本作はCDではなくLPで買ったので、カテゴリとしては「LP感想」とすべきですが、わざわざカテゴリ分けするほどでもないかなと思ったので、CD感想と一緒くたにしてます。
BRAHMANのメンバー4人と、ヴァイオリンのMARTINさん、パーカッションのKAKUEIさんを加えた、6人組アコースティックバンド・OAUの、前作以来4年ぶりとなるフルアルバム。
4年ぶりとはいえ、その間に再録ベストアルバムの『Re:New Acoustic Life』、5曲入りEP『New Spring Harvest』のリリースがあったため、さほど久しぶり感はありません。というか、コロナ禍に入ってからというものの、押し合いへし合いのライヴハウスらしいライヴができなくなったためか、静聴ができるOAUの方がリリースが活発化されている感じです(ちょっと複雑)
本作はバンドの正式名称がOAU表記になってから2作目、基本線は前作で聴くことができた珠玉のメロディーに満たされたポップスに、アイリッシュやケルトといった民族音楽のテイストが各楽器の演奏により盛り込まれたもの。
ポップロックとして上質なメロディーがまず大前提としてあるので、どれだけ民族音楽らしさを取り入れても、聴くハードルが高くならず、肩肘張らずに楽に聴き通せる癒しのサウンド。TOSHI-LOWさんが日本語で歌う曲が歌モノとして色が濃く、MARTINさんの歌う英語詞の曲が、アイリッシュ的な情緒を感じさせるのが特徴的ですね。
非常に耳に馴染みが良く、それでいて普通のロックバンドにはない楽器の音色、アレンジが施されていて飽きが来ない。荘厳な要素もアッパーな要素も、カントリーミュージックのような牧歌的要素もあり、単純に「アコギで静かな音楽やってます」ってだけの音楽には決してなっていないところが良いですね。これは従来のアルバムみんなそうだけど。
ただ全体的に落ち着いた印象が強く、シンプルに盛り上がれるようなテンポの速い曲は、せいぜいM4「Time's a River」でしょうか。もう少しあっても良い気がしますが、まあそういった曲が少なくとも、彼らの魅力の本質には触れられるのでいいでしょう。
特に気に入ったのはそのM4の他だと、浮遊感のある不可思議な魅力に彩られたアコギが特徴的なM3「夢の続きを」、前EPにも収録された名曲M5「世界は変わる」、アイルランド最後の吟遊詩人と呼ばれているターロック・オキャロランの楽曲に、日本語の歌詞をつけたM12「This Song ~Planxty Irwin~」あたり。どの曲にもしっとり心に染み渡っていくような歌心がある。
そしてラストを飾るM14「懐かしい未来」が一番刺さりました。寂しくも美しいヴァイオリンとアコギの響きが重なり、あまりに切ない歌がゆったりと続いていく楽曲。東北の被災地でインスピレーションを受け生まれた楽曲であり、被災地に寄り添い続けてきたバンドだからこそ、猛烈なエモーションに満ちているのでしょう。
前作と同様に歌モノ色が濃いため、メロディアスなポップスを好む人なら、万人にオススメできそうな良作です。ロックの攻撃性に少しくたびれたときなどに、なかなか重宝しそうなサウンドトラック。
個人的に本作は
"アイリッシュ的な民族音楽要素と、多様な楽器によって表現された良質なポップ・ミュージック。温かく切ないエモーショナルなメロディーが胸を打つ"
という感じです。