ひとりごと ~Music & Life-Style~

HR/HMを中心としたCD感想、足を運んだライヴの感想をメインにひとりごとをブツブツつぶやくブログです。

ANTHEM 『CRIMSON & JET BLACK』

  • 大ベテランが過去最高のパワーを発揮
  • 全編アツきアグレッション渦巻く正統派メタル
  • アルバム全体の起伏は大きくない

 

アツいですね。いや、ここ最近の気温もそうですけど、それ以上にこのアルバムが。

 

2019年に過去曲のリレコーディングベスト『NUCLEUS』を、メタルレーベルの名門Nuclear Blastからリリースし、世界進出を果たしたANTHEM。本作はそこから続く全世界同時リリース第二弾、ベストアルバムではなく全新曲のオリジナルアルバムです(レーベルはNuclear Blastではなくなったらしい)

 

ANTHEMといえば、結成40年を超える大ベテランで、LOUDNESSと並び「ジャパメタ」を象徴するような存在。そんなキャリアの長いバンドが、ここに来て世界進出という新たなチャレンジができるとは、やはりバンドって夢があるんだなと。

 

世界でリリースされるということを鑑みたのか、本作収録曲は全て英語詞。ライナーノーツによると、ソングライターの柴田さんが、全て英語であることを前提とした曲作りを行なったのは、この40年のキャリアにおいて初めてのことだといいます。

 

まあ確かにANTHEMって、国際化に成功したLOUDNESS(最新作は右翼団体かってくらいニッポン推しでしたが/笑)とは異なり「日本ならではのヘヴィメタル」ってイメージが強いですからね。バンドイメージ的にも、メロディーの歌謡的質感においても。そんな感じしません?

 

しかし、曲作りの前提が変わったからといって、本作で聴ける音はANTHEM以外の何物でもない。ヴォーカルが暑苦しくて、メロディーが昔のアニソンを思わせるほどにキャッチーで、演奏にパワーが溢れている。とにかくアツい、押しの強いアルバムに仕上がっています。

 

ベテランにありがちな「年数を重ねたことにより円熟味が増して〜」とか、「若手バンドには出せない渋みが〜」とか、そんな紹介文を跳ね除けてしまうようなパワーがある。彼らのアルバムを全て聴いてきたわけではありませんが、本作に込められた勢いは、全カタログの中でもトップクラスなんじゃないかとすら思えるほど。本当に柴田さん、還暦超えの人なん?

 

森川さんのヴォーカルも、アツイ血潮を激らせるシャウトを連発し、全体的に疾走感のある曲が多いため、叩きつけられる田丸さんのドラムの突進力も強力。ザクザクとしたリフを主体としつつ、ここぞというときにメロディアスな旋律を奏でる清水さんのギターも、パワーメタルとしての覇気がムンムン。

 

やはり新曲を世界同時リリースする訳ですから、メンバー皆一様に気合いが入ったのでしょうか。とにかく「痛快」とか「爽快」とか、そんな言葉が似合うパワフルさ。

 

惜しむらくは、前述したように歌詞が全て英語であることですかね。いや、別に欠点というほど気になるわけではないのですけど、やはりANTHEMらしいヘヴィメタルって、日本語で熱く歌われるとこによるところもあったと思うので。全英語詞だと、そんなANTHEMらしいアツさが少〜し損なわれてしまっているかなと。

 

まあそんな細かい不満を吹き飛ばすだけのパワーは十二分にあると思います。オープニングのM1「SNAKE EYES」から、叩きつけられるリズム、骨太で強靭なリフワーク、全身全霊・全力投球のヴォーカルが織りなすANTHEMワールドが繰り広げられる。

 

各曲で明確なテンポの差はもちろんあるし、途中にインストナンバーが挟まれることもあるのですが、大体全曲似たようなテンションで進み行くスタイル。抜きん出たキラーチューンがないのもあり、アルバム単一としての起伏、ハイライトみたいなものは薄いでしょうか。

 

頭からケツに至るまで、一貫してANTHEMらしいパワーメタルが貫かれているため、アルバム後半においてもクライマックス感が薄く、「怒涛のテンションに圧倒されてたらいつのまにか最後の曲になってた」という状態になりやすい。

 

ただそれは、言い換えれば「最後まで良質なANTHEM流ヘヴィメタルを、横道に逸れずに聴き通せる出来になっている」ということ。これだけ力の入った楽曲が立て続いても、メロディーがキャッチーなため聴き疲れしにくく、途中で休憩を入れなくてもちゃんと聴けるバランスが保たれているのも美点ですね。

 

ジャパメタらしい野暮ったさや、パワーで押し通す暑苦しさはやや聴き手を選ぶかもしれませんが、アツくパワフルなメロディックメタルが好きなら、本作を聴き逃すことはできないですよ。世界を見据えた男たちの決意と気迫に満ちた、剛直なパワーメタルです。

 

ここまで真っ直ぐなメタル、それも極東の島国のベテランバンドの音が、今の世界のメタルシーンにどこまで需要があるかは謎ですが、「ANTHEM結成40年にして、今世界が注目!」みたいなお話になったらイイですよね。実際注目されるべきクオリティーは備えてると思うし。

 

 

個人的に本作は

"過去イチのパワーで押しまくるサウンド。ジャパメタらしいキャッチーさと共に愚直に進む、アツさ全開の正統派"

という感じです。

 


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