ひとりごと ~Music & Life-Style~

HR/HMを中心としたCD感想、足を運んだライヴの感想をメインにひとりごとをブツブツつぶやくブログです。

THE冠 『日本のヘビーメタル』

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  • メタルに生きる男の生き様がここにある
  • 気迫と悲哀に満ちた歌詞の人間味がとことん熱い
  • 今の悲しい世の中に最も必要な音

 

愛すべき我らがメタルバカ・冠徹弥率いるTHE冠の、前作『奪冠』より3年ぶりのフルアルバム。

 

show-hitorigoto.hatenablog.com

 

「令和の最先端ミュージック」を謳った帯が強烈ですが、基本線は前作と同じ異ジャンルの要素を豊富に取り入れた歌メロ重視のメタルで、時代の最先端っぽさはあんまり無い(笑)

 

タイトルは「自分が日本のメタルシーンを背負って立つ存在になる」という意気込みの表れのようで、必ずしも音楽性を意味するものではないようです。和音階がバンバン使われてたり、雅楽器が用いられてたりとかではなく、あくまで従来の路線を外さない作風です(とはいえ海外のメタルバンドでは決して作り得ないアルバムであるとは思う)

 

この徹頭徹尾正統派メタルにはこだわらず、ROTTENGRAFFTYを彷彿させるようなミクスチャー感や、古き良き歌謡曲のメロディーを意識した歌モノバラードを含む彼らの楽曲は、「メタルであること」にこだわる層には不評かもしれません。

 

ただ冠さんの十八番である鋼鉄感満載のシャウト、K-A-Zさんのヘヴィリフと速弾きが頻発するギタープレイは、文句無しのTHE冠流メタル。非常に聴きやすいメロディーのキャッチーさと相まって、一気に気持ちよく聴き通せてしまう。この爽快感はさすがとしか言いようがありません。冠さんの言葉を借りるなら「歌謡曲みたいに好きなものを全部取り入れてメタルに昇華して出したい」この一言に尽きる。

 

「令和の最先端」の割にあまり音質は良い感じではありませんが(笑)、彼らの場合はむしろきれいに整った音よりも、荒々しい方が似合うでしょう。特に問題はなし!(冠さん自身、綺麗にまとまりすぎた音は嫌っているそうです)

 

歌詞もヴォーカルもコーラスも演奏も、何から何までエンジン全開の熱き名曲M1「日本のヘビーメタル」でオープニングの勢いはバッチリ。メロイックサイン掲げて叫びたくなるサビに、男臭いバンザイも最高だ!熱い!

 

夏フェスでのアウェイ感を面白おかしく歌い上げるシャッフルナンバーM2「やけに長い夏の日(おちゃらけ具合はこの曲が一番かも)、これまた熱い野郎コーラスで幕を開け、やや爽やかさを持った疾走感も見せるM3「ZERO」と、前半から畳み掛け来る。勢いの良さ、熱いシンガロング、馴染みやすい歌謡的メロディーという、THE冠らしさ満載の楽曲の連打が実に気持ちいいです。

 

ネットを炎上させるバカを皮肉るM5「FIRE STARTER」、スナックで酔いどれる男の哀愁を描いたM7「大人の子守唄」、若い世代に必死こいて合わせようとする中年の悲哀に満ちたM9「FALLING DOWN」など歌詞の面でも音楽性の面でもバラエティに富んでいる。ソングライターの冠さん自身はメタルバカでも、アルバム自体はメタル一辺倒ではないのですが、これがTHE冠の個性を形作っています。

 

本作で一番気に入ったのはM8「だからどうした」。荒々しい疾走感に、バックでテクニカルに弾き倒されるギター、キャッチーなヴォーカルメロディーで歌われるサビがとにかくカッコいい!このサビはライヴで聴いたら共に歌わずにはいられませんね!

 

こんな感じで様々な色が混ざったアルバムですが、すべての曲に共通しているのが、冠徹弥という男の人間味や精神性。それが溢れてるんですよね。メタル一直線でおっさんになってしまった哀愁、なかなか売れない自虐、それでもへこたれずメタル魂を貫く姿勢。メタルを鳴らし続ける覚悟を持った人間の生き様が克明に刻まれている。

 

この中年メタル野郎の人生における喜怒哀楽をすべて表現しつくした楽曲は、まさにメタルを面白おかしく、そしてしぶとく演り続け、決してメタル愛を捨てなかった彼だからこそ説得力を持たせられるというものです。これからも彼ら流の"日本のまっとうなヘビーメタル"で日本を熱く、楽しく盛り上げていってほしい。

 

 

個人的に本作は

"鼓舞されたい人、悲しみに寄り添ってほしい人、ただ楽しくなりたい人、すべてのメタルヘッズに送る人生讃歌"

という感じです。

 


THE冠『日本のヘビーメタル』トレーラー