ひとりごと ~Music & Life-Style~

HR/HMを中心としたCD感想、足を運んだライヴの感想をメインにひとりごとをブツブツつぶやくブログです。

キツネツキ 『キツネノマド』

キツネツキ 『キツネノマド』

9mm Parabellum Bulletのヴォーカルの卓郎さんと、ギタリストでありメインコンポーザーである滝さんによるプロジェクトの1stアルバム。

 

9mm Parabellum Bulletといえば、メタルやハードコアから存分に影響を受けたバンドサウンドに、歌謡曲に通じるダサさ全開のメロディーを大胆にブチこんだ楽曲で人気を博すバンド。

 

そんなインパクト大の曲は僕も愛聴しており、特に去年発表された現時点での最新作『BABEL』は、10年以上のキャリアにおいても最高傑作とすら思える強力な出来。そんなバンドの中心人物によるプロジェクトとなれば、当然僕個人の期待値は高くなるというもの。

 

とは言え滝さんが作曲を担当した卓郎さんのソロアルバム『今夜だけ俺を』は、9mmとはやや毛色の異なる作品になっていただけに、今作も9mmそのままの音にはならないだろうとは予想済み。

 

そしてその予想通り、9mm本隊とはややスタイルの違う作品に仕上がっています(まあわざわざ別名義でやってるんだから当たり前ですが)

 

9mmのようにドラムがツーバス連打で暴れ狂い、ハードに歪ませたギターとベースがバリバリに鳴り響くようなものではなく、楽器の主張はさほど強くなく(もちろん一切歪んでないスカスカの音に陥ってはいない)、歌メロの雰囲気も若干異なる。

 

昭和歌謡というよりもっと古風の、古めかしい日本的な情緒サウンド全体を覆っています。あまりシリアスなムードもなく、より親しみやすさを感じます。

 

本人たちは「9mmのようにしっかり構築しない」「あえて曲は簡単にしている」「頑張って脱力する」などと語っており、ユル~い雰囲気を醸し出しているのは意図的な様子。M3「てんぐです」なんか何故これがリードトラックに選ばれたのかと思うほどユルい(笑) ただこれがなかなかクセになるのですが。

 

本作中最も疾走感を感じさせるM1「ふたりはサイコ」、BRAHMANのようなイントロとリズミカルなサビが印象的なM2「odoro odoro」、ギターフレーズやAメロのヴォーカルに怪しさと胡散臭さを携えながら、サビはアップテンポでキャッチーに聴かせるM9「イカラちゃん」など、ユルさの中にギラリと光るロック色濃い楽曲はなかなかカッコいい。

 

アルバム中盤には「ちいさい秋みつけた」「子ぎつね」「証城寺の狸囃子」という童謡のカバーが収録されており、そのどれもが凄まじいまでのハマり具合を見せているのが面白い。詩のテーマやメロディーの雰囲気がものの見事に合致していますね。

 

アウトロを除けば本編のラストとなるM10「まなつのなみだ」は、歌詞と合わせて古き良き田舎の情景が浮かんでくるような、和の郷愁をバリバリ感じさせるメロディーが何とも染み入る楽曲で、M1と並んで本作中最も好きな曲です。

 

通常のフルアルバムのように本腰を入れてしっかり聴くというよりは、たまに少ししっとりした気分に浸りたいときや、エクストリームな音に漬かったあと、少し気持ちを楽にしたいときなどにふと聴きたくなるような作品ですね。9mmほどのインパクトはないものの、非常に個性的な音でなかなか楽しんで聴けました。

 

ただ特に初回限定盤でもなく目立った特典もついていない薄い紙ジャケ仕様で、11曲(うち2曲はインスト)で30分ほどの収録時間という内容で税込み2700円はちょっと高くないですかい?(笑) 最近はCDの値段上がりましたよねえ...。

 

M1「ふたりはサイコ」 MV

 

M3「てんぐです」 MV