、上から降ってくるクラウドサーファーを捌く.....なかなか大変な時間帯ですが、これこそがライヴだよ。コロナ禍で忘れていた感覚を徐々に取り戻しつつあるぞ!
「Apathy」では、宇多田ヒカルメロディーを、フロアまで乗り出してきたSotaさんのマイクに向かって共に歌い上げ(アーティストにここまで近い位置まで来れる経験はなかなか無い)、超名曲「Fade Away」では、初っ端の爆走パートでこの日一番の熾烈なモッシュが炸裂し、壮大なサビで合唱を誘う。本日のハイライトはこの瞬間でした。
「Fade Away」が終了した後はアンコール(時間が足りないので一瞬だけステージからはけただけでしたが) 少し長めにMCの時間をとり、バンドの活動が止まってしまうことを知り、急遽この企画を立ち上げ、トリを任せてくれたEarthists.とSable Hillsへの感謝、Yuuさんが海外へ行くことになるも、決してGraupelはFade Awayしないという旨を表明しました。
その後Yuuさんは、「Fade Awayしない!俺がDepartureするだけだから」と声をかけ、曲名大喜利みたいになってると軽くツッコミを受けつつ、ラストの曲へ。もちろんラストは「Departure」。タンクトップ姿になったSotaさんがステージダイブし、さらに負けじとクラウドサーファーも大量発生するカオスな時間へと突入。しかしそんなグチャグチャな状況になっても、この曲が持つ劇的でメロディアスな旋律は埋もれることなく響いていました。
全ての曲を終え、ライヴのエンディングになると、3バンド全てのメンバーがステージに集結。なぜかBGMが花*花の「さよなら 大好きな人」で(笑)、Yuuさんとのしばしの別れを惜しむかのよう。少なくとも今年は観られなくなると思うと、やっぱり寂しくなりますね。
しかし終わってみればかなり充実したライヴでしたね。三者三様のTokyo Metalcoreを、存分に味わい尽くすことができました。終わった後、すぐ近くにいたお兄さんが「いや〜〜今日来て良かったわ」と言っていましたが、本当にその一言に尽きる1日だったと思います。