ひとりごと ~Music & Life-Style~

HR/HMを中心としたCD感想、足を運んだライヴの感想をメインにひとりごとをブツブツつぶやくブログです。

dustbox 『Seeds of Rainbows』

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  • 前作のサウンドの軽さが大幅改善
  • 個性と演出技法の幅を広げた必殺の美メロの連続
  • バンドを象徴するキラーチューンの存在が強い!

 

前回dustboxの過去作について書いたので、せっかくだからまだ感想書いてない他のアルバムについても触れてみようと思います。

 

東芝EMIでメジャーデビューするも、音楽的に未熟ですぐにインディーズへ逆戻り。しかしその後発表された『triangle』『Mr. keating』という2枚のミニアルバムで急激に楽曲のクオリティーをアップさせ、その勢いのまま、00年代中盤の国産メロコアの金字塔『13 Brilliant Leaves』を発表したdustboxが、そこからわずか1年ほどでリリースした4thフルアルバム。

 

前作の時点でdustbox節と言える哀愁のメロディーで疾走する、ダストスタイルメロコアは確立してましたが、本作はさらにそのグレードを上げている。どこか軽さが残っていたサウンドが格段に強く、たくましくなり、パンクらしい攻撃性が見違えて向上しています。

 

そして突進力の向上のみならず、クリーンで浮遊感のある、ポップな響きのギターが効果的に使われており、ただ疾走するだけでない引きの展開も豊富に聴かせてくれるのもポイントですね。これが美しいメロディーとヴォーカルと相まって、叙情性をさらに強くさせる方に作用しています。元々あったメロディーのセンスがより一層活かされる形となりました。

 

壮大なサビで強烈な哀愁を放ち、クリアなヴォーカルがとことん綺麗な爆走メロコアM2「Right Now」は、まさに開幕を彩るに相応しい名曲。現在のライヴでも頻繁に演奏されるdustboxのアンセムの一つですね。

 

同様にSUGAさんのヴォーカルとの相性がピッタリなエモ的哀愁バリバリのM3「My Will」、M5「Mr. Sadness」、といったメロコアチューンから、ポップな側面を強調したM4「Rain or Shine」、M10「Flash Back」に、より湿った叙情美を押し出したM8「Wall of Ice」、ベーシストのJOJIさんがバイクを盗まれた怒りを爆発させたハードコアナンバーM9「Neo Chavez 400」と、彼ららしい美メロメロコアから逸脱しない中でレパートリーが広がった、優れた楽曲が目白押し。

 

そしてクライマックスに鎮座するM11「Tomorrow」は、これまでの彼らが描き出したdustboxメロコアの総決算ともいうべき名曲。非常に切ない中にも温かさを感じさせる叙情リフで爆走、サビでは本作随一と言えるほどの猛烈な泣きメロを発散!

 

前作で充分に国産パンクシーンのトップに立ったと言える彼らですが、そこからさらに一皮むけてしまった、泣きのパンクの名作。本作を聴かずして日本のメロコアは語れないでしょう。

 

 

個人的に本作は

"珠玉の叙情メロディーと演奏の質をさらに格上げした、名曲揃いの哀愁爆走メロコア"

という感じです。

 

公式のMVが見つからなかったのでSpotifyで...

dustbox 『starbow』

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  • 超王道疾走メロディックハードコア
  • 哀愁まみれの叙情性は減退し、よりストレートなメロコア
  • アルバムトータルのまとまりは最高レベル

 

今から10年前の2011年3月23日、この日は僕にとって忘れられない記念すべき日になります。

 

どういうことかというと、僕が初めてライヴを観た日なんです。

 

幼稚園の行事か何かで、コンサートホールに連れてってもらったことは何となく記憶していますが、自分のお金でチケットを買い、ライヴハウスというところに足を運んだのはこの日が最初。場所は札幌琴似にあるPENNY LANE 24。BESSIE HALLや先日新しく生まれ変わったKLUB COUNTER ACTIONと並んで、札幌のライヴハウスといえばココ!というくらい有名なハコです。

 

www.pl24.jp

 

この日のためにソフトコンタクトレンズデビューし、大通りの地下にあるチケットぴあのカウンターでなけなしの小遣いをはたいてチケットを買い、当日のバスケ部の練習を「コンタクトレンズの調子が合わなくて眼科に行く」と大嘘をついてサボり(顧問のK先生すいません。もう時効とさせてください)、地下鉄に乗って琴似へ。

 

モッシュピットに備えて早い段階でTシャツ1枚の恰好になったのが災いし、雪の降りしきる中Tシャツ姿で震えながら待たされるという地獄を見るハメに。あれはなかなかの試練でした。

 

そしてフロアに入ってみると、眼前にドラムセットが鎮座したステージがお出迎え。フロア前方の真ん中あたりに陣取って、期待に胸を膨らませながら開演を待っていました。

 

いざライヴがスタートすると、後方から今まで感じたことのないほどの圧迫感。さらにはクラウドサーファーが頭上を通り過ぎて、首が思いっきり折れ曲がる。爆音を浴びて耳がおかしくなりそうで、そしてメチャクチャに楽しかった。

 

忘れっぽい僕としてはかなり鮮明に覚えている記憶。そんな記念すべき日から、今日でちょうど10年!あの日以来いろんなライヴに行ったな~。

 

部活の練習試合終わりに自転車を爆速で漕いで、AIR JAM 2011と同日に行われたLast Allianceのライヴを観ました。KLUB COUNTER ACTIONは非常に小さいハコだったので、ANZAIさんがすぐ目の前にいたんですよね。

 

ROTTENGRAFTTYのレコ発で、対バンのEGG BRAINのジョーイさんが僕のすぐ横にいる状態で、そっちをチラチラ気にしながらNOISEMAKERのライヴを観たこともありました。トリのROTTENGRAFFTYのライヴではNOBUYAさんがステージから降りてきて、一緒に向かい合ってヘッドバンギングしたんですよ。

 

POWER STOCK 2011ではlocofrankマキシマム ザ ホルモンdustboxと好きなバンドがそろい踏みで、メチャクチャ興奮したもんです。しかし時間的な都合でトリのBRAHMANを観ないで帰るという、今となっては考えられない失態を犯しました(もし過去に戻って人生やり直せるならこの日に戻りたい)

 

今はたくさんのライヴを経験したがために、かつてのような何もかもが新鮮で、ドキドキワクワクの連続というような体験はできないでしょうね。少し寂しく感じてしまいますね...

 

その10年前の今日に観たライヴというのが、本日取り上げる国産メロディックハードコアバンド・dustboxの6thフルアルバム『starbow』のレコ発ツアーだったのです。僕の最初のライヴ体験が本作の楽曲群だったんですね(正確には対バンのROTTENGRAFFTYの「IMPOSSIBLE IZ NOTHING」が最初ですが)

 

とまあ前置きが長くなりましたが、ライヴ体験10周年のこの日に合わせて、本作についてツラツラ文章を書き綴ってみようと思ったわけであります。

 

2006年発表の『13 Brilliant Leaves』から年一のペースでアルバムを発表してきた彼ら。本作は少し期間を開けて(といっても2年ほどですが)リリースした2010年作。

 

それまでの彼らの作品は、SUGAさんの優れた哀愁のメロディーセンスを活かした叙情性抜群の歌メロ、それをクリアに歌い上げるハイトーンヴォーカル、3ピースとしては異様なほど密度の濃い演奏と、国産パンクシーンにおいてもトップクラスといえる完成度を誇っていました。

 

そんな彼らのことですから、もちろんこの作品においても、全体を通して極めてハイレベルな、極上メロコアのオンパレードであることは一切の揺るぎがない。

 

ただ過去三作と比較すると、やや歌メロの叙情性、哀愁が薄れて、良くも悪くも普通のメロコアに落ち着いた印象があるのは否めない所ですね。過去作にあったハードコア/メタル要素の濃いナンバーが無く、全編メロディックチューンでまとめられているのもその印象に拍車をかけている感じ。

 

やはりdustboxといえば、類型的なメロコアの枠に収まらない美メロが何よりも大きな武器。それが多少とはいえ削がれてしまっているのは、どうしても聴き劣りしてしまう要因になってしまいます。メロディーの豊潤さと引き換えに、何かがプラスアルファとして機能しているというわけでもないので、嫌な言い方をしてしまうと単に魅力が減ってしまったともいえるアルバム。

 

...と、ちょっとマイナスなことを書いてしまいましたが、誤解のないように念押ししますと、前述の通りクオリティーの低い作品ということでは決してありません。むしろトータルとしてのまとまりの良さ、各曲のクオリティーの安定感という点では、従来作の中でもトップクラスといってもいい出来です。

 

ほとんどの曲でREIJIさんのド迫力のドラミングで爆走し、メロコアらしく歪みを効かせたギターリフは非常に気持ちよく、その土台となるベースラインも心地よくブンブン唸る。3ピースメロコアとして理想的な音圧が実現してます。

 

イントロから続くM2「Break Through」は、これぞ爆走メロコアの真骨頂!とも言うべき強烈な破壊力を持つキラーチューンだし、M4「You'll Never Be All Alone」、M5「Thrill」、M7「Runaway Train」あたりは、実にdustboxらしい憂いを秘めたメロディーに酔える軽快なメロコア。特に哀しくメロディーが響くM8「Hiding Place」は、SUGAさんのクリアなヴォーカルと相まって、とても美しいミディアムナンバーに仕上がっています。

 

メロディーの質、個性は薄くなった感があるも、捨て曲は一切存在せず、長いキャリアに裏打ちされたハイクオリティーメロコアの宝庫とも言うべきアルバム。良くも悪くも純度100%、不純物の無い"THE メロコア"なので、メロコアキッズならマストで押さえておくべき1枚かも。

 

 

個人的に本作は

"ダスト特有の美メロは少し控えめ。その分純度を増した、オーソドックス疾走メロディック"

という感じです。

 


dustbox 「Break Through」

 


dustbox「 One & Only 」

ANGELUS APATRIDA 『Angelus Apatrida』

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  • スペイン産スラッシャーのセルフタイトル作
  • スラッシュらしいアグレッシヴかつ切れ味鋭い音の嵐
  • ロディアスさよりエクストリームメタルらしさを重視

 

前作『Cabaret De La Guillotine』が予想以上の好盤だった、情熱の国スペイン出身のスラッシュメタルバンド・ANGELUS APATRIDAの7thフルアルバム。

 

show-hitorigoto.hatenablog.com

 

クランチっぽいギターリフを主軸に暴走突進、しかしアグレッシヴなだけでなく非常にメロディアスな歌も部分部分に取り入れるなどして、クオリティーの高いスラッシュ作品を生み出した彼らですが、本作は結成20周年を経て作り出したセルフタイトル作。気合の入った作品であることがうかがい知れるというもの。

 

そして実際に、本作はかなり血の気の多い楽曲が取りそろえられていて、スラッシャー歓喜の爆走っぷり、重く、速く刻まれる容赦なきギターリフの波状攻撃が楽しめる痛快なアルバム。テンポを落としたパートでも、そのヘヴィさとリズミカルさを両立したリフのカッコよさで満足させられるのも、前作に引き続く美点です。

 

コロナによるロックダウンで、不満を募らせた状態で制作されたということもあるのか、前作に比べてさらに攻撃的になった印象。ハードコア由来のシンガロングも荒々しい。バキバキに歪みをかけたベースの破壊音も目立ち、よりエクストリームな方面へ舵を切っています。

 

その分、前作ほどにはメロディックな要素が目立っておらず、その点は少し残念ではあるかも。攻撃性に比重を置いたともとれますが、それは前作も十分にありましたしね。とはいえ楽曲自体の完成度の高さは本作も折り紙付き。

 

初っ端から獰猛なヴォーカルと共に激音リフで爆走しつつ、ヘヴィなリズム落ちパートも豊富に取り入れたM1「Indoctrinate」、有無を言わさぬ疾走感、小刻みなヘヴィリフ、ひしゃげた歪みのベース、手数の多い超速ドラム、そしてライヴ感あるシンガロングと、要素が揃いに揃ったM7「We Stand Alone」は、本作を象徴する名曲と言えます。理屈抜きにカッコいい必殺の曲です。

 

他にもスピーディーに駆け抜けるスラッシュアンセムから、グルーヴィーなリフでヘドバンとモッシュを誘発するアップテンポナンバーまで、一切の隙を見せない展開を聴かせますが、中でも白眉なのがラストを飾るM9「Empire Of Shame」〜M10「Into The Well」の二連発。

 

二曲ともキレッキレのスラッシーなリフで疾駆するスラッシュメタルでありながら、ほのかにキャッチーなメロディーをまとわせる手腕が非常にクール!前者はズシリと重いリフで展開するパートもあり、中盤のツインギターの速弾きが迫力満点。後者もまたツインギターソロが大きな聴きどころですが、こちらはテクニックに頼らないメロディアスなリードフレーズ。これまた劇的でカッコいい!

 

あからさまなメロディアスさは多少控えめになったものの、20年のキャリアを経て作られたセルフタイトルに恥じない強力作。王道かつ高品質なスラッシュメタルを、本作でもまた提示してくれました。こいつら頼もしいです。

 

 

個人的に本作は

"超アグレッシヴ&微メロディアス、骨太でスラッシーなリフ主体のスラッシュメタル一辺倒"

という感じです。

 


ANGELUS APATRIDA - Indoctrinate (OFFICIAL VIDEO)

 


ANGELUS APATRIDA - We Stand Alone (VISUALIZER VIDEO)

Wirbelwind 『TIME TO REALIZE』

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  • 国産メロデスシーン期待のニューカマー
  • THOUSAND EYESバリの慟哭疾走
  • 哀愁バリバリのギター&キーボードが最大の聴き所

 

先日ディスクユニオンにて、ストアプレイがガンガンかけられ激プッシュを受けていたバンド。それまでバンドの存在すら知らなった僕ですが、店内に入って物の数秒で「何だこれは!?」と反応し、こうして新譜を買ってしまったわけであります。

 

いくらサブスク全盛になっても、こういう出会いがあるからCDショップ巡りはやめられないんですよね~。まあその分財布にはダメージがのしかかりやすくなるんですが...

 

彼らWirbelwindは、RakshasaやEthereal Sinという、Evoken De Valhall Production所属のバンドでギタリストを務めているKIKKAさんが、ソングライターとして参加している6人組のメロディックデスメタルバンド。2017年に結成されたということで、個々のメンバーの経歴はわかりませんが、バンドとしてはかなりの若手。 

 

ヨーロピアンテイストなメロディックデスメタルを基調にブラックメタルヴァイキングメタルなどの要素をミックスしたシンフォニックなサウンドと、時代・地域を超えた"戦い"をテーマにした歌詞が融合した"Melodic Battle Death Metal"。

 

公式サイトではバンドの音楽性は上記の通りに説明されていました。本作以前に発表されていた1stフルアルバムは、もっとフォーキッシュな要素が強かったんでしょうかね?

 

というのも、本作のみ聴いた感じだと、あまりブラックメタルヴァイキングメタルの要素が強くないから。THOUSAND EYESを彷彿させるようなアグレッシヴで硬派なエクストリームサウンドと、哀愁に満ちた慟哭のメロディアスなギターが絡み、ヴォーカルも迫力満点(デスヴォイスの質感もどことなくDOUGENさんに似てる)

 

要は割とオーソドックスなメロディックデスメタルをプレイしており、バンドが標榜している、"メロディックバトルデスメタル"のうちの"バトル"の要素が、音だけ聴いててもさほど感じられなかったのです。

 

まあこういうコンセプトは歌詞やバンドの衣装、CDのジャケット含めて、総合的に演出させるものでしょうから、音楽だけでは100%伝わることはないんでしょう。

 

まあそんなコンセプト云々は置いといて、本作は5曲のみのミニアルバムですが、収録曲全てにおいて、一切の隙が無いほどの強烈な出来。演奏もヴォーカルも、他の日本の実力派メロデスバンドたちに全く引けを取っていない。

 

先述した通り、基本的にはTHOUSAND EYESのような、疾走を基本としメロディアスなギターフレーズを前面に押し出した哀愁クサメロデスのスタイルなんですが、ギターとキーボードによる哀愁フレーズが美しいフックに満ちていて、大きな聴きどころになっているんです。

 

オープニングを飾るM1「Time To Realize」から、早速慟哭のリフ&リードギターで爆走し、サビではバッキングでメロメロなギターが泣き叫ぶ、疾走慟哭メロデスの王道路線を高いレベルで演出する。この泣きのメロディーのそそりっぷりは凄まじい。

 

 M3「Lament」以外の楽曲は基本的に爆走しているというアグレッシヴスタイルを貫いているのも好感触ですが、唯一のミドルチューンであるM3もメロディーの良さには一切手抜かりがないのが頼もしい。というか、何だったらこの曲が一番ギターの哀愁が濃厚と言ってもいいくらい。

 

ギターとキーボードがクサいメロディーをかき鳴らしながら絡み合い、疾走していくという、彼らならではの個性は薄いものの、メロデスの基本にして王道を潔く貫いた好盤。こりゃあディスクユニオンも激プッシュするわけだ。

 

なお本作の欠点は値段。Veiled in ScarletやGrave to the Hopeの感想でも同じような事書きましたが、5曲入りミニで2100円は高いよいくらなんでも。中身が良いので我慢できるけど、もうちょっとなんとかなりません?

 

 

個人的に本作は

"哀しみをたたえたギターとキーボードを主軸とした、王道を行く超高品質慟哭メロデス"

という感じです。

 


Wirbelwind - "Time To Realize" Official Trailer (Japanese Melodic Death Metal)

DRAGONY 『Viribus Unitis』

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  • 母国の先輩・SERENITY直系の良質パワーメタル
  • 大仰に盛り上がるシンフォニックサウンドが劇的
  • バンドの強みを活かしたキーとなるキラーチューンが強い

 

今週は仕事が忙しく残業続きで、さらに『ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド』にハマってしまい音楽を聴く時間が減ってしまったため、ブログ更新が思うように進みませんでした...

 

気を取り直して新譜の感想文を書くことにしましょう。今日取り上げるのは、オーストリアのシンフォニック/メロディックパワーメタルバンド・DRAGONYの4thフルアルバム。もうこのジャケットの時点で買いですね(笑)

 

TwitterディスクユニオンHMVのツイートで今回初めて知ったバンドで、2007年にオーストリアのウィーンで結成し、2011年にアルバムデビューを飾った比較的若めのバンドらしいです。

 

オーストリアのシンフォニックパワーメタルというと、真っ先に挙がるのはSERENITYだと思いますが、過去にSERENITYがヘッドライナーとなったライヴでサポートアクトを務め、今作収録曲M6「A.E.I.O.U」には、そのSERENITYのヴォーカルのゲオルグ・ノイハウザーが参加しているなど、ある程度のパイプがあるようです。

 

ブックレットに載っているメンバーの写真は、とてもじゃないけどヘヴィメタルミュージシャンとは思えぬお上品さで、さらに音楽の都として名高いウィーン出身ということもあってか、音楽自体もパワーメタルとして芯は通っていますが、非常に優雅で気品あるタイプのもの。麗しきメロディックメタルとしてのクオリティーはなかなか高い。

 

Rhapsody Of Fireほどシンフォニックサウンドに傾倒しておらず、あくまで骨格はメロディックパワーメタル。そこにシンフォサウンドのみならず、曲によってはキラキラチェンバロ、モダンなシンセも導入している。やっぱり基本的な音楽性は母国の先輩SERENITYに通じていますね。

 

イントロの美しく青きドナウから続くM2「Gods Of War」は、なかなか骨太なギターリフから力強く疾走し、キャッチーで勇壮なヴォーカルメロディーでスケールの大きなサビに繋がっていく、典型的かつ高品質なパワーメタル。出だしで意識を持っていくナイスなオープニング。

 

勇壮なメインメロディーを奏でるシンフォニックサウンドが目立ったM3「Love You To Death」に、哀愁に満ちたクサいキーボードとギターソロ、大仰に盛り上がるサビを据えたM4「Magic」という強力な楽曲を連投。

 

先述したゲオルグ参加のM6は、中盤の山場たり得る名曲で、Aメロでいったんおとなしくなるのがちょっと歯がゆいものの、クワイアで怒涛の如く駆け抜けるサビのパワーは、かなりのドラマチックさを誇ります。ラスト半音上がるサビもお約束ですがニクい!これはかなりの名曲なのでは?

 

その後のタイトルトラックM7「Viribus Unitis」も、仰々しく盛り立てるシンフォニックサウンドが耳を引き、RPGゲームを彷彿させるメロディーをクワイアで荘厳に歌い上げる様が美しい一曲。クライマックスの盛り上がり方がかなり劇的でこれまたイイ!

 

ここまでの前半から中盤に良曲・佳曲がズラっと並んでいるためか、後半のパンチが少し弱くなってしまっているのはマイナスかな(つまらん捨て曲は無い)。ラスト付近にM4、M6クラスの楽曲がもう一曲あればさらに良かったかも。

 

とはいえ、全然知らなかったバンドのアルバムとしては、十分すぎるほどに満足度の高かった良作でした。正直SERENITYの最新作よりとっつきやすくて良い感じかもしれない。

 

 

個人的に本作は

"シンフォニックサウンドクワイアをうまく用い、オーソドックスでありつつドラマチックな、鉄板の欧州パワーメタル"

という感じです。

 


DRAGONY - Gods of War (Official Video) | Napalm Records

 


DRAGONY - Legends Never Die (Official Video) | Napalm Records

BABYMETAL 『METAL RESISTANCE』

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  • 世界へ届く勢い絶頂の状態で放つ一作
  • メタルアルバムとしてまっとうにクオリティーアップ
  • やりすぎな遊び心は減ったが依然としてバラエティー豊か

 

2014年に発表した、これまでの活動の集大成とも言える1stアルバムの発表により、日本を飛び越え、世界のメタルメディアからも注目を浴びることとなったBABYMETAL。

 

その勢いは止まること無くライヴの規模や人気を拡大していき、最も勢いづいたタイミングでリリースされたのが、2ndフルアルバムである本作です。

 

商業的成果もかなりのもので、日本ではオリコンチャート第2位、全英チャートでは日本人アーティスト最高位の12位、全米チャートでは39位に入り、坂本九さん以来53年ぶりにTOP40入りを果たすという記録を達成。

 

発表当時僕は大学生で、キャンパスからほど近い大手CDショップでアルバイトをしており、本作の初回限定盤が早々に予約で在庫切れ、通常盤も飛ぶように売れていて、メタルとは一切縁のなさそうな子連れのお父さんなどが「BABYMETALってどこにありますか?」と聞いてこられたりと、本当に大きなムーブメントになっているんだなと肌で感じました。

 

そんなノリにノッている状態でリリースされた本作、その勢いはサウンドにも如実に表れており、良くも悪くも斬新で、ネタと遊び心に溢れていた前作に比べると、格段にアルバムとしてのまとまりの良さ、完成度が上がっているのがわかります。

 

もちろんYUIMETALとMOAMETALによるアザトカワイイ掛け合いや、バックから突如顔を出すグロウルコーラス、多種多様なメタルのエッセンスをモダンにまとめ上げる曲調には何ら変化はありませんが、単純にメロディーラインがシリアスかつ哀愁路線に舵を切っている印象。

 

このことをして「やりすぎなまでのカオスな世界観が落ち着いてしまった」と残念がる人もいたのかもしれませんが(僕自身少し寂しさに似た感情が無くもない)、より洗練され、音作りもビルドアップされ、なおかつバラエティに富みまくった本作は間違いなく魅力的なもの。「前作はカワイイ要素が強すぎたけど、これくらいなら聴ける」という人も多いと思います。

 

音を聴けば一発で彼らが関わっているということがわかる、DragonForceのギタリストのハーマン・リ、サム・トットマンの超絶速弾きギターが舞うメロディックスピードメタルM1「Road of Resistance」は、「イジメ、ダメ、ゼッタイ」と並ぶアンセムと呼ぶべき強力な一曲。バカッ速いドラムに載るクリアなヴォーカルメロディーが爽快感抜群。

 

M2「KARATE」は、よりグルーヴィーでヘヴィなギターリフがメインを張るモダンメタル。そういった曲調にあっても、クセになる特徴的なコーラスと、サビのエモーショナルなメロディーが強力なフックになっている。

 

世界的な知名度を得るキッカケになった「ギミチョコ!!」と同タイプのインダストリアルメタルM3「あわだまフィーバー」に、哀愁があってクリーンなメロディーが駆け抜ける爽快なメロスピM5「Amore -蒼星-」、"ヴァイキングメタル meets プロ野球の応援歌"と言えるような、ありえない組み合わせがインパクト絶大なM6「META! メタ太郎」、本作最高にヘヴィでダークなエクストリームサウンドに、とてもカワイイ声でかなり怖いことを歌う(笑)ヴォーカルが載るM9「Sis. Anger」など、シリアスさが増強されたとはいえ、あまりにカラフルな幅の広さはさすがの一言。

 

欲を言えばアルバム前半は比較的まっとうなメロディックメタルを貫き、後半はやや変わり種と思われる曲とバラードが集中する構成なので、個人的には後半部分にも、あと一曲くらい勢いのあるストレートな曲が欲しかったかな(M11「Tales of The Destinies」は疾走するメロディアスなサビを持つ曲ですが、変拍子まみれのプログレッシヴメタルなので、ストレートな曲ではない)

 

とはいえ、これほど個性が豊かでバラバラになっている曲群であっても、どの曲を聴いても「今、BABYMETALを聴いてる!」と感じさせる要素はしっかりとあり、不思議とアルバム単位としても成立していると思わされる一枚です。

 

 

個人的に本作は

"バラエティの豊かさ、曲調の幅の広さはそのままに、シリアスかつ正統的に楽曲の完成度を磨き上げた強力作"

という感じです。

 


BABYMETAL - Road of Resistance - Live in Japan (OFFICIAL)

 


BABYMETAL - KARATE (OFFICIAL)

BABYMETAL 『BABYMETAL』

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  • 結成から世界を沸かすまでの彼女たちの集大成
  • アイドル×メタルによる可能性と個性の宝庫
  • 国内メタルシーンの一大革命作

 

前回感想を書いたBRING ME THE HORIZONの『Post Human: Survival Horror』収録の「Kingslayer」で、BABYMETALがフィーチャリングアーティストとしてコラボしていました。

 

それについて書いた後「そういえばBABYMETALのオリジナルアルバムについては、最新作の3rdについてしか触れてないな」と思い出しまして、過去作をまた聴き返してみました。今は日本武道館公演を10日も行っている真っ最中で、話題に上がることも多いことですしね。

 

アイドルグループのさくら学院(今Wikipedia見てみたら、今年の8月31日に解散するんだとか)の派生ユニット「重音部」として始動し、アンダーグラウンドな存在だったのが、海外のメタルファンからMVが注目を浴び始め、飛ぶ鳥を落とす勢いで知名度を獲得。後はご存知の通り、世界で最も知られる日本のメタルアクトにまで上り詰めてしまったメタルダンスユニットの、2014年に発表された記念すべき1stアルバム。

 

僕がBABYMETALの存在を知ったのは、恐らく2012年ごろ。当時札幌の高校生だった僕は受験勉強をサボってタワーレコード札幌PIVOT店に頻繁に通っており、日本のバンドのアルバムを色々とあさっていました。もちろん経済的に余裕のない高校生の身なので、試聴だけして帰ってしまう日が大半でしたが。

 

そこでBABYMETALのシングル『ヘドバンギャー!!』を見つけ、「ハァ?アイドル×メタルだぁ!?フザけんなよ、アイドル風情がメタルだとか名乗りやがって!!」とやたら腹を立てた記憶があります。当時は「地上波の音楽番組に出てるJ‐POPやら、アイドルやら、ジャニーズやらはみんなクソだ!」と思っているダサいロック少年だったので(黒歴史)

 

今にして思えば、あのシングルを買っておけば今頃プレミアついてたのかな~...なんて考えてしまうのですが、まあそんなことはどうでもいいこと。しかしその頃からは、世界を巻き込むほどの現象になるとはこれっぽちも想像してなかったな。

 

それは置いといて、本作はそれまでシングルを小出しで発表し続けてきたBABYMETALの、待望のフルアルバム。既存曲が大半を占める内容のため(よってフルアルバムというよりは、これまでの活動を総括するベストアルバムのような感じ)、今までの作品にすべて付き合ってきた熱心なファンからはちょっと物足りない内容になっているのかも。

 

そして既存曲をほとんど聴いてこなかった僕のようなリスナーからしてみれば、世界的に見てもメタルをここまで個性的にアレンジする例は類を見ないだろうなと思わせるほどの、めくるめくベビメタワールドに浸食されてしまうアルバムになっています。

 

神バンドによる非常にヘヴィかつ濃密な音数で迫りくるエクストリームなメタルサウンドに、この時点ですでに凛とした力強さを秘めたSU-METALの歌声、アザトさ限界突破のYUIMETAL・MOAMETALによる掛け合い、時に小憎たらしいほどにキュンキュンのポップさが顔を出す歌詞とメロディーと、言葉では言い尽くせないほどの混沌とした、何でもありの世界観。改めて本作を聴くと、今のBABYMETALは良くも悪くもずいぶんマトモになったんだなぁ...と思わされます。

 

イントロ的な楽曲であるM1「BABYMETAL DEATH」から、可愛らしい自己紹介の声と、凶悪なまでの重音エクストリーム&超絶技巧のバンドサウンドが交錯する未知の曲で、そこから和楽器による音色と疾走感あるメタルサウンドでメロディアスに彩るM2「メギツネ」で一気にベビメタワールドへ突入。

 

AA=で活動する上田剛士さんの手によるインダストリアルメタルナンバーで、BABYMETALが海外のリスナーに注目されるキッカケにもなったM3「ギミチョコ!!」に、メチャクチャにあざといサビメロと、恐ろしい迫力のグロウルのコントラストがエグイM4「いいね!」、これまでややイロモノっぽい楽曲だったのが、急にシリアスなメロスピ(しかも普通にメロが良い)M5「紅月 -アカツキ-」が来る。

 

アイドル×メタルの本領が遺憾なく発揮されたメタルポップナンバーM6「ド・キ・ド・キ☆モーニング」が続いたと思えば、今度はYUIMETALとMOAMETALのあどけないコーラスと、Limp Bizkitばりのニューメタルリフが響くM7「おねだり大作戦」が飛び出すなど、とにかくメタルという音楽でできる面白いことをすべてやったろう!という気概が感じられる。

 

何でもありのごった煮感、やりたい放題しまくる混沌具合、M13「イジメ、ダメ、ゼッタイ」のような決め手となるキラーチューンの存在が一つになった本作。世界的成功を収める直前の、勢いに乗り出した時点だからこそ生み出された革命作ですね。

 

単一の作品としての整合感・完成度としては、次作以降の『METAL RESISTANCE』『METAL GALAXY』の方が高いとは思いますが、やはりアイドル×メタルとしての個性と遊び心が頂点に達したのはこの時点であったことは間違いないでしょう。

 

 

個人的に本作は

"アイドル×メタルの面白さをとことん追求し、日本のメタルシーンに変革をもたらした作品"

という感じです。

 


BABYMETAL - メギツネ - MEGITSUNE (OFFICIAL)

 


BABYMETAL - イジメ、ダメ、ゼッタイ - Ijime,Dame,Zettai (OFFICIAL)