ひとりごと ~Music & Life-Style~

HR/HMを中心としたCD感想、足を運んだライヴの感想をメインにひとりごとをブツブツつぶやくブログです。

小野正利 『THE TIES OF AFFECTION』

  • ポップス歌手・小野正利としての歌が主役
  • メタルとは完全に縁遠いポップスサウンド
  • しっとりとした哀愁と歌声の相性の良さはメタル以上かも

 

日本が誇るメロディックパワーメタルのトップランカー・GALNERYUSのフロントマンであり、ポップス歌手としてもデビュー30周年を迎えた、小野正利さんのフルアルバム。

 

これまでもカバーアルバムとかはソロ名義で出していましたが、純粋なオリジナルアルバムとしては、なんと19年ぶりになるらしい。

 

GALNERYUSのヴォーカルとしてはよく知っている人ですが、正直ソロ歌手としての楽曲は、自身最大のヒットソングとなった「You're the Only...」と、アニメ『HUNTER×HUNTER』のオープニングテーマであり、GALNERYUSでもカバーした「departure!」くらいしか知らない。

 

そんな僕でも、GALNERYUSのバラードにおいて、彼の歌唱の素晴らしさはよく親しんでいたつもり。ソロ歌手としての楽曲も、十分に楽しめるのではないかと聴いてみました。

 

楽曲の基本線は、メタルとしての歪んだヘヴィサウンドだったり、天を衝く超絶ハイトーンのようなド派手な要素は皆無。ピアノやアコギ、クリーントーンを主軸としたバッキングと共に、しっとり穏やかに歌い上げられるJ-POPで、とにかく歌に注目させるように作られた印象です(歌手のソロアルバムだから当たり前ですが) 曲によってはエレキギターによるソロとかも投入されるのですが、あくまで楽曲のためのアレンジの一環といった感じで、メタルのように一つの要素として成り立つほどの存在感は無い。

 

J-POPといっても、近年爆売れしている曲のようなSNS映えするようなものでは全くなくて、バズる可能性が限りなく低い(笑)大人向けの鑑賞音楽のような感じか。

 

あまりキャッチーすぎず、心にすっと染み入ってくるような叙情性が効いたメロディーが豊富で、この旋律が小野さんの澄んだ歌声と非常に相性が良い。GALNERYUSで聴けるような、パワーメタルに馴染んだハイトーンも素晴らしいのですが、それ以上に彼の歌声が活きるのはこういう方向性かもしれない。なんとも言えぬ哀愁と、アダルティなムードを醸し出す表現力の高さに舌を巻きます。

 

ムーディなピアノとストリングス、フリューゲルホルンが活用された美しいジャズナンバーのM3「Starry night」、よりヴォーカルメロディーの切なさが際立ったM7「夏と冬」、M8「FAITHFULLY」の流れが特に気に入ってます。こういう曲は是非ともBillboard Live TOKYOみたいな会場で聴きたい。絶対合う。

 

M6「クレーム」のみアップテンポで(本作の中では)激しめのバンドサウンドで展開されるロック色の強い曲。これはこれで悪い曲では無いのですが、他は全部聴き浸るような楽曲ばかりなので、ちょっと浮いてる印象が強いな。あとこういう曲調だと、バスンバスンとデカいドラムの音作りが気になってしまう。

 

前述した彼の有名曲「departure!」と「You're the Only...」は、最後にそれぞれ落ち着いたアレンジを加えられて収録されていますが、「You're the Only...」はともかく、「departure!」は快活でアッパーなサウンドでその魅力が発揮されていたように思うので、必ずしも本作のバージョンが良いとは言い切れないかも。この曲はGALNERYUSカバーバージョンが一番好きです。

 

上述したような不満点(と言うほど不満って訳でもないが)もあるとはいえ、全体通して小野さんの透き通る歌唱の魅力が、充分に伝わる上質なポップスばかりで構成されたアルバムです。彼の歌声のファンならもちろん買いですし、疲れた体に染み渡るような、柔らかで優しい曲を求める人にも嬉しい1枚。

 

なお、M4「揺るぎなき旅」は、ゲストシンガーとのデュエット曲なのですが、参加しているウォルピスカーターさん(なんつー名前だ)は、聴いた限りでは完全に女性としか思えなかったけれど、実際は男性シンガーなのだそうです。

 

 

個人的に本作は

"歌手・小野正利の表現力と歌唱力に、ピッタリとフィットした上質な大人のJ-POP。心に染み入る歌の魅力に特化した作風"

という感じです。