ついこないだまでお正月だったというのに、もう1ヶ月が過ぎようとしている時の速さに戦慄する中、またまたライヴに行ってました。今年だけでもう4本目か。年越しのBURNING SPIRITSを含めれば5本目。初っ端からエンジンかけすぎだぜ2024年。
今回足を運んだのは、THE冠のMY NAME IS HEAVY METAL TOUR・ツアーファイナル。ハコはTSUTAYAから名前が変わってからは初めてとなる、Spotify O-WEST。
土日の渋谷は相変わらずごったがえしていますが、人混みをかき分けてタワーレコードにディスクユニオンを物色し、頃合いを見計らって会場へ到着。CDショップに長時間滞在した後のライヴハウスって最高じゃありませんか?
O-WESTは最大600人収容という、ライヴハウスとしては中規模程度の場所。そこそこ客入りはしているものの、人口密度としてはそこまで高くなく、半分強くらいの入りでしょうか。ギチギチじゃない分快適に観られるのはいいことですが、ファンとしてはもうちょっと繁盛してほしいところか。
ワンドリンクのカシオレを飲みつつ、開演前SEのcoldrainやPANTERAを聴き、開演時間ちょうどくらいに暗転。まずはバックバンドとしてお馴染みのメンバーが登場してくる。一際目立つK-A-Zさんは、ロブ・ハルフォードを彷彿させるような帽子を被っている。
ちなみにこの帽子、冠さんが相当気に入ったらしく、ライヴ中頻繁に被ってはジュリーのモノマネをしていました(とはいえやはりこの帽子でメタルをやるとなったら、皆Judas Priestを想起するみたいで、ほんのちょっとだけ「Painkiller」のカバーもやった)
そしてフロントマンの冠さんが登場し、オープニングナンバーは「傷だらけのヘビーメタル」。冠さんのシャウトはいつになく好調のようで、52歳とは思えぬ強靭なハイトーンを連発する。音源以上とも言えるほどの切れ味は驚異的。これが2時間以上にもおよぶライヴの終盤になっても勢いが削がれなかったのもすごい。
楽器陣の演奏も安定感がありつつ、攻撃的なメタルのイメージを損なわないもので非常にカッコいい。ネックを滑るように速弾きタッピングを繰り出すK-A-Zさん、時折バチバチのスラップを交えて太いラインを刻む大桃さん、上半身をフルに躍動し、怒涛の破壊音連打を見せるYOUTH-K!!!さん。
特に今日はリズム隊の音が聴きやすい音響で、シングルギターによる物足りなさを感じさせないくらいにサウンドのボドムに迫力がありました。特にYOUTH-K!!!さんのツーバス連打が非常に気持ちよく、疾走パートの痛快度は凄まじかったですね。今まで観た中でもドラムの迫力はトップクラスだったように思います。
ライヴ内容もTHE冠の面白いところてんこもりといった具合。「おっさん」はまだ音源化されていない(ライヴでCD配られてはいるが)新曲であるにも関わらず、その覚えやすいフレーズのおかげで、大きなシンガロングを巻き起こす。
中盤で披露された新曲では、本物のプロレスのリングアナウンサーをわざわざステージ上に呼び出し(この演出のためだけに来てくれたらしく、自分の出番が終わったらさっさとエレベーターに乗って帰ったそう)、謎のマスクマン・マスクドKに扮した冠さんが登場。曲が終わるとステージを降りて、フロアにいるオーディエンスのマスクドKコールを受けていく。その際リングアナウンサーが「選手に触らないでください!汗がついてしまいます!」と注意を呼びかけ、会場が爆笑に包まれる。
マスクドK
— 冠徹弥(THE冠) (@tetsukanmuri) January 28, 2024
入場アナウンスはオッキーさん!@okizoukantoku pic.twitter.com/0xHPQngZix
マスクドKの退場後は冠さんの衣装替えの時間があるからかK-A-Zさんのギターソロ、および楽器陣3人によるセッションタイム。K-A-Zさんソロは泣きを感じさせるものではないのですが、重低音の迫力がありつつ、ワウを効かせてしきりに高音を伸ばしていく。ちょっとキンキンしすぎてて耳が痛くなりそうでしたが、貫禄あるプレイを見せつけてくれました。
合間のMCでは、冠さんの大ファンであるという男性が経営している岡山のラーメン屋さんに、日帰りで行ってきたというエピソードトークを披露。30年岡山でラーメン屋を営んでいる、THE冠の大ファン店主の息子さんが、「1月24日が父の50歳の誕生日なので、サプライズで誕生パーティーに来て欲しい」というメールを送ってきて、感化された冠さんが日帰りで岡山まで出向いていく、という心温まるお話。
......なのですが、メールを送ってくれた大学生の息子さんには、その後何度が「あの件どうなってます?」と連絡をとっても、一向に返信が来なくて、自分がめっちゃ岡山行きたい人みたいになってしまったり、いざラーメン屋に行ってみても店が休みで扉が閉まっているわ、店主のお父さんに会って話を聞いてみても「誕生パーティーなんてやっておらず、息子なら家の奥で寝てる」という返答が返ってきたりと、冠さんらしいネタとユーモアの連続で、トークの最中は終始笑いが巻き起こる。
それでも何とか最終的には、お店のラーメンを食べることができ、店主の方ともちゃんとお話ができたとのことで、岡山まで行った行動が報われてよかったよかった。
過去1最高な誕生日になりました!
— 萬福軒 (@mpk2real) January 24, 2024
感謝しかないです!
明日に続く#冠徹也#THE冠#ありがとうございました #無茶苦茶いい人 pic.twitter.com/6IrGn3SiVA
ちなみにこの店主さんは、岡山の田舎の方でずっと営業をしているので、THE冠のライヴは観たことがないらしく、それは実にもったいないなと思いましたね。ライヴを観たことがある人ならわかりますが、THE冠のライヴはエンタメ性抜群で、かつメタルとしてのカッコよさ、高揚感に満ち溢れていて最高ですからね。
MCにおいても「ふざけているように見られるし、イロモノと言われることばかりだけど、邪道だろうと本筋だろうと関係ない。俺は本物のメタルだと思ってる」と力強く宣言しており、改めて冠さんの、自身のメタルスタイルにかける思いというものが伝わってきました。
ライヴ後半はまさにTHE冠のキラーチューン連発といえるほどの勢いで、その疾走感でアドレナリンを大解放させる「糞野郎」「中3インマイドリームス~行ってみたいなL.Aに~」の流れはヘドバンが止まらなかったですし、前述の岡山のラーメン屋の店主さんが「人生の一曲」に挙げたという「初志冠徹」は、最終盤にも関わらず冠さんの魂のシャウトが最高峰の力強さを持って迫ってくる。
2時間半ほどの長丁場になったライヴでしたが、それでも疲れより充実感の方がはるかに強く残るあたり、THE冠のライヴがいかに楽しいものであるかがわかります。エンターテインメントとしてのヘヴィメタルを、最も魅力的に表現できるのはやはりこの人なのかも。
まあそんなライヴの魅力に当てられて、調子に乗ってヘッドバンギングしまくった結果、翌日にはかなりの首の痛みに襲われてしまったわけですが...