デビュー当初から新世代メタルバンドの代表格と目され、現在も高い人気を誇るエモ/メタルコアバンドの6thフルアルバム。
正直に言うと僕は本作に対しあまり期待をかけてはいませんでした。
シンセやクリーンを多用した作風という前評判を聞いた時点で「今の彼らがそんな路線になってもヌルくなっちゃうだけなんじゃ...」という懸念があったし、何より先行で公開された楽曲が、従来の彼らのものよりもメロディーがかなり淡白、ハッキリ言ってしまえばパッとしなかったのです。
とはいえかつての彼らが生み出したキラーチューンは大好きだし、まだなにかやってくれるかも...と一縷の望みをかけながら本作を購入しました。
そうして聴いてみた本作、やはりというか何というか......正直ちょっと厳しいと言わざるをえません。
音だけ聴いて「カッコいいかカッコよくないか?」と問われれば、フツーにカッコいいサウンドであることは確かです。全体的にリフがかなりソリッドに研ぎ澄まされていて、サウンド自体の聴きごたえはなかなかありますし(ヘヴィというほどではありませんが、このバンドにヘヴィさは求めていないので別に良い)、そこに乗るマットのヴォーカルもエモっぽさを残しつつ安定感を増したものでクール。M3「Letting You Go」やM6「Piece Of Me」などは特に程よく攻撃的なリフが効いていて気持ちいい。
M5「The Very Last Time」を始めよく顔を出すアトモスフェリックな楽曲・パートも、儚げな味を出すヴォーカルワーク含め結構サマになっており雰囲気は良い。
ただ......いかんせんメロディーが弱い。かつての彼らであればエモに近い楽曲にしろ、メタル度を増した楽曲にしろ、キャッチーな歌メロが豊富にあって、一聴しただけで「おお!カッコいい!!」と意識を持っていかれる前のめりな勢いが息づいていました。
しかし本作に収録されている曲はどうも耳に引っかからず地味、印象に残りにくいのです。1st~3rdにあった爆発力はほぼ鳴りを潜め(年齢を重ねているので仕方がないことかもしれませんが...)、手堅く無難にまとまった、小綺麗で似たような楽曲ばかりがずっと続いていく感じ。M10「Don't Need You」のみ前作『Venom』に収録されてもおかしくないようなアグレッシヴさを備えた楽曲ですが、それにしたってかつての彼らの曲にあった血沸き肉躍る興奮、煌めきはあまり感じられず、やや平坦な印象を受けてしまいました...。
インタビューにてマットは「前作はメタルに振り切った作品だったから、今回は異なったアプローチで曲を作った」みたいなことを言っていましたが、何もこう中途半端で覇気のない作品にはせんでもよかったでしょうに。せめてもっと歌メロを充実させてもらいたかったです。
先に述べた通り音だけ聴けばカッコいいし、クオリティーが低い作品ではないでしょう。ちょいちょい耳を惹かれる瞬間もあるにはあるし、「駄作!」とボロクソに酷評したいとは思いません。ただ褒めたいとも思えない...
「ブレットの新しいアルバムどうだった?」と聞かれて「まあ...これはこれで悪くはないんじゃないかなあ...とは思うよ」と答えるものの、
「ブレットの新しいアルバム良かった?」と聞かれれば「いや、良くはない(キッパリ)」と答えてしまう、個人的にはそんな印象の作品です。
M2「Over It」 MV
M8「Gravity」 Official Audio
個人的にはこの曲のメロディーが一番引きがあるかも。まあそれにしても地味な印象は拭えませんが...